事実は映画よりも奇なり

乳がんで余命2週の告知もキリスト教の27歳の裏千家師範は延命薬で百八夜を内鍵付きの病室にて戦うも・・・

もうたいへんだった朝帰り

2009年08月24日 21時14分20秒 | 朝顔 「椿灰」 

 「 一夜 」 から

活発な写真の彩りはセピア色に変色するも味わい深き心葉のアルバムです。

まさに飛んで火に入る夏の虫。
自動ドアが開いた途端、左手の受付に居た4~5人の子たちに点火してしまう。
みんなの真ん中に立っていて恥ずかしそうに俯く彼女を、他の子達が私に向けて押し出してくるのである。靴を脱ぐのもそこそこに畳み掛けられ、騒ぎを聞きつける他の看護婦さん達にも加勢された私たち二人は、とうとう診察室も真ん中あたりで押しくら饅頭みたいにされてしまうんだ。
彼女はといえば、みんなが連想した絡まりつく目線に仰天するも精緻を極める背筋で会釈したあとは、はにかむ立ち姿を出し抜けに私にピタリ、くっつけられ、ふさふさに緑の黒髪が香しいキスシーンそのまんまの位置感覚に悶えつつも甘んじて、ただただ小さく消え入りそうな声で謝り続けている。
訪問が原因だとは分かっても、なんでこうなるのか狐につままれる私はオモチャにされるがままでした。
きびきびした挙動も四方八方に手招きまでして集結させ、しめしめとほくそ笑みながら弄り回すも軽やかに、しかしながら派手に十人十色で跳ね回り匂い群れたち映える小雀みたいな看護婦の事務員の店員さんたちの、仕事そっちのけ、性急にほったらかして一丸となった大胆さには唯、ポカァーンと小首を傾げるのみであり、箱詰めに隅っこに追い詰められてったサクランボです。
診察中だった院長も患者さんも、ただただ黙ったなりの模様眺め。
院長は成り行きが理解できていたから良いようなものの、患者さんの方の驚きには想像を絶するものがあったと思われます。

なんという騒々しさなのと裏手の店頭から奥様が大勢を引き連れて足早に駆けつけられるも、私を一目見られるや否や、それだけで納得の恵比須顔になられる。他の子達も一様に笑っている。
いよいよ動機も何もかも分からない推理小説。
騒ぎまくっていた女性陣も心強い加勢を得て、ほんの一時でも医療機関は季節はずれのお祭りでした。

「はやく応接室に
と和らぎの奥様に避難を促されて突破した離れ離れの静けさにて、やっと診察中でも無理からぬ成り行きの次第を教えられた。

明日のタイトルは「チェックアウトの時間帯」