はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

まぶしいもの4 (千早SS)

2007-05-09 03:18:25 | 千早4畳半(SS)
「…スタジオ?」
「うん!練習にはスタジオだよ!」
「やっぱり機材もなくっちゃね~!」
私が亜美真美のレッスンを受け持って始めてのレッスン日
連れていかれたのはよく知った…
765プロ御用達のレッスンスタジオだった
「うわぁ…懐かしいなぁ」
「千早おねーちゃんは久しぶりでしょ」
「真美達は昨日来たばっかだけどね」
なにやらきな臭い笑い方をしてる
「…二人とも昨日なにしにここに来たの?」
「今日ここを独占するためにちょっと仕込みを」
「仕込みを」
「何か」をして貸しきりにしてくれたらしい
その「何か」が気になるのだが…なにも言うまい
「じゃあ今日は貸しきりなのね」
「他からは臨時休業って事になってるから!」
「安心してね!千早おねーちゃん!」
…なるほど
けど、私のためだったのか
今回はその「何か」に感謝する事にする
昔の知り合いに会うのはやっぱり気が引けるのだ
何年も連絡を取ってない仕事関係の人とかは特に
「今なにしてるの?」というセリフが決まって出て来るから
何もしてないとはなかなか言い辛いのだ

久しぶりに歌の事を考える事に夢中になった
昔と違うのは自分の歌ではなく、亜美と真美そして蒼い鳥について
歌には人に教えられる事でよくなる技巧的な事もある
だが一番重要なのは歌い手のメンタル面
これが欠けていては歌に艶も張りも出ない
重要なのはテンションを上げる事
これは彼がもっとも重視していた事でもある
蒼い鳥は萎縮して歌える歌ではない
そんな安っぽい歌にした覚えは無い
しかし捨てた私が言える事だろうか…

夕日が沈む頃
思ったよりいいレッスンになったと思う
現場から離れていても
ブランクが長くとも本職では無くても何とかなるものだ
「千早おねーちゃん…」
「なんで平気なの…体力…」
仰向けに寝転んでいる亜美
うつ伏せに倒れ混んでいる真美
ぜーぜーと肩で息をしている様子
「これは現役時代の基礎よ、亜美、真美、幾らジャージだからって感心しないわよ」
「亜美ぃ…千早おねぇちゃん…化け物だよ」
「流石は歌のために全てを捨てたテッカマ…」
ジロリ
「何か言った?」
必死に首を横に振る二人
変わって無いな、こういうところも
「でも、今日のレッスンは上手くいったわね」
「ほんとう…?」
「こんなに疲れたんだから…上手くなってなきゃ嘘だよ…」
倒れたままで表情は汲み取れないが声からすると笑ってる
タフな後輩達だ
だからこそ私も手伝う気になったのだが
「うん…よし、最後にこの歌を歌う時覚えて欲しい事を教えとくわ」
これは私が歌っていた時に常に思っていた事、考えていた事
人に話すのはもしかして初めてかもしれない
「この歌は…希望の歌なの
歌詞とメロディは確かに切なくて悲しいものかもしれないけれど
それでもね…未来に向って羽ばたく希望の歌なのよ、それを忘れないで」
「…千早おねーちゃん」
「希望の歌…」
「あなた達の希望を描いて歌ってちょうだい」
そうだ二人には
余計なプレッシャーなど受けず伸び伸びと歌って欲しい
この歌は希望の歌
そして二人に似合うのは明るい笑顔なのだから

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