功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

更新履歴(2010/12月)

2010-12-29 23:50:55 | 李小龍(ブルース・リー)
 この記事をもちまして、当ブログは今年最後の更新履歴&2010年ラストの更新となります。この1年は本当に様々な事があり、公私共に大きな動きのあった年でした。正月以降は例によって小休止に入るので、ブログ再開は5日ごろを予定しております。
さて、前々から触れている当ブログの仕様変更についてですが、まず更新履歴のUPは月の頭ではなく月の終わりになります。そして、来年以降の奇数月は"お題"を決めて更新していくことになりました。これは"お題"に添ってあれこれ作品を紹介していくというもので、大雑把に言うと定期的に特集をするような感じです。
来月は1月なので、新年最初のお題は毛色を変えて「映画じゃない作品」をお送りしていきます。ドキュメンタリーやドラマのスペシャル、そしてジャッキーの出演したTV番組等々…ま、特に貴重でもレアでもないものばかりですが(爆)、色々とやっていくつもりです。それでは、来年も功夫電影専科と龍争こ門をどうぞよろしくお願い致します。皆さん、良いお年を!


12/02 更新履歴(2010/11月)
12/05 『十二潭腿』
12/08 『ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~』
12/12 『バトルハッスル』
12/15 『ブラッド&ボーン 真拳闘魂』
12/20 『香港レディ・レポーター』
12/24 『六合千手』
12/29 【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2010年度)】
    更新履歴(2010/12月)

【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2010年度)】

2010-12-29 23:39:34 | Weblog
 2010年も残すところあと僅かですが、今回は「功夫動作片番付」と題しまして、この1年に紹介したタイトルからベスト10とワースト10をセレクトしてみたいと思います(もちろんランキング自体にあんまり深い意味はありません)。
ちなみに今年このブログでお送りしてきた作品は、映画・Vシネ・TVドラマのエピソード等々を含めますと、累計86本になります。今年の頭に「2010年は更新ペースを落とさずに100本レビュー!」とかなんとか言っていましたが、終わってみれば大幅に下回る結果となってしまいました。う~ん…残念(涙


 【功夫動作片番付(ワースト10)】
第10位『[イ火]頭小子』
第9位『新・ピィナッツ』
第8位『燃えよ!香港少林寺』&『吼えろ!香港少林寺』
第7位『メダリオン』
第6位『香港の女必殺拳』
第5位『死亡魔塔』
第4位『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』
第3位『殴者 NAGURIMONO』
第2位『ブルドッグ』
第1位『無比人』
 まず最初はワースト10からの発表ですが、本年度はとんでもない駄作に遭遇することが少なく、幸か不幸か安定した一年を送れました。『Gメン82』からは2つほどランクインしていますが、これは香港ゲスト陣の不発とストーリーの不備、Gメンサイドの不遇っぷりが大きかったため。『Gメン75』からのスケールダウンが激しかったことも一因となっています。
邦画作品からは3本もランク入りしており、中でも『無比人』『新・ピィナッツ』は「アクションシーンの照明が暗い」という共通の欠点を有していました(なぜか今年は邦画を見るたびに、暗いシーンに当たるケースが幾つかありました)。他には香港映画から3本、格闘映画からは2本が名を連ねるという結果になっています。改めて全体を見直してみますと、日本産のタイトルがやけに多いような……(汗


