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岩風呂は真ん中を壁と誂えた竹垣が邪魔をしている。腰湯にしかならない数歩目で小さくなっていると、垣根越しに御目付け役が守り刀で切り下ろしてきた。
「はい」と、わたしは返す。
ずんずん歩いていく奥には男湯女湯の仕切りが無いのである。双方から割り込める混浴になっていた。つまり、覗きどころか会いに行ける。これを以前から見知ってたんで奥まで歩いて行けなかったのである。行かない裸を楽しんでも居た。
台風の目に入って好い湯かげんも三人ぽっちです。一味の雨なのに見上げる曇り空へと、間、髪を容れずも茶目っ気に竹刀を返した男の音量に目付けを責める弟子と笑いが臨場感に増して熱気を帯びる。
〝私の居る場所を確かめた御目付けだった〟
更に熱くなる湯気を切り裂き、突き当たりの打たせ湯までは歩き出したかったが両の膝を辛く抱えていた。しっかり仕事する目付けであり、なかなか好感が持てた。それにつけても弟子の娘はホントーーーーーにカワイカッタ。ピッタリ、好みそのものだった。
わたしが覗かれたのではないだろうか。
この娘たちを誤解が言い汚さないように付け加えるが、男湯とは分かれている露天だと決め付けて入っていた。
わたしも聞かれない限り教えない普通の心根の持ち主だ。脱衣所に繋がる長い石畳どころか手前の門構えの引き戸から、混浴になっているなんて及びも付かない構えだった。男女別々が当然の顔見知り程度も混浴狙いの恋人たちをも引き裂いても、歩む先は鞭と飴の魔界に化していた。
「(あの家では)彼女だけがキリスト教だった」
「だから仏壇が変わっていたのね」
私は見たことが無い。たまらなく切なかった。
しかしながら一直線に天使の部屋に夜這いをかけられる喜びと戸惑いの大波に見舞われる私をサーフボードが未知数の師範へと押し出す幸せに包まれていた。
この前夜は弟子との別れの後ろ姿から、深まる夜は夜で夜泣きの赤ん坊みたいに、夜明けは寝起きの空間で天使を追いかけ回していた。
そして、この日に風呂上りの弟子は限界を読む時空に身を置いて、聞き役に徹する。
わたし一人で喋り捲り掘り下げる万分の一から、
「あの人は養子だったんだよ」
〝不吉な言葉や行いは忌み慎まなければいけません〟
な感じで娘たちは顔を見合わせ、頷き合いながら怒りの眼差しで私を見据えた。
それは本末転倒も甚だしく、ましてや戸籍に関わる秘密で風潮の一を成してはならないたる世間の常識を破り、個人的な嫌悪感の有無に無理矢理くっつけて、話題を身勝手な位置へと膨らませようとした過失で咎める四つもの強く焼けた眦でした。
この子たちは確かに正しい。ならば、
「・・・・・・・・・・、
「・・・・・・・・・・・・。
「(姉妹を性で汚してはいない。その記憶から無かった)・・・・・。
あっ!! と二重奏する。
深き三重奏の溜め息が、鈍い黙読に続く・・・