環境と体にやさしい生き方

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超低周波電磁波の危険性と対策

2011年06月03日 | 暮らし全般
前回のブログで、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が、5月31日(2011年)に、「携帯電話の頻繁な利用によって特定の脳腫瘍が引き起こされるリスクが高まる恐れがある」との見解を示したことについて書きました。

今回は、これと関連する超低周波電磁波について書きます。

少々古い話ですが、世界保健機関(WHO)は2007年6月17日に、各国に対して超低周波電磁波対策の法整備などの予防的措置をとることを求める勧告を盛り込んだ「環境保健クライテリア(環境保健基準)」をまとめています。

環境省報道発表資料:超低周波電磁界に関する環境保健クライテリアについて(平成19年6月19日)

世界保健機関(WHO)では、1996年から電磁界が健康と環境に及ぼす影響を評価するために、国際電磁界プロジェクトを開始しており、現在50ヶ国以上の政府代表、国際機関及び共同研究センターが参画しています。日本では国立環境研究所が協力機関となっています。

2007年6月に公表したのは、同プロジェクトが取り組んでいる高周波と超低周波の電磁界のうち、超低周波電磁界の健康リスク評価の結果を取りまとめた環境保健クライテリアです。

超低周波(ELF)電磁界には明確な定義はありませんが、一般的には300Hz(ヘルツ)以下の周波数の電磁界を指します。この環境保健クライテリアについては、人との相互作用(刺激作用)を考慮してその範囲を拡大し、100kHz(キロヘルツ)までを対象としています。

なお、関連情報のキーワードとして、新聞報道などでは『電磁波』を、環境省の報道では『電磁』を用いています。電磁波には、大きく分けて周波数の高い順に「放射線(エックス線など)」、「(太陽光線や赤外線など)」、「電波(テレビ、ラジオ、電子レンジ、携帯電話など)」、「電磁界(送電線、家庭電化製品など)」があります。すなわち、電磁界とは、電磁波に含まれ周波数の低い範囲に属するものといえます。(以下、このブログでは、新聞報道等に倣って『超低周波電磁波』ということばを用います。)

超低周波電磁波を発するものとしては、高圧電線、パソコン、ドライヤー、電気かみそり、電磁調理器,、電気毛布、電気カーペットなどがあります。前述のWHOのクライテリアでは、これらの超低周波電磁波の人体に与える影響について、「電磁波と健康被害の直接の因果関係は認められないが、関連は否定できず、予防的な対策が必要だ。」と結論付けました。これは、日本や米国などの疫学調査に基づく研究結果を支持したものです。

日本では、1999年から文科省の科学技術振興調査費で、国立環境研究所・国立がんセンター・自治医大などの11機関・大学が参加して大がかりな疫学研究が行われました。
この疫学調査は、全国の小児白血病患者312人の子供部屋の1週間にわたる電磁波の計測結果と、603人の健康な子供の居住地から同様の方法で計測した結果をもとに、白血病と電磁波の関連を比較分析したものです。調査・分析では、「0.4μT(マイクロ・テスラ)以上の居住環境で過ごした場合、小児白血病にかかる割合は2.6倍に上昇する。」との結果をまとめています。(テスラは磁界や磁石の強さを表す単位。従来使われていた単位であるガウスとの関係は、1ガウスが100マイクロ・テスラ)

しかしながらこの研究は、2002年11月の最終評価で研究内容に対して最低評価が下され途中で中止されています。評価では、「小児白血病患者の症例数が少なすぎる」、「電磁波以外の要因が影響している可能性がある」などの問題を指摘され、「科学的価値は低く、研究の結果が一般化できるとは判断できない。」とされています。
この疫学研究の代表者を務めた国立環境研究所の上級主席研究員 兜真徳(かぶとみちのり)氏(2006年10月死去)は、生前に「電磁波の問題は、不安ばかりが先行し、正確に認知されていない。環境リスクに対し、日本人の意識は甘い。国や業界が『寝た子を起こすな』という姿勢なのも原因だ。」と繰り返し語っていたとのことです。(2006年11月9日 読売新聞)

欧米各国では超低周波電磁波の問題が指摘され、高圧送電線を住宅地や学校などから一定距離隔離するなどの電磁波対策が講じられているにも関わらず、日本で2002年11月の疫学研究が中止されたのは、経済界の圧力などにより政府がその対策を避けてきたからではないかと思われます。米国などの研究では、超低周波電磁波に慢性的に被爆すると、小児白血病の他、ガン、脳腫瘍を発症しやすいという報告もなされています。