 【功夫動作片番付(ベスト10)】
第10位『ハード・ブラッド』
第9位『プロジェクトD』
第8位『真一文字 拳』
第7位『賭命走天涯』
第6位『怒れるドラゴン/不死身の四天王』
第5位『タイガー・コネクション』
第4位『Bloodmoon』
第3位『六合千手』
第2位『ブラッド&ボーン 真拳闘魂』
第1位『鐵馬[馬留]/鐵猴子』
 さて、次はベスト10の発表です。こちらはワースト10とは打って変わって、ランクのほとんどが香港映画とマーシャルアーツ映画に席巻されています。その中で唯一の邦画作品『真一文字 拳』は、ジャッキー映画に対する愛に満ち溢れた作品なので功夫映画ファンは必見…かもしれません(笑
実は今年のベスト10は面白いことに、前半と後半でキッチリと色が分かれているのです(もちろん意図してランク付けしたわけではありません・爆)。10位から6位まではストーリーも凝っていて、その上で功夫アクションが素晴らしい作品が中心。一方、5位から1位までの作品はストーリーこそシンプルですが、ファイトシーンの連発でダイナミックに見せ切ってしまう作品で占められました。
 中でも『ブラッド&ボーン 真拳闘魂』と『鐵馬[馬留]/鐵猴子』は、どちらを1位にするか最後まで悩みました。双方とも全編に渡って高度なアクションが展開され、それでいて物語にも手抜かりなしという傑作同士です。決め手となったのはラストバトルで、マイケル・ジェイ・ホワイトが途中で対戦相手を変えてしまう『真拳闘魂』に対し、『鐵馬[馬留]』では陳觀泰(チェン・カンタイ)と金剛(カム・コン)が最後まで闘いを続けていたので、軍配は『鐵馬[馬留]』に上がりました。
とはいえ、この2作品を見たことで「クラシックな功夫映画の奥深さ」と「近代マーシャルアーツ映画の進歩と発展」を垣間見ることができ、非常に有意義な時間を過ごせました。今年の頭に「ショウブラ作品をもっと見る!」とも宣言していましたが、来年はショウブラやハーベストの初期作品などといった古の名作にも目を通していきたいと思っています。無論、邦画作品やTV映画も順次視聴していくつもりなので、来年もまた忙しない1年になりそうです(苦笑

『六合千手』

2010-12-24 23:26:34 | カンフー映画:傑作
六合千手
英題:Duel of the Seven Tigers/Return of the Scorpion
製作:1979年

●皆さんメリークリスマス!何だかあっという間の12月でしたが、当ブログは今回が今年最後の作品レビューとなります。ラスト更新は今月の更新履歴とベスト&ワーストで〆にするつもりですが、コメントおよびメールについては順次返信していく予定です。そして、前々から勧めていたあるプランを来年以降に実施していきたいと思っていますが、こちらは更新履歴の項で触れたいと思います。

 そんなわけで今年最後の作品紹介は、質の高い功夫片を撮る事で知られる協利電影作品でフィニッシュです。同社は、ワンパターンに陥りがちな功夫片というジャンルにおいて、ひと捻りを加えることによって新しい方向性を模索し続けた"野心家"ともいうべき存在であった。
大手プロダクションと違い、後ろ盾も予算も無い独立プロであった彼らは、出来る限りの範囲で最大限の努力を尽くした。その成果は既に日本発売されている作品群からも見て取れるが、国内未発売の作品にもレベルの高い物が多々ある。本作もそんなタイトルのうちの1つで、協利電影の花形スターだった金童(クリフ・ロク)と高飛(コー・フェイ)が、善悪分かれての真っ向勝負を繰り広げている。
 物語は実に潔い内容で、中国拳法と日本空手の総力戦をジックリと描いている。かつて少林寺での戦いに負けた師の仇討ちを目論み、日本から最強の空手家・高飛がやって来た。高飛は恐ろしく強く、中国武術界は短期間で甚大な被害を受けてしまう。武術界のお偉方から「高飛をなんとかしてくれ」と頼まれた[ン先]林は、各地で仲間を募って闘いを挑むこととなった。
集められたメンバーは韓英傑・楊[目分][目分]・林文偉・趙志凌・李冠雄・陳耀林の6人。更に[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)に負けて隠遁していた金童も加え、一行は高飛に挑戦状を叩き付けた。数の暴力に訴えた中国拳法連合であったが(笑)、高飛は予想以上に強かった。メンバーはもれなく重症を負い、最後まで踏ん張った韓英傑も命を落としてしまう。
分散して闘っては勝ち目が無いと悟った彼らは、軽症だった金童に全員の奥義を伝授。特訓を終えた金童は高飛とのリベンジマッチに挑むのだが…。

