父の『従軍記』には、次のように書かれている。
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陸士卒の大島二郎中尉に呼ばれた。
「仕官学校では、福沢諭吉は国賊だと教えている。おまえは
その福沢の慶応大学卒か・・・」と言う。(自分は)福沢先生
研究会に入っていて、少しは勉強していたので、先生の著書
『楠公権助論』のことと、すぐに気づいた。
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とある。そこで『楠公権助論』について、ネットで調べてみた。
なんと『学問のすすめ』の中に書かれている論だった。
「天は人の上に人をつくらず・・・・・」で始まる『学問のすすめ』は、
70万部も売れたベストセラーだったが、その第6編「国法の
貴きを論ず」と第7編「国民の職分を論ず」では、赤穂浪士と
楠正成を「愚か者」と論じているため、右翼の猛反発を喰らい、
命を狙われるほどだったという。
福沢諭吉は、「赤穂浪士は、国法を犯した罪人であり、主君の
ために自分の命を投げ出す忠君義士の死は、主人の使いに出て
一両の金を落としてしまい、首をくくった権助の死と同じ。
楠正成の死も、世の中にとっては何の益もない、ただ私的
満足のための死だ」と喝破した。
明治の初めのことである。講談や歌舞伎で「赤穂浪士」も
「楠正成」も絶大なるヒーローだった。それを、なんの
価値もない“犬死”と決め付けられては、当時の人々に
とっては衝撃的だったのだ。
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父はその後、「経理部幹部候補生」となるが、その時も、
他班の班長から呼び出されて、こっぴどく殴られる。
理由は、自分の班の者が「経理部幹部候補生」になれな
かったことの腹いせだった。
全く、軍隊は“不条理”。バカバカしい。
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