功夫電影専科

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迫れ!未公開格闘映画(2)『Expect to Die』

2017-10-11 16:35:21 | マーシャルアーツ映画:下
Expect to Die/Time to Die
製作:1997年

▼90年代におけるアメリカのマーシャルアーツ映画界は、ヴァンダムやセガールといった多くのスターに恵まれ、腕に覚えのある男たちが続々と名乗りを上げました。
そんな中、アクションの技量だけに頼らず、自らの企画力で業界を渡り歩いた風変わりなスターが存在します。彼の名はジャラル・メーリ…ブラジル生まれのテコンドー使いだった彼は、自分の会社で格闘映画の製作を手掛けました。
 彼は自らのスター性を過信せず、他の格闘スターと共演する事で作品に価値を持たせました。シンシア・ラスロックと楊斯(ボロ・ヤン)を起用した『タイガークロー』、ビリー・ブランクスと組んだ『キング・オブ・ドラゴン』などは、その典型と言えます。
本作もそうした作品のひとつで、『アメリカン忍者』の後期シリーズを支えたデビッド・ブラッドリーに加え、『アメリカン・キックボクサー』のエヴァン・ルーリを投入。彼らの活躍に期待を寄せたいところですが、その出来はというと…(汗

■米軍で極秘裏にVR(ヴァーチャル・リアリティ)を駆使した訓練装置の開発が行われていた。しかし被験者の死亡事故が相次ぎ、デビッドが開発したVR装置は企画もろとも破棄を命じられる。だが彼はこの結果に納得せず、秘かに行動を開始していく。
一方、NY市警のジャラルは兵器の密売現場に突入し、同僚を失いながらも取引されていたブツを押収した。ところが麻薬や銃器に混じって、奇妙なディスクが見つかる。
 解析の結果、ディスクにはゲームのデータと思しき物が記録されていた。やがて「Expect to Die」というゲームソフトとの関連が疑われ始め、ジャラルは新たな相棒のエヴァンとともに捜査へ乗り出す。
実はゲームの開発元の代表(先のVR装置開発にも関与)と密売を主導していたブローカー、そしてデビッドは裏で繋がっていたのである。デビッドはシステムの開発を強行し、被験者を誘拐しては装置の餌食にしていた。
事件の核心に迫るジャラルたちと、徐々に狂気にかられていくデビッド。やがて敵襲によりエヴァンを失ったジャラルは、誘拐された妻を助けるためにVR装置のクエストに挑戦せざるを得なくなる。果たして、恐るべきゲームの結末とは…!?

▲本作は『サイバー・ウォーズ』と同じく、仮想現実を扱った作品となっています。VRといえば最近になって普及してますが、劇中に登場する装置は今のVRゴーグルとそんなに変わっておらず、デザインだけなら割とリアルに感じました。
ただしVR装置のCGが恐ろしいほどショボく、そのクオリティは初期の天才てれびくん以下。背景のパターンも限られているようで、VRの中で繰り広げられるアクションシーンでは、カメラワークが完全に固定化されています。
 デザインのセンスも壊滅的で、剣道着を着た敵キャラが斧を持って襲いかかってきたり、お姫様みたいな恰好で捕えられてるヒロイン(しかも何故か透けチクビ)など、頭を抱えたくなる描写が頻出します(爆
ストーリーについても単調さが拭えず、ジャラルの捜査もデビッドの狂気も上手く表現できていません。ヒロインはただの脱ぎ要員だし、相棒であるエヴァンとの関係も非常に淡泊だったりと、個々のドラマも薄味な仕上がりとなっていました。

 こうなるとアクションに望みを託すほかありませんが、残念ながら格闘シーンも問題だらけ。ジャラルとエヴァンは刑事なので銃を撃ち、デビッドはVRの開発に集中しまくるため、素手でのファイトが一向に見られないのです。
途中、VR装置の被験者たちがバトルを見せるものの、そこまで大したものではありません。主役の刑事2人が格闘戦に挑むのは開始1時間を過ぎてからで、一番いい動きを見せたエヴァンはここで殉職します…って、何この展開?!
 このあとジャラルはVR装置に挑戦しますが、先述したカメラワークの問題で迫力が出ず、最後のジャラルVSデビッドも実に微妙(フラフラしながら殴ったり投げたりするだけ)でした。
確かにジャラルはキャスティングに対する拘りを持っています。が、肝心の作品は大味な出来になっている事が多く、その中でも本作は最悪に近いパターンだったと言えるでしょう。せめてVRに固執せず、普通に殴りあってくれれば良かったのになぁ…。
 なお、現在はすっかり名前を聞かなくなったジャラルですが、現在も映画界で活動中。2015年には久々の主演作となる『Risk Factor』を発表し、ローレン・アヴェドン(!)と久々に共演。どうやら今も相変わらずの調子でやってるようです(苦笑
さて、少々テンションがダウンしてしまったので、次回はお口直しに香港アクションとのコラボ作品をピックアップ! 世界的な功夫映画マニアが仕掛けた、意外な対戦カードとは…詳細は次回にて!

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