 特にドラマチックな物語があるわけでもないが、高度な功夫アクションに彩られた満貫全席のような作品である。いつも協利作品は高水準の功夫アクションを提供しているが、本作はその功夫アクションを重視した内容となっており、これまでの同社作品と比較しても功夫シーンの密度は非常に高い。
オープニングと呼ぶには余りにも長い演舞で幕を開け、いきなり本作武術指導家の陳少鵬VS大聖劈掛門の陳秀中という本格派同士の対決でスタート。続いて高飛が登場し、突き刺さるような蹴りと堂々たる悪役っぷりで作品の全てをかっさらう。『七人の侍』チックな連合結成の流れを経て、中盤のクライマックスとなる連合VS高飛では各々のポテンシャルが最大限に発揮されており、とりわけ韓英傑VS高飛の対決は印象深い。
 ラストでは全員の拳法を叩き込まれた金童が、海沿いの岩場で高飛との最終対決に挑んでいく。真新しいシチュエーションでの一戦だが、地の利を生かしたバトルにもなっているところが上手い。金童は『天才カンフー』に続き、再び複数の拳法を操るという難しい役柄にチャレンジしていて、先の乱戦で他メンバーが使用した技で高飛に肉迫。都合9分にも及ぶこの死闘は、金童にとって『龍形摩橋』のVS黄正利に並ぶベストバウトと言えるだろう。
…さて、重複しますが今年の功夫映画レビューはこれにて終了。来年はどんな功夫片や動作片、或いはマーシャルアーツや邦画作品に出会えるのか、今から実に楽しみです。ところで先頃、行きつけのレンタルビデオ屋が閉店し、とうとう近所でVHSソフトがレンタルできるショップが全滅してしまいました(涙)。これからはショップ通いからネット巡りにチェンジしていくので、更新模様もかなり様変わりするかもしれません。それでは皆さん、また来年!(※更新はまだ続きます)

『香港レディ・レポーター』

2010-12-20 23:50:45 | 女ドラゴン映画
「香港レディ・レポーター」
原題:師姐大晒
英題:The Blonde Fury/Righting Wrongs 2/Lady Reporter
製作:1989年

●香港映画界は非常に厳しい世界である。映画界ならどこだって厳しいものだが、香港はご存知の通り功夫アクションの本場で、誰もが常にカンフーと隣り合わせ。売れっ子歌手でもアイドル女優でも、必ずアクションの洗礼を受けるのが香港映画という世界なのだ。
そんな環境において、功夫の腕前だけで成り上がろうとするには実に血の滲むような努力が必要となってくる。激しいファイトシーンを演じ、死に物狂いでスタントに挑み、最後に選ばれた者だけがスターとなれる…そうしてジャッキーやサモハンらは今の地位を得たのだ。だが、これが外国人になってくると更に倍率はドンと増える事となる。現地の人間にとっても狭き門である功夫スターへの道に、外国人が挑むことがどれほど大変かは説明するまでもないだろう。
 ある者は負傷したままアクションを演じさせられ、ある者は違法なニンジャ映画に恥を忍んで出演した。外国人というハンデに耐え、香港のスタッフを納得させられるほどの力を見せ付けて、初めて彼らは一人前として認められた。そんな過酷極まる外国人アクターの中にあって、頂点に登りつめたのがこのシンシア・ラスロックだ。
シンシアは『レディ・ハード/香港大捜査線』で鮮烈なデビューを飾り、荒々しい功夫ファイトで見る者の度肝を抜いた。その動きは力強さと柔らかさを兼ね備え、本場の功夫スターも舌を巻くような迫力に満ち溢れている。『検事Mr.ハー』ではユンピョウと闘い、『上海エクスプレス』ではサモハンからダウンを奪った。実力・技術・出演作の質…どれを取っても高レベルを維持しているシンシアこそ、白人女ドラゴンの代表格であったと言っても過言ではないのだ。
そして、その彼女が唯一単独主演した香港映画が本作である。当時は様々な外国人アクターが居たが、ピンの主演作を撮れたのは彼女だけだった。それでいて本作の製作はサモハン主催の寶禾影業で、スタッフもキャストも一流の人員で固められている。それほどシンシアが周囲から期待され、同時に信頼を得ていたことが解る。

