経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

真の知財人材

2007-04-18 | 知財一般
 数少ない業界誌の「RightNow!」が、残念なことに休刊ということになってしまいました。
 今号は、「知財立国の未来に向けて」がということで、知財業界のオピニオンリーダーの皆様の原稿が掲載されていますが、知財協の宗定専務理事の「真の知財人材の条件」には、ちょっとドキッとさせられます。
 なんとなく格好良いから「知財が重要だ」といわれるバブル的な風潮に警笛を鳴らされ、自分の価値観や人間観で「今、なぜ、知的財産か?」の答えをキチンと説明できる人こそが「真の知財人材」であるとされています。特に若い方には、この部分を読まれることを強くお勧めします。

 自分の価値観・人間観を磨く必要性

 「知財人材」との関連で、こういうポイントに言及されているのをみたのは初めてですが、まさにこれこそが本質であると思います。上っ面をなぞって知財の重要性を訴えても、人を説得することはできません自分が心底、知財の重要性を理解していないと、自らも真剣に動くことができません人を説得できず、自らも真剣に動かなければ、何も変わるはずはありません。そういう意味では、「自分の価値観で」どれだけ知財を理解しているか、ということは、極めて重要なポイントだと思います。「勉強」というと、判例だ、外国語だとテクニカルなほうに流れがちですが、宗定専務理事が指摘されているように、「経済、経営、歴史、文化」といった一社会人としての勉強を欠かすことなく、その上で「よし、知財で頑張ってみよう」という決意がされてこそ、本当の意味で「質の高い仕事」ができるのではないでしょうか。

 先日の記事で、時折矛盾を感じることのある特許の仕事の社会的な意味について、ちょっとしたヒントが得られたということを書きましたが、やっぱり色んな本を読んで考えていくことは大切だ、と改めて思った次第です。

Right NOW (ライトナウ) ! 2007年 06月号 [雑誌]

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4 コメント

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知財の矛盾 (久野)
2007-04-20 06:49:44
現在の知財制度は、多くの欠陥を有しているために知財に真摯に取り組むほどに矛盾を感じさせるのだと思います。矛盾の根本原因は、「独占排他権は価値創出に直接的な寄与をしないが、知的創造サイクルによって間接的には価値創出に寄与する」という仮説が間違っているかもしれないということだと思います。
下記サイトに、そのあたりの分析を掲載していますので、ご意見をいただければ幸です。

http://www.patentisland.com/memo111.html
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Unknown (土生)
2007-04-20 22:36:48
久野様
コメントありがとうございます。
ご指摘のとおり、社会の発展という観点から最適の解(制度)を見出すのは非常に困難な作業ですが、市場の競争に委ねて凌ぎを削り合うということが、無駄&非効率なようにみえて、実は最もフェアな方法なのではないかという気もします。
(4月6日の「黒」の記事に書いたような理由からです。)
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知的財産権の取引市場 (久野)
2007-04-21 09:11:56
土生さん

2007年4月6日の土生さんの記事での「確かに特許の取得活動が活発化することは、様々な社会的コストの増加に結びつくものです。しかしながら、この活動が活発化すればするほど、研究開発により生じる本来的な社会的貢献の範囲が特許として明確に画定され、よりフェアな形でその企業に還元されていくことになるはずです。」について、コメントさせていただきます。

「本来的な社会的貢献の範囲が特許として明確に画定され」のための条件整備がまだなされていないのが、現状です。そのため、特許権の権利範囲解釈や取引のコストや時間がかかりすぎたり、紛争リスクが大きすぎるという状況です。
この状況を解決するために、請求項記述言語(略称:PCML)の開発を下記のSMIPS特許戦略工学分科会にて実施しています。
http://groups.yahoo.co.jp/group/Patent_Strategy_Engineering/
請求項記述言語にて請求項が記述されるとともに、商品の特徴機能を実現するための技術構造が記述されれば、土生さんの理想とされる状況に近付くでしょう。

さらに、知的財産権のオンラインオークションが行なえる取引市場が確立すれば、さらに土生さんの理想とされる状況に近付くことでしょう。特許のオンラインオークション取引を下記のように最近行いましたが、
まだオンラインオークション市場の確立までにはいたっていません。
http://www.business-i.jp/news/for-page/chizai/200511220005o.nwc
http://news.braina.com/2006/1206/enter_20061206_001____.html

また、善意のライセンシーを適切に保護する制度がないのも問題です。
http://www.patentisland.com/memo125.html
このような現状の制度のため、特許の藪という問題が発生しています。特に特許爆発という状況が生じている分野では、知的財産権制度における独占排他権が有する社会への害悪が顕著となります。
http://www.patentisland.com/memo124.html

知的財産権制度は、独占排他権を基盤にする第1世代知財の時代を終えて、進化した第2世代知財の時代に向かうべきと考えます。独占排他権を基盤にすることが、知的創作の活発化や利用の高度化をもたらし、さらには豊かで幸福な社会をもたらすであろうということは仮説に過ぎません。知的財産権制度は、独占排他権を中心とするシステムを脱却してさらに進歩する必要があると思います。
http://www.patentisland.com/memo111.html
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Unknown (土生)
2007-04-21 23:32:39
久野様
コメント有難うございます。
上記、拝読いたしました。
マーケットの効率性の例にしても、市場の仕組みが完成されて効率的に運営されているものではなく、絶えず問題が発生し、議論が行われ、修正が繰り返されています。
いささか達観したようなコメントになってしまいますが、社会自体が変化する中で完璧な制度というのはおそらくあり得ないので、久野様のような研究・提言活動などによって制度が切磋琢磨されることが、よりフェアで効率的な制度に結びついていくのであろうと思います。
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