功夫電影専科

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KSS発・格闘セレクション(終)『男たちの遊戯』

2017-03-31 15:08:14 | 日本映画とVシネマ
「男たちの遊戯」
製作:2000年

●刑事の松井哲也は、上層部から捜査の打ち切りを命じられるが、これに反発して単独で敵地に突入。麻薬取引の現場に踏み込むが、追ってきた相棒の飛野悟志が見ている目の前で焼き殺されてしまう。
失意の飛野は刑事を辞め、場末のバーでしがない探偵稼業を始めていた。そんな中、彼のもとに松井の弟・川本淳市が現れる。川本は「仇討ちに協力して欲しい」と告げるも、飛野は復讐の無意味さを解いた。
だが、かつて松井を殺した組織が再び動き出し、台湾マフィアとの提携を画策。同時に飛野の抹殺を目論み、彼は否応なく戦いに巻き込まれていく。仇討ちを目指して突っ走る川本と、覚悟を決めた飛野……今、命を賭けた男たちの遊戯が始まる!

 本作は、『十福星』で洪金寶(サモ・ハン・キンポー)と真っ向から戦い、今も第一線で活躍を続ける松井が初めてメガホンを取った作品です(脚本・製作も兼任、本作での名義は松井哲哉)。
この作品が一風変わっているのは、主演の飛野が手掛けた舞台劇が原作となっている点でしょうか。舞台劇が原作の邦画といえば、かつて『サバイバル自衛隊 SO SOLDIER』というトンデモない代物を紹介した事があり、あまり良い予感はしません(苦笑
ところが、不安を感じて調べてみたところ、なんと本作と『サバイバル~』は同じ会社が製作していたことが判明。同社は多くの舞台公演と映像制作を行っており、本作と『サバイバル~』も同じ経緯で撮影されたようです。
 そんなわけで見事に不安が的中してしまいましたが、ストーリーはそれほど破綻しておらず、思ったよりもスムーズに話が進んでいきます。
場面ごとの繋ぎが荒かったり、ホームドラマのようなコメディパートが邪魔だったりするものの、大した問題ではないと言えるでしょう。ただ、後述のアクションにおける問題点が発生した後、ラストバトルでとんでもない展開が待ち構えていました。
なんと敵の親玉との決戦を映像として描写せず、台詞だけで淡々と説明。その後に『サバイバル~』の別エンディングを彷彿とさせる驚愕のオチが襲いかかってくるのです。冒頭のカットで不穏な感じはしてましたが、まさかこんな着地をするとは…。

 とはいえ、本作はあの松井哲也が監督し、日本有数の格闘スターである川本も参加しているのですから、アクションシーンの質は保障されているはず。『サバイバル~』も肉弾戦だけは見事だったので、本作もその点は大丈夫…ではありませんでした(爆
本作最大の問題は、作中のアクションシーンが全て早送りされているという点です。早回しやコマ落としといった特殊効果ではなく、淡々と早送りされているだけなので、激しい違和感を感じてしまいます(最初はビデオデッキの異常かと思いました)。
 同じアクションシーンの早送りをした作品といえば、バス・ルッテンが出演した『バックラッシュ』があり、出演者の動きの悪さをごまかすために使われていました。しかし本作は、松井や川本という実力者を揃え、殺陣自体も問題は無いように見えます。
それなのに奇妙な早送りが使われ、あまつさえ川本はラストバトルで戦い始めたと思ったら、数分と経たぬうちに撃たれてリタイアするなど、まったくもって演出意図が解りません。一体どうしてこんなことに…う~ん。

 と、そんなわけで今月はKSSのアクション作品を追ってみましたが、終わってみれば見事に色物だらけのラインナップとなってしまいました(笑
しかし、2000年代初頭の邦画アクションは迷走状態にあり、そうした状況を打破するために若い才能が集い、悪戦苦闘した結果がこの作品群だったのかもしれません。やがて一連の作品に関わっていた人々は、それぞれの道を歩んでいく事になります。
『Bird's Eye』の下村勇二と『BRQ』の谷垣健治はアクション監督として大成し、『疾風』の山口祥行は格闘俳優の重鎮に。『闇の天使』の秋本つばさは『バトルロード』で奮闘を見せ、本作のアクション演出に協力していた川澄朋章も、動作設計の第一人者となりました。
低迷期から脱出し、見応えのあるアクション映画を撮れるようになった今日の邦画業界。しかしその背景には、多くのキャストやスタッフによる苦難の歴史があり、その過程で生まれた幾多の作品があった事を、我々は忘れてはならないのです(特集、終わり)

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