 さてストーリーはというと、これが至極単純明快。香港で暗躍する偽札組織の実態を解明すべく、シンシアが悪党を蹴って蹴って蹴りまくるという話である。ここに三流新聞の記者・孟海(マン・ホイ…本作の監督武術指導兼任)、刑事の錢小豪(チン・シウホウ)も絡んで来ての大活劇になるが、物語としてはそんなに大したものではない。本作のメインはあくまで功夫アクションの数々であり、意外性とは無縁の平々凡々な話が展開されている。
とはいえ、この平々凡々さが気楽に見るには最適であり、殺伐とした雰囲気になっていない(オマケに人死にもほとんど無い)ので、印象としては悪くない。シンシアも本作では明るく元気なキャラを演じていて、いつものシリアスなイメージとは違った顔を見せている。では功夫アクションはどうなのかというと、こちらも平々凡々…になっているワケがありません(笑

 本作の武術指導は、女闘美アクションなら天下無敵の元奎(コリー・ユン)が担当。のちに『レディ・ウェポンZERO』『クローサー』『DOA』を撮り、数々の傑作レディースアクションを生み出す彼の手腕は、本作でも十分に発揮されている。アクションはフリーファイトをベースに、竹の足場やロープで組まれたドームなど、立体的なシチュエーションを活用した物が多い。場合によってはワイヤーも使われていて、奥行きのある殺陣が見事に表現されている。
そして本作一番の見せ場といえば、ラストにおけるシンシアVSジェフ・ファルコン&ヴィンセント・リンの外国人対決だ。ここまで負け無しのシンシアだが、さすがに2人同時に相手をするのは分が悪い。そこで彼女はコンテナの隙間に移動し、敵の動きを封じる戦法に出た。この一連の流れは『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でも再演されるが、本作では更に続きがあり、ジェフとの棒術バトルが勃発する。この棒VS棒のバトルはハイテンポで面白いのだが、残念な事に尺が極端に短い。ここはトラックのくだりを省いてでもシンシアVSジェフをやって欲しかったです。
ストーリーに拾いどころは無く、功夫アクションを堪能するためだけの本作。とはいえ、「白人女ドラゴンによる初の単独主演作」という点で香港映画史に残る作品であり、無下にはできない作品といえるだろう。それにしてもシンシア、またスクリーンに帰ってきてくれないかなぁ…。

『ブラッド&ボーン 真拳闘魂』

2010-12-15 23:43:30 | マーシャルアーツ映画:上
「ブラッド&ボーン 真拳闘魂」
原題:BLOOD AND BONE
製作:2009年

●謎に包まれた男(マイケル・ジェイ・ホワイト)が孤児を預かっている黒人女性の元を訪れ、居候する場面から物語は始まる。ストリートファイトの試合に現れた彼は、突然チンピラのダンテ・バスコ(この人が実写版『北斗の拳』のバット)に「俺も参加させろ」と強要。その強気な宣言どおり、マイケルは一瞬で相手のファイターを叩きのめしてしまった。
 そこから彼はバスコを相方に破竹の快進撃を続け、いよいよ王者ボブ・サップとの対決を向かえる。ドラッグによって凄まじいパワーを振るうボブであったが、マイケルの前には王者といえど敵ではなかった。この結果を受け、ボブを擁していたマフィアのイーモン・ウォーカーは2人を自宅に招待し、国際的な闇の格闘大会へ出場しないかと持ちかけてきた。
イーモンは自分の女であるノーナ・ゲイにマイケルを楽しませるよう指示するが、ここでマイケルの真の目的が明かされる。実はマイケル、刑務所でイーモンの差し金によって殺された親友の妻=ノーナを救い出そうとしており、仇敵イーモンを倒すためにここまで潜り込んだのだ。
 言葉巧みにイーモンの元から彼女を連れ出したマイケルは、麻薬依存に陥っていた彼女を専門の医療機関へと案内し、引き離されてしまった息子との再会を約束した。一方、イーモンはマイケルを格闘大会のチャンピオンと闘わせるべく、武器商人のジュリアン・サンズに協力を依頼。大金をはたいてマイケルVSチャンプの対戦をセッティングするが、当のマイケルはイーモン潰しのために「やっぱり試合に出るのは止めた」とドタキャン宣言をしてしまう。
当然、怒り心頭のイーモンは人質を使って従わせようとするが、先手を打っていたマイケルにその手は効かない。窮地に追い込まれたイーモンは苦肉の策として、自分をオトリに無理矢理マイケルを格闘賭博に誘い出そうと企んだ。こうして彼はチャンプのマット・マリンズと死闘を演ずる事になるのだが、その対決には思わぬ結末が待ち受けていた…。

