はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

千早と律子 Nature2 (千早SS)

2007-03-14 00:14:00 | 千早4畳半(SS)
ガタンゴトンとバスにゆられて農場へ
「しかし…あなたのコネクションもよくわからないわね」
「ふふふ、世界が狭いよりはいいんじゃないの?」
「へーへー、私はどうせ芸能一本ですよ」
これから行く農場は近所の八百屋さんに教えてもらった
ちょうどガーデニングの真似事をしてみたいなと考えてた時期に
収穫に人が足りないと言う事で手伝わせてもらったのがきっかけ
どうやら農場の持ち主である方に気にいられたようで
好きな時にいつでも来てくれとのお言葉を頂いた
それからと言うもの図々しいかもしれないが収穫時期には手伝いに出かけ
そして収穫した野菜を報酬と言うかごほうびとして頂くのだ
今回は来てくれないかと声をかけられていたのだが
「一日かけてトマトだけなの?報酬?」
「一日もかからないわ、この時期なら他にも収穫できるけど…」
「けど何よ?」
「最初から貰う物の事考えるのはどうかと思うわ、今日は緑に触れられるだけでいいのだから」
「すいませんねー、打算的で」
口を尖らせながらも律子は少し嬉しそうだ
前回二日酔いの朝に無理矢理着いて来た時も
最初は文句ばかりだったくせに
最後の方は私よりも楽しそうに、大きな野菜を抱えてたことを思い出す
「…なにニヤニヤしてるのよ」
「なんでもない、ほらもう着くわ」
窓の外にはすでに緑の海
目指す目的地には真っ赤なトマトがあるはずだ

「どうも、今回もよろしくお願いします」
「おおー!千早ちゃんと…律子さんだったね!よく来てくれたよ!」
この人は農家の加納さん
いつも豪快で気風の良い人って言うのはこういう人の事を言うんだなと思う
「お久しぶりです、ところでなぜ千早は「ちゃん」で私は「さん」なんです?」
「はっはっは!すまんすまん!律子ちゃん!これでいいかい?」
「取って付けたようだけどまあいいです、で、おじさん?今日はどこからやります?」
腕まくりをしながらビニールハウスを見る律子
なんだ、やっぱりやる気満々じゃないか
「おおっ!やる気だね!それじゃあ1番のビニールハウスから頼むよ!」
1と大きく書かれたビニールハウスを指差しながら加納のおじさんが言う
既におじさんの家族は他のビニールハウスで作業中なんだろう
もしかすると1のビニールハウスをわざわざ残しておいてくれたのかもしれない
「収穫かごや道具は既に中ね、それじゃあやりますか!」
ビニールハウスに向かう律子を見ながら、加納のおじさんに声をかける
「すいません、いつも収穫だけ手伝わせて貰っちゃって…」
「なに言ってんだい!こっちこそ人手が必要な時期にありがたい事なんだよ」
「そう言って貰えると嬉しいですね」
お辞儀をすると、おじさんは頬をポリポリと掻いて
「…うん!どうだい千早ちゃん?家の息子の嫁になってくんないか?お得だよ?」
「またまた、冗談ばっかり、じゃあ私も行きますね」
律子の待つビニールハウスへ駆けていく
絶対「遅い!」って言われるだろうだろうな
トマトを持って肩からタオルをかけた律子が凄んでるのを想像したら
可笑しくて少し笑ってしまった
「うーん、いい笑顔だ、本気なんだけどなぁ…」
おじさんが何か言ったような気がしたが
今日これから起こる事が楽しみでしょうがないみたい
うん…ワクワクしてるんだ 私


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