くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

宮城・福島ぐるぐるマジックショー&缶詰料理ショー その2

2011-07-10 12:24:41 | 

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僕に出来ることは缶詰料理ショー

 いつになく早起きした僕と家人は、世田谷の経堂という町へ向かった。
『さばのゆ』という飲食店で待ち合わせしていたのだ。
 夜更かしばかりしている2人にとって、考えられないほど早い時間であった。
「眠いね」
「だるいね」
 中年夫婦の会話は簡潔を極める。
 その横を、颯爽と、中高生が通学していく。
「我々にもあのような時代があったのだ」
「今じゃ想像もつかないけど」
 中年夫婦の会話はシニカルだ。
 やがてさばのゆ前に、ゴトーさん改めせんとくんとドライバー、さばのゆオーナーの須田泰成さんがやってきた。やあやあと握手を交わす。
 せんとくんが手配してくれた車はロケバスと呼ばれる大型のものだ。そこにガスカートリッジや衛生用品など支援物資を積み込んでいく。
 支援物資の中には2ドア冷蔵庫もあった。
「冷蔵庫はたいてい、家の1階に置いてありますね。だから津波で流された家庭が多く、冷蔵庫の需要は高いんですね」
 せんとくんの説明は明瞭だ。
 東京に残って采配をふるう須田さんと分かれ、我々は車に乗り込んだ。途中でパルト小石さん(小石師匠)をピックアップし、師匠のマジック道具を積んで、いよいよ首都高へと乗り入れた。




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石巻でお渡しした冷蔵庫
車が大きいからタテに積んで行けた

「ええとですね」
 せんとくんが口を開いた。車は首都高から東北自動車道へ乗り入れたところだ。
「しばらくは普通に走っていけます。でも福島あたりから悪路になります。地震で道路が歪んで、まだ直ってないんです」
「そういえば、飲み物なんか気をつけないと、こぼしてしまうらしいね」と小石師匠。
「車から降りても、振動でしばらくはふらつきます」とせんとくん。
 それから福島に入るまで、僕らは長い時間、くだらない話題で笑い合った。酒を飲むと人はどう変わるか。今まで会った一番の大虎はどんな人か。ひどい想い出は何か、などなど。
 小石師匠とせんとくんの話は面白く、僕ら夫婦はげらげら笑い続けた。
 しかし、これはあとで聞いたことだが、小石師匠は
「あのとき、何を話していたか憶えてなくてねェ」
 こう話していた。
 どんなマジックをすれば被災地の人たちに喜ばれるか。そのことばかり考えていたのだという。
 そういう気持ちを表にまったく出さないのが、小石師匠の素晴らしいところだ。




 つづく
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