 黒人格闘スターとしてトップレベルの実力を持つ男、マイケル・ジェイ・ホワイトが自ら企画した入魂の作品だ。ストーリーは至極シンプルで、刑務所帰りの男がストリートファイトに参戦し、親友の女房を悪の手から救い出すまでを描いている。粗筋だけだと凡庸な格闘映画を想像してしまうところだが、本作はそのストーリーに対して一切の妥協が無い。きちんと各キャラクターの個性が発揮されており、結末に至るまでキッチリと描写されているのだ。
脚本を担当したマイケル・アンドリュースは「現代の西部劇を目指した」と語っており、本作の"謎めいた男が無法の町で悪党を倒して去っていく"という構図に反映されている。また、アクションで物語を引っ張った『デッドロックII』とは違い、本作では物語がアクションを引っ張っている。質の高い格闘シーンを構築するだけで精一杯なマーシャルアーツ映画にあって、ドラマと格闘アクションの両立に成功している本作は大いに評価されるべき存在と言えるのだ。
 もちろん、格闘シーンにおいても本作は素晴らしい物を残している。主人公のマイケルは本作でも高い身体能力を見せており、ボブ・サップとの対決やザコ戦では足技に依存せず、テクニカルな手技と両立させた立ち回りを披露。殺陣のテンポも実に軽快だが、それでいて技が軽く見えないところは流石と言うしかない(それどころか重厚さすら感じるから凄い)。
ラストではマイケルVSマット・マリンズという達人同士の対戦になり、こちらのバトルも俊敏な技の応酬で魅せてくれている。その後、この一戦は中途半端なところで中断され、強引にイーモンとのバトルへ突入してしまう。個人的にはマイケルVSマット(こう書くと『ジャングルの王者ターちゃん』みたい)で一貫して欲しかったが、マイケルVSイーモンのウェポンバトルも思ったより悪くないのでひと安心。この戦いは、途中で武器を貸してくれる特別ゲストに注目しながら見た方が面白いかもしれない(笑
 近年のマーシャルアーツ映画の中でも飛び抜けたクオリティを誇る逸品。…それにしても、90年代から活躍し続けてなお一級品の格闘アクションを演じられるとは、マイケル・ジェイ・ホワイト恐るべし。ウェズリー・スナイプスもいいけど、『Expendables 2』には是非マイケルも出して欲しいところであります。

『バトルハッスル』

2010-12-12 23:39:37 | 倉田保昭
「バトルハッスル」
製作:2010年

▼前回はインドネシアの新作だったので、今回は日本の新作格闘アクションの紹介です。
本作は『マスター・オブ・サンダー』『柔術』に次ぐ、和製ドラゴン・倉田保昭プロデュースによるアクション映画だ。これまで氏の手掛けてきた作品は、夢の対決を用意したり柔術をメインにしたりと、必ず新しいものにチャレンジしてきた。今回もその例に漏れず、ギャグ満載のハチャメチャ格闘アクションという新境地に挑戦している。
 新境地…といっても、作品自体はタイトルにあるとおり『カンフーハッスル』をかなり意識している。舞台がボロボロの集合住宅・怖い鬼嫁と頼りない旦那・CGを多用したアクション・イカレまくった最後の敵など、デジャブを感じるカットが幾つも散見される。しかし、こういったコメディ・アクション映画は近年の日本では珍しいし、香港映画チックなドタバタ劇は見ていて楽しいものがある。結果はどうあれ、個人的に作品そのものは割と好きだったりします(笑

