ある旅人の〇〇な日々

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読書録「沖縄力の時代」

2009年04月26日 | Weblog
野里洋著の「沖縄力の時代」(ソフトバンク新書、2009年)を読了する。「癒しの島、沖縄の真実」(ソフトバンク新書、2007年)の続刊のようなもの。今回はどんな切り口で沖縄を書くのか期待していたが、総花的であった。
書名の沖縄力とは、沖縄県が転勤したい都道府県の第2位、移住したい都道府県の第1位にランクされているところからきている。「沖縄には不思議な磁場があり、磁力があるようだ」と。
特に目新しいことは述べられてはいないが、著者の沖縄でのジャーナリストとして40年間の体験があるので説得力がある。
ウチナーンチュの側に意識の深いところで沖縄と本土との間に塹濠のような溝を感じていること。沖縄/日本という対立する視点でみる人がいること。本土復帰前の変動相場制というニクソン・ショックへの対応。県民の政党支持へのバランス感覚。米国との交渉では国力の差でどうにもならんこと。
さらに、基地所在市町村活性化事業や北部振興企業交付金が地元の活性化につながっていないことを数値で示してくれている。沖縄の経済自立を目的にしながら、ますます自立できなくなっていること。「沖縄では困った事態になると、特別に救済措置を訴える。そうした姿勢は、沖縄に自立できる力を育む結果になったのか。私は、現状と将来を憂えている」と結ぶ。
新しい情報としては、瀬底島の大型リゾートホテル建設が昨年のサブプライム問題で中断してしまい、廃虚になりそうなことである。軍艦島など廃虚ブームにはあるが中断廃墟では価値がない。ほかにも大型リゾートホテル建設計画がいっぱいあったようだ。宮古島と伊良部島を結ぶ架橋の計画も実行されつつあり、2013年に竣工予定だそうだ。小生としてはその予算320億円でもっと持続発展可能な他の事業があるのではないかと思ってしまう。
故筑紫哲也氏についても取り上げている。「筑紫さんはよく、沖縄を『少数派』として捉え、『多数派』である本土がこれにどう対処すべきか問うていた」と。
前著の「癒しの島、沖縄の真実」の帯のキャッチコピーは筑紫さんが書いていた。
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同じころ、彼と私は記者として米軍統治下の沖縄に渡った。私は3年で戻ったが、彼は40年住み続けた。
本書には「内と外」との眼を併せ持つ者のみが描きうる「真実」が溢れている。
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鬱陶しい一日を楽しませてくれたと言っていい。

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1 コメント

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架橋は慎重に (喜山)
2009-05-02 09:35:01
架橋は島が島でなくなることを意味しますから、そのことを島人が合意しているか、とても気になります。

「他の事業」を構想したくなりますよね。
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