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持続可能な国づくりを考える会

経済・福祉・環境の相互促進関係を!

連載:持続可能な国づくりの条件 3

2014年09月01日 | 総合

 いわゆる「地球環境問題」と呼ばれているものは実に多様にあるのですが、今から十数年前に環境白書の中で環境省が発表したダイアグラムがかなり全体像をよく捉えていると思います。

 これについて細かい説明をしていると、時間が、それこそ「環境論」の90分授業15回でも足りないぐらいの中身があります。

 ですから、今日はとにかく非常に多様にあるのだということを見ておいていただくことにしますが、真ん中のあたりに「地球温暖化」とあります。

 

 

 日本の環境関係者の多くが「温暖化」と言い、マスコミも「温暖化」と言っていますが、国際水準からいうと用語が非常に矮小化されていて、むしろ「気候変動」と言うべきだと思います。

 「温暖化」という言葉のイメージで考えてしまうと、「この冬はこんなに寒いじゃない。どこが温暖化なの?」という話になってしまう。けれども「気候変動」とは、記録的な豪雪が降ったり記録的な豪雨があったり記録的に暑かったりという、記録的に上がったり下がったりと非常に激しくまさに気候変動しながら、五十年・百年単位で見ると少しずつ温度が上がっていくという話なので、毎年必ず〇・五度か一度ずつ右上がりに上るというイメージがもたれがちですが、そういうことではありません。

 ダイアグラムにあるように問題はたくさんあるのですが、今、「気候変動」がひとつの決定的に大きな問題だと思います。

  2007年に出されたIPCCの近未来予測と警告(以下参照)を見ますと、例えば2020年代の気温上昇の幅は0.5度から1.2度ぐらいだろう、と。

 

    IPCC・近未来予測と警告(2007年4月)

  ●2020年代(気温上昇 05.〜1.2度程度)         

 ・数億人が水不足による被害にさらされる

 ・サンゴ礁の白化現象が広がる

 ・生き物の生息域が変化し、森林火災の危険性が増す

 ・洪水と暴風雨の被害が増える

 ・栄養不足、下痢、呼吸器疾患、感染症による負担が増える

 ・熱波、洪水、干ばつにより病気になったり、死亡したりする確率が増える

 ・感染症を媒介する生物の分布が変わる

 ・北米では、河川の流量が減り、現在のような水需要は 満たせなくなる            

 

 素人考えで言うと、「これぐらい上がったからといって、どうっていうことないんじゃないか」という気がするかもしれませんが、それが実際に引き起こすであろう気候変動はここに挙がっているようなものですが、特に3番目の「生き物の生息域が変化し、森林火災の危険性が増す」ということ、これはもう非常にはっきり現実化していますね。

 1昨年だったか、ロシアですごい森林火災がありましたし、それから去年カリフォルニアでもありました。それから去年の暮だったか、オーストラリアでもありましたが、あれはもう消えたんでしょうか。とにかくあちこちで大きな森林火災が起こっています。

 それから日本も暴風雨の経験をしていますし、アメリカも記録的なハリケーンの体験をしている。

 それから頻発する竜巻など、ここのところちゃんと追いかけていくと「記録的豪雨」とか「記録的~」という、まさに気候変動・異常気象が連発していることは、みなさん実感しておられるとおりです。これをなんとなくではなくて、時間を追って通しで見ていくと、大きな気候変動が起こっているということが警告・予測―観測されています。

 ただし、IPCCに対する「温暖化は嘘だ」というジャーナリスティックな批判が、今非常に流行っています。もしかして当たっている部分があるかもしれないので、この会としてはIPCC第二部会長であられた西岡先生が顧問をしてくださっていますから、近々に「先生、あまりにもジャーナリズムが温暖化は嘘だと言っているから、『温暖化の嘘』は嘘だという話をちゃんとやってください」ということをこれからお願いしたいとは思っていますが……(注:IPCCの本格的な検証―反論はすでに公表されています)。

 しかし戻ると、温暖化だけの問題ではありません。もし温暖化がとりあえずそれほど大したことではないとしても、他の大変なことがたくさんあるということです。

  そのたくさんある中で、先ほどの図の左側・入口のところを見ていただくと、人口増加、経済成長、豊かさの変化、とにかく経済活動の拡大が、右側の端・出口のところで、生態系破壊、健康被害、人類存続危機というかたちになっています。どれかのテーマについては思ったほどではなかったとしても、この全体の図式はまったく変わらないと思います。

 今、矮小化されて「大丈夫だ」といった印象になってきているのが、例えば、「オイルシェールが見つかったから、アメリカはこれから石油が百年ある」とオバマ大統領が喜んでいたようなことですね。

 石油が百年あるからといって、地球資源が無限になるわけではないし、地球資源が無限にあったとしても環境の破壊がそれで解決されるわけではありません。

 このあたりのメカニズム全部お話しすると時間が足りないのですが、どこかだけが大丈夫になったから全体が大丈夫だという話ではまったくない。

 だから気候変動が大したことはなかったとしても、万一温暖化が嘘だったとしても、他に嘘ではない環境危機が実に深刻に多数ある、ということを確認しておきたいと思います。

 



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