孫ふたり、還暦過ぎたら、五十肩

最近、妻や愚息たちから「もう、その話前に聞いたよ。」って言われる回数が増えてきました。ブログを始めようと思った動機です。

洋画タイトルに見るカタカナ語化

2016年12月31日 | 社会観察
大晦日の朝刊に平成28年の映画興行収入ランキング、邦画・洋画が載っていた。

年に一度か二度しか映画館に行かない映画ファンとしても、興味があって中身を見たのだが、邦画に関してはお子様向けマンガ映画が多くて、やはり映画は不作の時代だといわれるのも無理はないと感じた。

さらに洋画のベストテンを見て何となく違和感を覚えたのだが、その理由は映画の題名がほとんどすべてカタカナだったからだった。

ベストテンの題名すべての中で、使われている漢字は、「覚醒」と「魔法使いの旅」、それに「時間の旅」だけで、あとは以下の通りすべてカタカナか数字である。

1位 スター・ウォーズ フォースの覚醒
2位 ズートピア
3位 ファインディング・ドリー
4位 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
5位 ペット
6位 オデッセイ
7位 007 スペクター
8位 アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅
9位   インデペンデンス・デイ:リサージェンス
10位 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

映画配給会社の広報部は、カタカナの題名の方が興行的に有利な影響が出ると見込んでそうしているのなら、果たしてその成果はあるのだろうか疑問である。

また、そうではなくて、インパクトのある日本語の題名を考える手間を惜しんでいるとすれば、それは怠慢であり無策であると思うのだ。

9位の『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』という題名をみて、「ああ、面白そうな映画だ。観てみようか。」と感ずる人が果たしているだろうか?

  リサージェンス??

直訳すると、『独立記念日:再開』となる。これでは、味も素っ気もないか。

そもそもこの映画は、『インデペンデンス・デイ』というエイリアンとの戦争ものの映画の続編のようだ。戦いの日が、アメリカの7月4日というアメリカの独立記念日だったということらしい。エイリアンとの戦いが「再開」されるという映画のようだ。

また、6位の『オデッセイ』という映画のことをテレビで紹介していた時、我家の愚息とカミさんが、「オデッセイってどういう意味なんだろうね?」などと会話していた事があった。説明するのが面倒であったので、私は無視したのだが、その時も「もう少し気のきいた題を考えりゃいいのに・・」とチラッと思ったものだった。

ネットで過去の洋画ベストテンを検索してみると、映画が娯楽の王様だった頃は、立派な題名がたくさんあってうれしくなる。

昭和26年の『黄色いリボン』。原題は、She wore a yellow ribbon (彼女は黄色いリボンをつけていた)というものだ。

  騎兵隊の色は「黄色」だった

これは南北戦争の頃からあったアメリカ民謡の Round her neck She wore a yellow ribbon が騎兵隊のマーチ(Cavalry Song)として歌われ、そのまま映画にも流れ、タイトルとしても使われたのである。恐らく大抵の人はメロディーを聞けば、「ああ、この曲か」と思うだろう。

南北戦争の時は兵士のユニフォームは、歩兵が青、騎兵が黄色、砲兵が赤と決っていて、恋人が騎兵として戦場に行ったのを、残された彼女は黄色のリボンを首に巻いて無事を祈ったという逸話が起源だったようだ。

この話は後々少し脚色されたりしているが、日本でも山田洋次監督がこの逸話をパクって「幸福の黄色いハンカチ」(高倉健主演)という映画にしている。

この翌年、昭和27年には、大作『風と共に去りぬ』が公開された。原題は、Gone with the wind で、直訳だが格式を感じさせる邦題となった。

  南北戦争の映画だった

南北戦争という「風」と共に、当時絶頂にあったアメリカ南部白人たちの貴族文化社会が消え「去った」事を意味するそうだ。私が若かりし頃滞米中、当時の映画好きな英語の先生達と映画談義で盛り上がった時、当然この映画の話が出た。

私は、まだ観たことが無かったので正直にそう言うと、先生方は一斉に大きな声で、「えぇーっ!!??」と声をあげ、「信じられない!それで映画ファンと言えるのか?」と口々にボロ糞に非難され、散々な目に遭ったことを覚えている。

観よう、観ようと思ってはいるが、実はまだ全編通して観たことはない。

昭和32年には、『昼下がりの情事』(原題:Love in the afternoon)、そして、昭和38年には、『史上最大の作戦』(原題:The Longest Day) が上位にランクされている。

  情事という言葉も粋に響く

  「一番長い日」??


「昼下がりの情事」は、実はゲーリー・クーパーとオードリー・ヘップバーンの演ずる可憐で優雅なロマンチック・コメディーである。こういう邦題をつけるセンスを今の担当者は是非見習って欲しいものだ。

『史上最大の作戦』は、最初『一番長い日』という邦題だったそうだ。しかし、当時20世紀フォックスの日本支社の広報にいた後の映画評論家・水野晴郎さんが改題したそうだ。

「いやぁ、映画ってホントにいいもんですね。」でおなじみだったが、すでに8年前に他界されている。しかし、彼のつけた素晴らしい邦題は映画と共に永遠に残るだろう。

こうやって、過去の邦題を眺めていると、どうも昭和40年半ばあたりから次第に原題をカタカナにしただけの邦題が目立ってきているようだ。

2年前だったか、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』というトム・クルーズ主演の洋画が封切られたが、この映画の原題は、『 Edge of Tomorrrow 』であった。なぜ、わざわざ原題とは異なる英文を、しかもカタカナで表記したかというと、話は少々複雑だった。

つまり、このSF映画は桜坂洋による日本の若者向け小説『All You Need Is Kill』を原作に、アメリカで脚本が執筆さたのだった。原作小説のタイトルは英語だったが、完成した映画の邦題はご丁寧にその英文をカタカナにしただけだった。

その年の洋画ランキングでは7位であったので、このタイトルが功を奏したのだろうか、それとも思惑が外れたのだろうか。私にはよく分からない。


いずれにしろ、昨今の東京都知事のカタカナ言葉連発なども今の悪しき風潮を助長しているようだが、社内公用語の英語化とか英語教育の若年化とかとあいまって、日本文化の土台である母国語をみんなでせっせとぶち壊そうとしているような気がするのである。

カタカナ表記が増え続くと、若者たちの頭の中の語彙は次第に減少していき、漢字は読めない書けない文字となる。

やがて南朝鮮のように漢字を捨てたがために、古典や歴史を学ぶ能力を失い、都合よく捏造された歴史を検証して真実を知ろうとする識別能力が無くなっていくことになる。

洋画の配給会社の広報担当者は、邦題を考える際には知恵を絞って、後世に残るような魅力的な題名を、是非日本語で付けて欲しいものだ。


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