日本では現在、「原発ありき」で安全性を軽視した結果、福島第一原発の放射能汚染が深刻な問題となっています。
そして、原子力発電を推進するために、電力会社、プラントメーカー、監督官庁、原子力技術に肯定的な大学研究者、マスメディア等による「原子力村」ができあがって、危険性を指摘する人々が排除されてきたことが指摘されています。

WHOによる電磁波対策の法整備の勧告についても同様の結果とならないよう予防原則に基づいて政府・産業界が連携した対応を望みたいものです。

なお、WHOによると、電化製品のうち通常の使用環境で電磁波が強いのは、ヘアドライヤー、電気かみそり、掃除機、電子レンジ(電子レンジはマイクロ波(電波の一種))などで、テレビは1メートルの距離で0.01~0.15μT、電子レンジは、30センチで4~8μTの電磁波を浴びるとされています。

また、高圧電線から数メートル以内、テレビから70センチ以内、加湿器から60センチ以内、電気カーペットから90センチ以内だと(前述した小児白血病との関連が指摘されている)0.4μT以上の電磁波を浴びるとされ、日本では15歳未満の子供の1.9%の居住場所が平均磁界0.4μT以上だとする研究結果がでています。

私たちができる超低周波電磁波への対策としては、次のようなものがあげられます。
【1.電磁波の発生源から距離をとる】
電磁波の強さは距離の二乗に反比例しますので、その発生源から離れるほど安全です。国立生育医療センターの斎藤友博・成育疫学研究室長は、ほとんどの電化製品は1メートル以上距離を置けば問題ないと指摘していますが、できれば2メートル程度の距離をとりたいものです。

【2.使用時間を減らす】
電磁波を発するものの中には、電気かみそり・ドライヤー・電気毛布・電気カーペット、パソコンなどのように接触または数十センチ程度の至近距離で使用する電化製品もあります。このような製品への対策としては、使用時間を減らす努力が必要です。

【3.生活上の工夫をする】
上記の対策の他には、「電力消費量の小さな製品を選ぶ」、「こまめに電源を切る」、「極力リモコンの使用を避ける」、「電気に頼らない代替の方法をとる」などの生活上の工夫も必要です。また、電磁波を防護できると称した製品が多く出回っていますが、その効果がはっきりしていないものが多いのが現実です。


携帯電話が発する電磁波については、過去ブログ「WHO発表 携帯電話の電磁波に発がんリスク?」を参照してください。


【主な参考資料】
・環境省報道発表資料 「超低周波電磁界に関する環境保健クライテリアについて」 平成19年6月19日
・南日本新聞 「電磁波対策 法整備を勧告」 2007年6月18日
・読売新聞 「葬られた疫学からの警鐘」 2006年11月9日
・日経エコロジー 「電磁波 健康に悪影響を及ぼすのか?」 2006.10号
・地球とからだに優しい生き方・暮らし方 天笠啓祐著 つげ書房新社


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5 コメント

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電磁波 (bemsj)
2007-06-29 05:01:51
電磁波をキーワードにこのブログを拝見しました。
6月18日に公開されたWHOの低周波電磁界に関する環境保健基準の原文は読まれました?
私は、今、読んでいるところです。
返信する
訪問有難うございます (dairyu shin)
2007-06-30 04:45:42
WHOの低周波電磁界に関する環境保健基準の原文は、ページ数が多くて、とりあえず「Chapter 1: Summary and recommendations for further study」だけをアウトプットしたところです。全文の日本語訳はいつ頃出るのでしょうか?
返信する
こんにちは! (ようへい)
2009-04-07 11:36:18
TBありがとうございます!
記事とても参考になりました。
目に見えないものこそないがしろにせず、
真剣に取り組んでいってもらいたいですよね。
また訪問させてください~^^
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電磁波で性別判断 (こん)
2011-07-05 14:45:33
遠隔からの電磁界で性別判断が可能らしいです。人体通信に似た原理で誘導電流を利用しているらしいですが、恐ろしいですね。
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御礼 (ごん)
2014-01-14 01:00:26
判りやすい解説有り難うございます。
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