■ストーリーは、床に伏せる大富豪・倉田の頼みにより、ハウス・カリフォルニアというボロアパートへ孫の川井隆介がやって来る所から始まる。
倉田曰く「死ぬ前に渡す物があるから昔ワシが住んでたアパートに行け」との事だったが、そこに住む人々は揃いも揃って曲者ばかり。ブチ切れホステスの船津未帆、売れない演歌歌手の中谷隆信を筆頭に、みんな妙に腕っ節が強いのである。なお、『カンフーハッスル』では住人が強いことに理由付けがされていたが、本作では何の説明も無かったぞ?(爆
 川井はアパートで管理人をやっている姉と出会い、自分の両親がある男に殺されていたことを知る。大富豪であるが故に倉田一族は命を狙われる運命にあり、そのために川井の親は殺されてしまったのだ。倉田がかつて住んでいた部屋で、川井は己を鍛える修行を始める…のだが、ある日突然アパートは道路建設による立ち退きを迫られてしまう(実は裏切り者である倉田の側近による陰謀)。
これに対し住人たちは徹底抗戦の構えを取り、立ち退きを迫る"立ち退き屋"との闘いが始まった。"立ち退き屋"はそこそこ強かったが、鍛えた川井と住人たちの敵ではない。だが、連中を追い詰めたところで最強の敵・中村浩二が姿を現した。実は彼こそが川井の両親を殺した張本人であり、様々な超能力を操るとんでもない男だったのだ!これには誰も歯が立たず、万事休すかと思われたが…?

▲ギャグ描写については勢いに任せているだけに見えるが、それでも十分面白い作品だ。さすがに『カンフーハッスル』までとはいかないが、個性豊かな住人たちの掛け合いは賑やかだし、それぞれのキャラクターもきちんと立っている。そのぶん、主演である川井の個性はあまり感じられないが、『カンフーハッスル』でも住人を魅力的に描きすぎて主人公が置いてけぼりを喰らってたので、これはまぁ仕方がないのかも。
 ただ、格闘アクションについてはやはりクオリティが高く、全編に渡ってコメディ仕立てのアクションが炸裂している。オープニングはいきなり船津VS中谷による熱戦から始まり、中盤のいざこざを経て"立ち退き屋"襲撃シーンへと移る。ここで出てくる"立ち退き屋"軍団は倉田プロの裏方アクターたちのようで、与えられた見せ場の中で最大限の頑張りを見せている(特に緑のニッカポッカを穿いた兄ちゃんの動きと、鉄骨にぶつかりながら落ちるスタントは必見)。
そして終盤、演じている本人から「次はもうちょっと普通の役で…」とまで言われた中村が登場し(笑)、アクションレベルは最高潮を迎える。住民たちが倒される中、川井に死んだ倉田が乗り移ってパワーアップ!ラストバトルは川井VS中村の勝負となるが、乗り移っている倉田がちょくちょく出てくるので、実際は川井&倉田VS中村と言った方が正しいか。中村のパワーに対し、派手な回し蹴りを連発して対抗する川井!倉田を交えてのこの一戦は、ウヤムヤになった『柔術』よりも完成度が高く、ここだけでも本作は見る価値があります。
 人によってはギャグ描写でノーサンキューになってしまうかもしれないが、倉田プロ作品の中では上位に位置する本作。ところですっかり倉田プロ作品の常連悪役になってしまった中村浩二だけど、彼がラスボスを演じるのはこれで2度目(外部の作品も加えると3度目)。そろそろ倉田プロから新しい悪役スターが出てこないと、画的にちょっと辛いのでは?

『ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~』

2010-12-08 23:24:40 | 東南アジア映画
「ザ・タイガーキッド ~旅立ちの鉄拳~」
原題:Merantau/Merantau Warrior
製作:2009年

▼うむむ…これは凄い映画だ…凄い映画だけど…詳しくは後述にて(謎)。そんなわけで今回は久々に新作の格闘映画の紹介です。本作はいわゆる『マッハ!』の影響によって作られたリアル・ヒッティング系の作品で、なんとインドネシア産の作品です。
インドネシアといえば、かの功夫スターである莊泉利(ビリー・チョン)の出身地で、過去にも色々とアクション映画は作られているのですが、本作は伝統格闘技「シラット」を題材にしているのが特徴であり売りとなっています。

