功夫電影専科

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【Gメン75in香港カラテ⑤】『香港の女カラテ対Gメン』三部作

2009-12-19 23:15:17 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「香港の女カラテ対Gメン」
「香港の女カラテ対GメンPART2」
「香港の女カラテ対GメンPART3」
製作:1981年

▼前回の『香港カラテ殺人旅行』は単発エピソードだったが、今回紹介するストーリーは3話にも渡る長編作品である。これは「香港カラテシリーズ」にとっても唯一の事例であり、この頃が同シリーズの最盛期であったことを伺わせている。
もちろん三部作という大イベントであるからして、香港側の助っ人は生半可な者では勤まらない。そこで今回白羽の矢が立ったのは、香港映画界最強の男として名高い梁小龍(ブルース・リャン)であった。過去にも主演作が日本公開され、『闘え!ドラゴン』でも客演を果たしている彼の登場は、全国のちびっ子たちに喝采の嵐を浴びたに違いない。
この時期の梁小龍は不摂生から肥満体型になり、往年の精鋭さが欠けている。しかし超人的な技の数々は健在で、この大長編に大きな花を添えているのだ。

■英国人ジャクソン率いる香港コネクションは、世界各国の麻薬Gメンが香港で麻薬撲滅会議を開くと聞き、激怒していた。香港コネクションの恐ろしさを知らしめるため、配下の廖安麗(アニー・リウ)、楊斯(ヤン・スェ)、黄薇薇(オー・メイメイ)は、会議のために集まった要人を次々と血祭りに上げていく。そんな中、日本からは警視庁の鈴木瑞穂が来ていた。香港コネクションに属する日本人・辻蔓長は、この鈴木に煮え湯を飲まされた経験を持ち、並々ならぬ恨みを抱いていたが…。
鈴木はGメンの宮内洋と中島はるみを連れ立って現地入りしていた。多数の要人の死により麻薬撲滅会議は延期となったが、香港警察は香港コネクションの摘発に全力を注ぐつもりのようだ。空いた時間を利用して、中島は難民街に住むチャン姉弟(姉役の中島めぐみは中島はるみの実妹。弟役の吹替えは声優の田中真弓が担当)と再会していた。このチャン姉弟、生活苦からヘロインの運び屋として日本に渡り、補導されたところを中島と鈴木に助けられた過去を持つ。そして、このヘロインを密輸させようとした男こそ、元刑事の辻蔓長だったのだ。
 チャン姉弟との再会を喜ぶ中島だが、廖安麗の姿を追って追跡を開始する。しかし逆に香港コネクションの手に落ち、ヘロイン奪還を狙う敵の人質となってしまった。そのころ、麻薬の売人を殺して刑務所入りしていた元警官の兄・梁小龍が、チャン姉弟の元に帰ってきていた。中島の危機を知ったチャン姉弟は梁小龍に助けを請うが、梁小龍はヌンチャクの封印を解こうとしない。一方、香港コネクションは鈴木に接触し、押収されたヘロインと1億5千万円の身代金をよこせと要求してきた。
Gメンの窮地を知った丹波哲郎はこの要求を仕方なく承諾。香港では動こうとしない梁小龍を見かねたチャン少年が、コネクションの様子を探ろうとして捕まってしまう。事ここに至り、梁小龍はついにヌンチャクの封印を解き放った!さっそく暗黒街の売人たちを相手取り、大立ち回りを演じる梁小龍(ちなみに、この戦闘シーンで背後の広告に狄龍(ティ・ロン)が映っている)。一時は彼も香港コネクションに捕縛されるが、隙を見て脱出に成功した。
 Gメンは総出で香港に向かうも、意見の違いで香港警察と対立。人質の確保まであと一歩というところで、香港警察の横槍によって全てがご破算となってしまう。ところが、逮捕された辻蔓長の口から、思いもよらぬ情報が飛び込んできた。奴が言うには、鈴木の生き別れた娘が香港で生きているというのだ。実は廖安麗は残留孤児の日本人であり、鈴木は彼女が自分の娘であると確信する。
辻蔓長に「廖安麗を連れて帰りたいならヘロインと身代金を渡せ」と促された鈴木は、奴の言葉に従った…が、その見返りはコネクションによる死の制裁であった。鈴木の死を知り、涙を流す廖安麗。父親の無念を感じ取った彼女は、中島とチャン少年を助け出して組織に牙をむいた。しかし強大な組織の前には廖安麗も倒れ、絶体絶命の窮地に陥る。そこへ、ドラゴン梁小龍が颯爽と現れる!

▲都合3話に渡って作られた本エピソードだが、どうにも冗長さを感じる話だ。ストーリーとしては梁小龍の活躍に麻薬がらみの事件を足し、更に残留孤児ネタまで詰め込んでいるが、この詰め込みすぎた構成がまとまりの無さを生んでいる。
特にPART3では、唐突に「実は鈴木の娘が残留孤児だった」という話が出てきたため、梁小龍が本筋から取り残されると言う憂き目に遭っている。どうせなら今まで通りに前後編でコンパクトに話を片付けて、香港コネクションとの攻防戦に徹してしまえばよかったのだが、なまじ三部作にしたことが方向性に迷走を生じさせてしまったと言えるだろう。
 また、本作における不満点はもうひとつある。それは、作中でのGメンの活躍ぶりだ。あくまで本作は『Gメン75』という刑事ドラマであり、刑事たちの活躍が作品の主軸となるべきである。だが今回のGメンは中島を人質に取られ、成すすべも無くコネクションの要求に従い、オコボレを貰うような形で辻蔓長を逮捕しただけ…前回までの何宗道(ホー・チョンドー)と共闘していた頃と比べると、あまりにも活躍に差がありすぎるのだ。
恐らく、これらの難点は製作スケジュールの都合が原因だったのではないだろうか。日本の出演者を大勢香港に向かわせ、慣れない功夫アクションをさせるのは時間の浪費も伴ったはずだ。しかし香港側の助っ人と少数の出演者を主軸にしてしまえば、ある程度の問題が軽減されると踏んだのだろう。その最初の試みこそ、この三部作だったのだと考えられる(なお、中途半端な結果となった残留孤児ネタは、後に『香港カラテVS赤い手裏剣の女』で仕切り直されることとなる)。
 さて肝心の梁小龍だが、作中では『帰ってきたドラゴン』でも見せた切り返しの早い蹴りの連打・壁上り・足技を次々と披露。Gメンたちと直接の顔合わせこそ無かったが、楊斯と黄薇薇の両者と闘ったラストの乱闘はなかなかの名バウトだ。廖安麗も役柄としては印象的だったが、こちらは特にこれといった功夫アクションは無し。組織を裏切った後の戦闘シーンもすぐ終わってしまったが、もう少し活躍しても良かったのでは?
そして次回は、いよいよあの香港映画屈指の名悪役が登場!ショウブラスターまで巻き込んだ梁小龍の第2ラウンドが幕を開けるが、まずは次回の講釈で…。

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『香港カラテ対北京原人』前後編をお送りします。

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