くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

ニューヨークよ! 序章1

2008-09-21 12:49:01 | 連載もの ニューヨークよ!

 誰にでも、一度は訪れてみたい憧れの国があると思う。
「陽光輝く南仏へ!」
「モルディブの世界一美しい海でダイビングを」
「オーストラリアに行ってカンガルーを食べたい!」
 人それぞれ、動機も様々であろう。
 そして、現代のように海外旅行が身近になってくると、憧れの国も複数になってくる。
 昔はそうではなかった。
 海外旅行など、一生に一度、行ければいいなという程度だった。
 そうなると当然、行きたい国・地域というのは一つに絞られてくる。
 僕の場合、それはアメリカのニューヨークだった。

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本棚の1部をN.Yコーナーにあてた

 僕は20代から30代まで、アメリカ文学にハマっていた時期がある。
 特に好きだったのは、どれもニューヨークを舞台にしたものだった。
 ジェイ・マキナニー、ポール・オースターといった新進作家が流行していた頃でもあった。
 中でも、ローレンス・ブロックの書いたマット・スカダーという探偵物シリーズに一番のめりこんだ。
「コロンバスサークルから西60丁目に入り...」
 などという記述を読んでは、主人公がそこを歩いている姿を想像(妄想)した。
 さらにニューヨークを舞台にした映画を観て、妄想力に磨きを掛けた。
 おかげで、一度も行ったことがない街なのに、いろんな地名を憶えてしまった。
 例えば、ソーホーという地域があるが、これはSOHOと書く。
 サウス・オブ・ハウストンストリートの頭文字をとったもので、文字通りハウストンストリートという通りの南側一帯を示した俗称なのだ。
 それからトライベッカ(TriBeCa)。
 これも同じくトライアングル・ビロウ・カナルストリートの頭文字をとったもので、カナルストリートのビロウ(下側)、ハドソン川とブロードウェイの間にある三角形の地域の俗称だ。
 こういう、普段は何の役にも立たない知識を身につけてしまった。
 しかししかし、実際にはニューヨークを訪れたことはないのだ。
 これは悔しいし、恥ずかしい。
 42歳にもなって、ウンチクをたれるヘンクツな男にはなりたくない。

 時は巡り、2008年。ついに僕はニューヨーク旅行へ行くことになった。初めてそのチャンスがやってきたのだ。
 国際免許を取得した。
 海外で使える銀行口座も開設した。
 折りしも円高傾向。ドルも少々、用意しておいた。
 旅立ちは10月2日、成田から。さあ、読者諸賢よ。あのセントラルパークへ、クライスラービルディングへ、グッゲンハイム美術館へ、ヒアウィゴーであります!