功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『スティーヴ・オースティン 復讐者』

2013-07-17 22:39:16 | マーシャルアーツ映画:上
「スティーヴ・オースティン 復讐者」
原題:RECOIL
製作:2011年

●アメリカのとある片田舎に1人の男(スティーヴ・オースティン)が降り立った。彼は町を支配するバイカーギャングの一団に立ち向かい、あっという間にボスの弟を殺害。激怒したボス(ダニー・トレホ)は復讐に燃えるが、スティーブの進撃は止まらなかった。
果たしてギャングと戦うスティーヴの目的とは?そして彼とトレホの間に隠された意外な因縁とは?戦いが激しさを増していく中、遂に2人の男は雌雄を決する時を迎える!

 様々な格闘俳優と共演を重ね、マーシャルアーツ映画の新たなスターとなりつつあるスティーヴ・オースティン。本作はそんな彼が製作を兼ね、対戦相手にあの『マチェーテ』のダニー・トレホを呼び寄せた作品です。
ストーリーはかなりシンプルな復讐もので(どことなく『死神の使者』に似てます)、作中に散りばめられた謎も大したものではありません。しかし、ザックリとした脚本に寡黙なスティーヴの人物像が不思議とマッチしており、作品の持つ雰囲気はとても良好でした。
 一方、作中の格闘アクションは派手な動きを極力減らした、無骨な殴り合いがメインとなっています。こう書くと「殴ってはフラフラしてばかりの格闘戦」を連想してしまいますが、立ち回りはテンポ良く展開されるので、あまり冗長さを感じさせませんでした。
注目のVSトレホでも、握手をした状態で交互に殴りあったり、武器を持ち出したり(トレホが一瞬だけマチェーテを手にするシーンあり・笑)と工夫が凝らされています。本格的な格闘俳優でないトレホをどう強く見せるかという点に関しても、本作は上手く描写できていたと思います。
『スティーヴ・オースティン S.W.A.T.』で戦ったキース・ジャーディンとのリターンマッチなど、見せ場には事欠かない本作。シンプルすぎる作風は評価が分かれるところですが、個人的には結構気に入っています。こうなるとセガールと共演した『沈黙の監獄』、ドルフと対決する『マキシマム・ブロウ』にも期待が膨らみますね。

『少林拳王子(少林傳人)』

2013-07-01 23:08:13 | ショウ・ブラザーズ
「少林拳王子」
原題:少林傳人/少林辣撻大師
英題:Shaolin Prince/Death Mask of the Ninja
製作:1983年

▼皆さんご無沙汰です。現在、私事で重要な出来事が起こっており、ブログにタッチしにくい状況が続いています。しばらくは以前よりもスローな更新になると思われるので、どうかご了承下さい。
さて今回紹介するのは、かの秀作『少林羅漢拳』を手掛けた武術指導の大家・唐佳(タン・チァ)の監督作です。本作が作られた1983年は、『プロジェクトA』や『悪漢探偵2』などが公開され、香港映画全体が急速な勢いで発展していました。
本作はそれらの作品と比べると、ちょっと時代遅れ気味です。しかし内容に関してはとても優れていて、あと3年早く公開されていたら『少林羅漢拳』ともども大ヒットを飛ばしていたかもしれません。ですが、時代は淡々と…そして容赦なく変革の時を迎えてしまいます。

■時の皇帝が逆賊・白彪(バイ・ピョウ)とその軍勢によって討たれた。残された2人の皇子は臣下たちに救い出され、1人は宰相の谷峰(クー・フェン)に、もう1人は少林寺の戒律院を守る3人の変人和尚(笑)に託された。
それから20年あまりの時が経ち、宰相のもとで育てられた皇子は爾冬陞(イー・トンシン)へ、少林寺に預けられた皇子は狄龍(ティ・ロン)へと成長。一方で白彪は甥を皇帝に仕立て上げ、影で国家を牛耳っていた。
 そんな中、白彪は皇子たちが生きていているのではと疑念を抱き、同時に少林寺に収められた秘術・易筋経を手入しようと画策していく。爾冬陞も仇討ちのために易筋経を求めていたが、肝心の易筋経は変人和尚たちを介して狄龍に伝授されていた。
さっそく少林寺を尋ねた爾冬陞だが、少林僧でありながら朝廷の犬に成り下がった李海生(リー・ハイサン)たちによって窮地に陥り、狄龍ともども脱出せざるを得なくなってしまう。
かくして、2人は打倒・白彪を誓って一致団結。意見の相違により対立することもあったが、最終的に互いが兄弟であることを知り、少林寺に攻め入ろうとした白彪に立ち向かっていく。果たして勝つのは2人の皇子か、邪悪な反逆者か!?

▲『少林羅漢拳』が謎解き要素の強い話だったのに対し、本作は2人の皇子が悪を討つという単純明快な筋立てとなっています。登場人物たちも個性豊かで、オカルトからホッピングまで飛び出す展開の奔放さも魅力の1つといえるでしょう(ちなみに脚本はあの王晶!)。
 アクションシーンもボリューム満点で、中盤の羅漢陣との激闘は圧巻の一言。『少林羅漢拳』でも似たようなシークエンスはありましたが、ワイヤーワークの縦横無尽さでは本作も負けていません。
さらにラストバトルでは、白彪が変形しまくる御輿に乗り込み、ハチャメチャな暴れっぷりを見せています。こういうギミック重視のアクションは唐佳の得意技ですが、この一戦は御輿と白彪の死に様(見てのお楽しみ)のせいで完全にギャグと化していました(爆
 本作が公開された2年後、本作の製作元であり業界最大手だったショウ・ブラザーズは、経営不振により映画事業から撤退します。ショウブラの衰退は1つの時代が終わった事を意味し、新たな風が香港映画界を包み込んでいきました。
しかし、たとえ変革を経て時代遅れになろうとも、ショウブラ作品は決して輝きを失ってはいないのです。当ブログでは、こうした作品を今後も紹介していきたいと思っています。