■さる片田舎の集落に住む青年イコ・ウワイスは、「大人になったら出稼ぎするべ」という村の風習に従い、首都・ジャカルタへと向かった。
彼の夢は、自身が得意とする武術・シラットの道場を開くというものだったが、夜行バスの中で出会ったシラット経験者であるナイナイ岡村似のおっちゃんから「今日びシラットなんて流行らねぇって。金稼ぐんなら何だってしなきゃいけないけど…ま、俺みたいにはなるなよ?」と、意味深な忠告を受けた。
 忠告は現実のものとなり、間借りをしようとしていた?家は瓦礫の山と化していた(どうやら不動産屋に騙された模様)。着の身着のままで大都会に放り出され、行き場を失ったイコ。そんな前途多難な彼から鞄を盗もうと、1人の少年が現れた。
すぐさまイコは少年を追いかけたが、行き着いた先には彼の姉でダンサー志望のシスカ・ジェシカがいた。この2人は親に捨てられた身寄りの無い姉弟で、その日の糧を得るために必死で生きていたのだ。
 その後、イコはシスカに殴りかかったチンピラを撃退するが、これが騒動の火種になってしまう。このチンピラ、実は西洋人の人身売買組織の傘下に入っており、組織は「売り飛ばす女の数が足りないぞ」と要求。チンピラはシスカを誘拐して穴埋めをしようとするも、たまたま現場を目撃していたイコによって阻止され、組織のボスも大怪我を負わされた。
激怒したボスはチンピラにイコたちを探すよう指示し、追われる身となった彼らは街から脱出しようと試みる。だが、いったん自宅に戻ったところを組織に襲われ、弟を助けようとしたシスカが捕まってしまう。イコはたった1人で敵のアジトへと向かうのだが…。

▲まず格闘シーンについてですが、こちらはよく出来ています。本作では『マッハ!』のようなアクロバティックな動きは少なく、どちらかというと手技中心の動作が多め。私はシラットという格闘技をよく知らないんですが、イコの見せるファイトはとても迫力があり、その動きは過去に登場したどのアクション超人にも見劣りしていません。
中でも圧巻なのがイコVSナイナイ岡村似の一戦で、狭いエレベータ内を転げ回りながら展開する壮絶な闘いが実に凄まじい。ここまでイコの相手がザコばかりだったので、シラット同士によるこの接戦はとても印象的でした。
続くラスボス戦では、手技&足技コンビが敵という『Who am I?』チックな闘いとなり、こちらも充実した内容の好勝負。どっちも面白い対戦だったけど、ここはシラットをフル活用したVS岡村戦の方が良かった…かな?
 ということで、格闘アクション的には概ね良好と言える本作ですが、ストーリーの方はちょっと好き嫌いが分かれるかもしれないですね。というのも、本作は一貫して全体の雰囲気が暗く、所々に生々しい描写を挟んでいるからです。
これは現実にインドネシアが抱える問題を映画に反映したものと思われますが、それ故に本作は物語が進むに連れてどんどん陰惨な方向へと加速していきます。シスカがボスに手込めにされる(!)のを皮切りに、ナイナイ岡村似が銃弾の雨を浴びて惨殺されるに至り、最後に物語は衝撃的な結末を迎えてしまうのです。
 そのため、スカッとする活劇を期待していた私はラストで呆気に取られてしまいましたが、、本作は決して悪い作品ではありません(最後のカットが泣かせます)。個人的にはハッピーエンドでいて欲しかったですが、これはこれで強烈な印象を残していました。
皆さんも本作を見る際は、単純なアクション映画ではないということを念頭に置いて視聴することをオススメします。

『十二潭腿』

2010-12-05 23:49:30 | カンフー映画:佳作
十二潭腿
英題:My Kung Fu 12 Kicks/Incredible Master Beggars
製作:1979年

▼この作品はコメディ功夫片ブームの際(なんか最近この手の作品ばっかり紹介しているような・汗)、かつて『帰ってきたドラゴン』で名を馳せた梁小龍(ブルース・リャン)が、夢よもう一度と挑戦したコメディ功夫片である。
梁小龍といえば、凄まじいジャンプと豪快な蹴りが持ち味のパワフルな功夫スターで、『帰ってきたドラゴン』等で印象的な活躍を見せている。そんな彼も流行のコメディ功夫片へ出演することになったのだが、シリアスはもちろんコミカルな演技も得意としていた梁小龍にとって、コメディ作品に順応するのは難しい事ではなかった。加えて身体能力の高さも幸いし、幾つかの秀作功夫片を残しているのだが…その前に少しぐらい痩せてよ!(爆

