無頓着の俳句入門

歴史に残る著名な先生方の教えを無頓着が入門書として初心者向けにわかりやすくまとめました

第2章 俳句の活用 2-6 俳句は情緒の世界(1)

2007-07-23 08:31:35 | 活用編
(1)俳句の構成図

子規門の高足なる松瀬青々が作品を見極める方法の1つとして
下図のような俳句構成図を考案した。
松瀬青々考案の俳句構成図
作った句に不安のあるときは
これに当てはめて見るとよい。

境:場所。季物が今ある境地。
縁:つながり。季物と相応し現れる。
情:働き。季物が縁で起る働き。
季:季物。季節の句を表すもの。

<芭蕉例句>
 荒海や 佐渡に 横たふ 天の川
 (縁)  (境)  (情) (季物)


(2)語源をしっかり把握する

①北海道特有の季語に「リラ冷え」(6月)や「鰊曇」(3~4月)がある。
→前者は暖かな風情の中にも肌寒さを感じるもので、後者は鰊の押し
寄せる頃(春)に曇る空を表現したものである。

<原句>喪服着る背にはりつくリラの冷え
<改善>「リラの冷え」では季語とならない→「リラ冷え」とする
<添削>リラ冷えの背に喪服のはりつきぬ

②「露」は夜間気温が下がり大気中の水蒸気が凝結した水滴をいう
→雨の後に草花や樹木に残った水滴は露とは言わず「雨滴」という。

<原句>雨過ぎて露に彩おく濃紫陽花
<改善>「雨過ぎて露」は発生しない言葉→「雨あとの夜の」とする
<添削>雨あとの夜の深みに濃紫陽花

(3)言葉は明解で具体的に

「これほど」「どんなに」「こんな所」「ここにも」等の分量・程度・場所を
表す言葉は読者にもわかるような具体的表現が必要である。
→自分だけにしか解らない言葉は読者には伝わらない。目の前にいない
相手には具体的表現が必要となる。

<原句>これほどのつつじ咲く中亡父眠る
<改善>「これほど」は表現曖昧。「亡父眠る」はくどい→「百千」、「夫眠る」
<添削>百千のつつじ咲くなか夫眠る

以上




第2章 俳句の活用 2-5 言葉の使い方(2)

2007-07-07 12:31:30 | 活用編
(3)曖昧な言葉づかいを避ける

①訴えるべき焦点がしっかり定まっていないと句意が不鮮明となる
→漠然とした言い方は「あいまいさ」に通じ、内容を散漫にする。

②考え込まなければならない内容では読者はつかない
→俳句は短い詩型ゆえに「把握即表現」というべき無駄のない
ストレートな男性的表白を特徴とする。

<原句>暁闇の北の桜に向ひ立つ
<改善>「北の桜」が漠然として訴えるべき焦点が定まっていない
<添削>暁闇の花の白きに向ひ立つ

③描写の過程が省略されると読者は理解しにくい
→意欲だけが先行して言葉がついて行かない俳句はよくある。どうしても
推敲できない場合は別の表現法がないか出発点に戻り主題を見直す。

<原句>外灯の闇の隙より灯蛾狂ふ
<改善>結句の「灯蛾狂ふ」に直結しない→状態の描写が必要
<添削>外灯の闇の隙より狂ひ灯蛾

(4)ありふれた言葉に心情を込めない

①心情を込める言葉の前後をつなぐ言葉が生きていなければならない
→日常会話では相手が解るまで繰り返し話せるが、17音の俳句では
1つの言葉を生かすことができるのはワンチャンスである。

②常套的な言葉に心情を込めると漠然としか伝わらない
→作者が1つの言葉に心情的なものを依存すればするほどその言葉だけ
浮き上がり句の中に無理なく溶け込まなくなる。

<原句>母と子の連れ立つ姿蝶が追ふ
<改善>「姿」が漠然として情が伝わらない→「うしろ」と写実的表現に
<添削>母と子の連れ立つうしろ蝶が舞ふ

③カタカナ語(外来語)を俳句に使うのは限られてくる
→「バス」「テレビ」「ピアノ」「ビール」等日本語として生活に溶け込んだ
言葉や地名・動植物名等の固有名詞は生きるがそれ以外は難しい。

<原句>夏手袋の透きて見ゆるや紅の爪
<改善>「夏手袋」や「紅の爪」はリズムがない→「夏手套」「マニキュア」
<添削>マニキュアの紅の滲める夏手套(てとう)


以上