経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

事業家と評論家の分水嶺

2009-03-15 | 企業経営と知的財産
 昨日の知財戦略コンサルティングシンポジウムについて。今年も400名以上の方にご参加いただいたようで、皆様にはおそらく様々な感想をお持ちいただいたことかと思います。
 そうした中で、知財戦略コンサルティングというとよく耳にする、典型的なネガティブな2つの意見についての私見を。

(その1) 結局やることは普通の知財業務と一緒じゃないか。
(その2) このくらいのコンサルでお金がとれるとは思えない。

 その1ですが、企業の抱える課題に知財活動という手段で対応していくのだから、道具が変わるわけではないのはある意味当然です。違ってくるのは、道具をどう使うかという考え方の部分になってくると思います。
 その2については、「そんなんではお金がとれないからダメだよ」っていう意見は、まぁそれでいいです。これはある種の‘新規事業’なので、あんなの業として成り立たないと思う人が多いのは当然のことでしょう。皆がこれはいい、商売になる、と思うようなものなら、とっくに立ち上がっているはずですから。事業は「意志→投資」から始まるものなので、今はその「意志」のある人が「投資」をしている段階です(特に本プロジェクトの受講生の方は多くの時間を投資されたことと思います)。「金になる知財コンサルノウハウ」という知的財産を誰かがポコッと生み出して、皆にライセンスしてくれるような性質のものではない。リスクがある投資だから、回収できるかどうかもわかりません。だから、あんな投資は回収できないよ、って批評されたりもするでしょう。でも、そこに何かの未来が見えると思うならば、私にはできると思って投資するのが事業家であり、そこが評論家との分水嶺です。但し、事業家たるもの、闇雲に投資するのではなく、成功のキーを探ることに努めるとともに、リスクをマネージメントして生存していかなければいけません。
 では、成功のキーはどこにあるのか。それはやはり、「成果を上げること」しかないと思います。木戸弁理士が「コンサル部分の対価を要求するのは成果を示せるようになってから」と発言されていましたが、まさにその通りであり、成果を示せるようになることが先でしょう。
 この成果ということを考えた場合、「知財の成果」ではなく「事業の成果」を上げようとすると、知財をどうこうするだけではなかなか目に見えた成果は上がってこないのは事実だと思います。そうすると、知財の問題だけを取り上げてコンサルをするのではなく、事業として何らかの課題(事業再生、新規事業立上げ、海外進出etc.)に取り組んでいるところに1ピースとして知財コンサルが参加し、事業としての成果を共有する。そういう方向に進んでいかなければならないのではないか。そういう意味では、「知財コンサル」を掲げて今回のようなシンポジウムを行うことと矛盾してしまうのですが、今の段階ではその存在を可視化して発信するというプロセスも重要です。また、今年度の関東のプロジェクトで受講者のウィングを広げたことも、狭義の知財を1ピースに抑えていくという趣旨によるものと捉えています。
 とりあえずはそんなところで。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れ様でした (不良社員)
2009-03-16 21:23:26
土生さん、お疲れ様でした。不良社員です。

知財コンサルティングについては、土生さんが言われるように事業として成り立つかについての疑問が結構あり、そんなことを書いていたBLOGもありました。しかし、新規事業である限り事業の採算性に当初から○がつくわけもなく、そういった疑問を呈するより前に「やってみる」ことが大事なのだと思っています。必要性は確実にあるわけですから、やるかやらないか、という判断しかないと思っています(ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが)。
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Unknown (土生)
2009-03-17 02:01:42
不良社員さん、
こんばんは。土曜日はお疲れさまでした。
知財コンサルは商売にならないともっともらしく分析している人たちの中には、わかっているように論じているものの、リスクをとって新規事業に取り組むというのはそういうものだという基本的なことがわかってないな、と思うことが少なくありません。専権業務に慣れた資格者の弊害なんでしょうかね。
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お疲れ様でした (pattom)
2009-03-17 08:03:54
土生先生
お疲れ様でした。「知財の問題だけを取り上げてコンサルをするのではなく、事業として何らかの課題(事業再生、新規事業立上げ、海外進出etc.)に取り組んでいるところに1ピースとして知財コンサルが参加し、事業としての成果を共有する。」というのはまさにその通りだと思います。

「知財コンサルとは、・・何かとか、指摘されたように、これまでの知財業務とどこが違うのとか、儲かるの?とか」いうことより、実践すること、何らかの成果を出すことが重要。実践を通じて、自信も生まれる。木戸弁理士がそれを証明したと思います。

できる、できない論ではなく、やるか、やらないのか論が重要と思います。

事業を一緒に進める(但し、知財視点で参加)、商品をプロデュースする(但し、知財視点を加える)、プロモーションに参加する(但し、知財視点でリスクマネジメントする)等、やることは、既存のビジネス・・しかし、これまでの弁理士はしていなかった。既存の業務に知財視点を入れると、お客様は、へー、そう言う視点もあるんですね。と喜んでくれる。プロモーションにブランド戦略を加えると・・しかも、法的な盾と矛も準備して・・・。今まで以上の効果的プロモーションができる。
現場に入って一緒にやれば、けっこう知財視点でお客様への支援する機会はありますね。儲かるか否かではなく、いかに貢献できるか・・お金はあとからついてくるものでしょうね。

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Unknown (土生)
2009-03-17 14:57:24
pattom様
コメントありがとうございます。
「やる」という判断をした者にとっては、どうやって成果を上げるかということと、生存とのバランスが次の問題です。難しいのはそこであって、やるかやらないかは、あれこれと理屈を捏ねる世界ではなく、リスクをとる気があるかだけの問題であると思います。
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