先日、児童文学者協会茨城支部の集まりがありました。茨城支部では毎回課題本を読んで、感想を分かち合っています。
今回は「走れ、走って逃げろ」ウーリー・オルレブ作 母袋夏生訳 岩波少年文庫でした。わたしの感想文を紹介させていただきます。
第二次世界大戦下、ナチスドイツ占領下のポーランド。8歳のユダヤ人の少年スルリックは、ゲットー(強制居住区)のなかで家族とはぐれてしまい、一人で壁の外へ脱出します。
執拗に追いかけてくるドイツ兵から逃れ、働く場所を転々と移り、つかまりそうになると森へ逃げていました。森には恐ろしい獣や毒蛇などいたことでしょうが、スルリックは恐れることなく木の枝の上で眠るのです。そのたくましさに圧倒されます。
貧しい人の家に行けば助けてもらえると聞いて、お金持ちでなく貧しい家を訪れます。
特別親切にしてくれたおばさんは、スルリックに誰かに尋ねられた時の答えを教えてくれます。ユダヤ人であることがわかると殺されてしまうからです。
スルリックは名前を変え、逃亡生活を送るうちに、自分の本当の名前を忘れてしまいます。
後に父親と再会を果たしますが、そのときが父親との別れになりました。
父親は「自分の名前を捨てろ。記憶から消すんだ。だが、全部忘れても、父さんや母さんを忘れても、自分がユダヤ人だということは決して忘れちゃいかんぞ。」
と言いました。アイデンティティーを確立するように言ったのでしょう。
父親はスルリックを逃がすためにおとりとなって殺されました。
読んでいてスルリックを応援したくてたまらない気持ちになりました。
スルリックが歯車に巻き込まれて腕を失ったことはショックでした。ユダヤ人だからといって診察してもらえず、病院の廊下に放っておかれ、壊疽を起こして切断となってしまったこと。腕を失っても、片腕でできることを自分で考え、生きることに必死になる少年の姿に涙しました。
これは本当にあった話で、大人になったスルリックから聞いた話をもとにして書かれた小説です。情景描写が少なく、心理描写も少なく淡々と書かれています。
ホロコーストについて知らない人にはちょっと難しい内容です、中高生向きです。
*アイデンティティーとは、自分が何者か認識することです。
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今回は「走れ、走って逃げろ」ウーリー・オルレブ作 母袋夏生訳 岩波少年文庫でした。わたしの感想文を紹介させていただきます。
第二次世界大戦下、ナチスドイツ占領下のポーランド。8歳のユダヤ人の少年スルリックは、ゲットー(強制居住区)のなかで家族とはぐれてしまい、一人で壁の外へ脱出します。
執拗に追いかけてくるドイツ兵から逃れ、働く場所を転々と移り、つかまりそうになると森へ逃げていました。森には恐ろしい獣や毒蛇などいたことでしょうが、スルリックは恐れることなく木の枝の上で眠るのです。そのたくましさに圧倒されます。
貧しい人の家に行けば助けてもらえると聞いて、お金持ちでなく貧しい家を訪れます。
特別親切にしてくれたおばさんは、スルリックに誰かに尋ねられた時の答えを教えてくれます。ユダヤ人であることがわかると殺されてしまうからです。
スルリックは名前を変え、逃亡生活を送るうちに、自分の本当の名前を忘れてしまいます。
後に父親と再会を果たしますが、そのときが父親との別れになりました。
父親は「自分の名前を捨てろ。記憶から消すんだ。だが、全部忘れても、父さんや母さんを忘れても、自分がユダヤ人だということは決して忘れちゃいかんぞ。」
と言いました。アイデンティティーを確立するように言ったのでしょう。
父親はスルリックを逃がすためにおとりとなって殺されました。
読んでいてスルリックを応援したくてたまらない気持ちになりました。
スルリックが歯車に巻き込まれて腕を失ったことはショックでした。ユダヤ人だからといって診察してもらえず、病院の廊下に放っておかれ、壊疽を起こして切断となってしまったこと。腕を失っても、片腕でできることを自分で考え、生きることに必死になる少年の姿に涙しました。
これは本当にあった話で、大人になったスルリックから聞いた話をもとにして書かれた小説です。情景描写が少なく、心理描写も少なく淡々と書かれています。
ホロコーストについて知らない人にはちょっと難しい内容です、中高生向きです。
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