■しがないスリの梁小龍は、手癖は悪いがケンカの腕はからっきし。今日もスリで失敗してボコボコにされ、友達の韓國材(ハン・クォツァイ)に介抱されながら「やっぱ功夫使えなきゃダメだよなぁ」と愚痴っていたが、突然の転機が訪れた。邪悪な拳士・李海生(リー・ホイサン)の道場破りに遭遇した梁小龍は、李海生の手により重症を負った3人の師匠を匿ったのだ。
身売りされた可哀想な女の子のエピソードを挟みつつ、梁小龍は3人の師匠から功夫を教わる事になった。その結果、いっちょまえの腕前になった梁小龍は、以前自分をボコった賭場の連中にリベンジを決行!大細眼や山怪を思いっきりタコ殴りにするも、梁小龍の養父?だった谷峰(クー・フェン)には簡単にいなされてしまった。
 この谷峰、今は車夫だが昔は最強と呼ばれた"十二路潭腿"の達人だったのだ。特訓は3人の師匠から谷峰にバトンタッチされ、足をとことん鍛えるトレーニングが始まった。基本的な鍛錬からスタートして、手技も足技も満遍なく特訓!特訓!特訓!あまりに修業が長いので特訓だけで話が終わるかと思われたが(笑)ここに来て李海生サイドが動き出した。
実は、梁小龍にやられた賭場の連中は李海生と繋がっており、李海生は息の根を止めそこねた3人の師匠を探していたのである(←推測です)。遂に梁小龍と李海生の直接対決が始まったが、李海生は鐵布杉(少林寺の防御術)を身に付けているので、まったく技が効かなかった。韓國材と谷峰の助けで窮地を脱した梁小龍は、いったん退却して"十二路潭腿"の修業を完遂させると、いよいよ李海生との最終決戦に挑む!

▲ただひたすら特訓!特訓!特訓!な本作だが、なかなか面白い作品である。「ボンクラ青年がヘンテコ修業を経て悪党と闘う」というありきたりな話ながら、ストーリーはテンポ良く進むので冗長さは感じられない。加えて高度な功夫アクションも堪能できるのだから、功夫映画ファンにとっては堪らない逸品となっているのだ(唯一の不満点はヒロインの扱いで、取って付けたように出てきてアッサリ退場するのは、ちょっとどうにかして欲しかったです)。
功夫アクションは梁小龍自ら振り付けており、強敵も出てくるが全編に渡って梁小龍オンステージと化している。この頃は太めの体形になっているが、俊敏な動きと高い蹴りは全盛期の頃からほとんど変わっておらず、やはり香港映画界最強の名は伊達じゃないと改めて驚きました。また、注目の梁小龍VS李海生によるラストバトルも、重厚な手技に対して力強い蹴りで立ち向かう白熱した展開を見せ、お互いの持ち味を生かした名勝負となっている。……でもやっぱり気になるなぁ、動くたびにボテボテしてる梁小龍の腹回りが(涙
蘇化子よりも庶民的で親しみのある谷峰もイイ感じだし、功夫アクションだけなら至高の域に達している本作。ところで、『Gメン75』の梁小龍VS李海生も「足技の梁小龍VS鐵布杉(のような技)を使う李海生」という図式だったけど、本作と何か関係があるのだろうか?気になります。

更新履歴(2010/11月)

2010-12-02 23:51:32 | Weblog
 年の瀬も押し迫り、徐々に真冬の気候へと変わりつつある寒空の下、皆さんいかがお過ごしですか?11月は傑作功夫片を中心にお送りしてきましたが、12月も引き続き様々な作品を紹介していく予定です。どうぞお楽しみに!
ところで2011年以降の当ブログについてですが、実は更新形態の変更を考えています。まだ構想中の段階ですが、もしかしたら来年は功夫電影専科がガラリと様変わりするかもしれません。ただ、年末は色々と仕事がドン詰まりなので、クリスマスはおろか大晦日や正月も返上で出勤するハメに……この鬱憤、功夫片で解消したいと思います(涙


11/02 更新履歴(2010/10月)
11/05 『テラコッタ・ソルジャー』
11/08 『龍猫燒鬚』
11/11 『少林寺必殺舞扇拳』
11/14 『Bloodmoon』
11/17 『鐵馬[馬留]/鐵猴子』
11/21 『プロジェクトD』
11/24 『ボディガード牙/修羅の黙示録』
11/28 『オールドマスター 師父出馬』