無頓着の俳句入門

歴史に残る著名な先生方の教えを無頓着が入門書として初心者向けにわかりやすくまとめました

第4章 俳句の応用Ⅰ「ホトトギスの教え」  4-1 季題を最も活用する詩

2010-03-13 16:08:28 | 応用編

(1) 虚子俳話より

詠おうとするものは如何なるものであっても差し支えない。人間はもとより結構、社会もとより結構、唯この季題を最もよく活用したものである事を要する。
 作者が満腔の熱情を傾けて詠おうとする処、如何なるものもこれを拒む事は出来ない。唯俳句には季題というものがある。その季題の有しているあらゆる性質、あらゆる連想、それらの物を研究し、これをその熱情の中に溶け込まして、その思想とその季題とが一つになって、十七字の正しい格調を備えて詩となる。それが俳句なのである。
唯の詩でない。俳句という詩なのである。無季の句、若しくは季の働きの無い句は俳句ではないのである。

(2)風雅の対象は

俳句は“花鳥風月”などの風流な事柄を詠むものであると思っている人は多い。芭蕉は「笈の小文」で「風雅にいる人は自然に従い、四季の移り変わりを友として暮らしているから、目に見えるもの、心に浮かぶもののすべてが花や月と同じで、すべて風雅の対象である」といっている。
「何を対象として詠んでもいいのであるが、唯一つ、季題を最もよく活用したものでなければならない」と虚子はいっている。

(3) 季題の活用とは

“季題”とは歴史的に歌人や俳人によって磨き上げられてきた季節の言葉であり、それらは同時に、自然に対して鋭い感受性を持つ日本人一般の季節感によって裏打ちされてきた美しい言葉である。
季題の性質には次の三つのことがいえる。一つは季節感が豊かな季の言葉である。二つ目は歴史的な背景を持つ言葉である。三つ目は日本人の生活に溶け込んだ言葉である。
これら季題の持っているあらゆる性質とあらゆる連想を一句の中に生かすことが俳句なのです。

以上

第3章 俳句の文法  3-20 実作の技法(2)

2010-01-11 12:57:04 | 文法編
(3)引喩法
故事や有名人の言葉などを引用して表現を飾ったりまたは作品に奥行きを
もたらす方法で引用法ともいう。
<例句>松過の又も光陰矢の如く(高浜虚子)

(4)イメージ
過去に経験した記憶や連想によって能動的に想像し、心に浮かび上がった
映像や情景を創り出す。
<例句>しんしんと肺碧き間で海の旅(篠原鳳作)
<例句>死は春の空の渚に遊ぶべし(石原八束)

(5)擬人法
動物や植物や無生物の自然などを人格のあるものや生命のあるものとして
人間のように見なして表現する修辞法であり、活喩法ともいう。
「若葉がささやく」のように人間の考えや生活をあてはめることで実感を
伴なう表現ができる。対象物(題材)への深い観察と分析や想像力が必要。
<例句>海に出て木枯帰るところなし(山口誓子)
<例句>磯ちどり足をぬらして遊びけり(与謝蕪村)

(注意)擬人法は比較的やさしい技法だが、対象を正しくとらえて作者の
心境や願望を投影させる表現でないと作為や技巧ばかりが目立ち失敗する
恐れがある。

☆これで俳句入門「文法編」は終了です☆

以上

第3章 俳句の文法  3-19 実作の技法(1)

2009-12-10 13:26:03 | 文法編
(1)比喩(たとえ)
類似している事物によってたとえる技法で、他のものをあげて暗示を
与え詩情をかもし出す効果がある。

①直喩(シミリー)
~のように、~のごとくと比較してつなげる技法で明喩法ともいう。
「風のように速し」という類型的な使い方は避けること。
<例句>天を墜つごとく白夜の蝶おちぬ(石原八束)

②暗喩(メタフォア)
隠喩ともいい「何々のごとき何々」のごときを省略して「何々の何々」
と物と物を直接衝突させて新しいイメージを与える技法。
適確な言葉を選ばず安易に用いるは徒に混乱を招くだけ。
<例句>水枕ガバリと寒い海がある(西東三鬼)

(2)反覆法(リフレイン)
一節のある部分を反覆、繰り返す技法。重語・畳語とも言われ、同じ
言葉の繰り返しにより意味を強めたり、ニュアンスを生んだり、リズム
をなめらかにする。
<例句>鰯雲ひろがりひろがり傷いたむ(石田波郷)
<例句>親一人子一人蛍光りけり(久保田万太郎)

以上

第3章 俳句の文法  3-18 実作の方法(2)

2009-11-08 13:18:25 | 文法編
(3)省略・単一化

①自分自身を指す主語(吾、我)の省略
<例句>まだ見ゆる門かへりみる枯堤(富安風生)
②題材の中心を一点に絞り単一化する
<例句>笛方のかくれ貌なり薪能(河東碧梧桐)
<例句>駒ケ岳凍てゝ巌を落しけり(前田普羅)

(4)字余り・字足らず
全体が17字音以上または以下になる句のこと

<例句>束ねて投げまた刈るごぼりと田かんじき(古沢太穂)
<例句>日さして冷たき梨の花や散る(松瀬青々)

(5)句またがり
1音節内の言葉が他の音節にまたがって一つの意味を表わすもの

<例句>別れ蚊帳干す頃しじみ蝶多し (細見綾子)

以上


第3章 俳句の文法 3-17 実作の方法(1)

2009-10-14 16:46:42 | 文法編
(1)俳句の言葉
俳句の言葉は主として文語を使用するが、口語を用いる場合もある

①読み方は言葉の調子を整え音節内に収める為幾通りの読み方がある
(例)温泉(おんせん・いでゆ・でゆ・ゆ)、梅雨(ばいう・つゆ・つ)
②固有名詞・複合語・造語で特別な読み仮名をふり表記する場合もある
<例句>駒ケ嶽(こま)の雪仰ぎ寝覚ノ床(ねざめ)を見下しぬ(松本たかし)

(2)区切れ
句切れには意味の上での断切とリズムの上での休止がある

①二句一章
一句に一ヵ所区切れのある作品を二句一章という
 <例句>頂上や殊に野菊の吹かれをり(原石鼎)
②一句一章
断切がなく言い切って句柄が大きい
<例句>ふるさとは山路がかりに秋の暮 (臼田亜浪)
③二段切れ
一句の中に「や・かな・けり」の切字や体言(名詞)の切字が二つあるもの。
中心点が分裂しリズムも崩れる為、避けた方がよい。
<例句>振る雪や明治は遠くなりにけり (中村草田男)
④三段切れ
一句の中に三ヵ所段切があり句としてまとまりがなくなる
<例句>目に青葉山ほととぎす初鰹 (山口素堂)

以上