今、手元に1989年発行のエスクァイア日本版がある。
表紙には、当時まだ34歳のケヴィン・コスナーが写っている。
いつの間にか僕は、当時の彼の年齢をずいぶんとオーバーしてしまった。
昔の雑誌や映画をみて、その登場人物が、今の自分よりも若くて驚くというパラドックス。ヴィスコンティの『山猫』を観ると、アラン・ドロンがまるで幼い青年なのでおかしくなってしまう。
当然のことなのだけれど、こういう感覚が、よく起こるようになった。
それだけ自分が歳を取ってきたことになるではないか。
さて、1989年版の、エスクァイアの話だ。
そこに村松友みのシチリア旅行記が書いてあることを、突然想い出して、本棚から探し出したのだった。
もっとも、旅行記の内容は殆ど忘れていたのだけれど。想い出したのは、見開き2頁にわたって載っていた、ある街の写真なのだ。その名はラグーサ(Ragusa)。