『宇治の庵主朗庵の図』というのがある。
明らかに異人(中国人)の服装だ。リールのついた釣竿を
腰につけ、手には長い尺八を持っている。その絵の上に
次のようなことが書かれてある。
吾れ、関東の鎌倉に行き、建長寺に逗留した折り、
画僧の祥啓が「珍しい様相だ」といって、自分の姿を
絵に写してくれ、さらに「思うところを記せ」と勧め
られたので、次の詩を書いた。
龍頭を切断してより之後 尺八寸中古今に通ず
吹き出だす無常心の一曲 三千里の外知音稀なり
この詩は『体源抄』に一休の作として載っているのと類似
している。「宇治の庵主朗庵」は、「魯庵、露安」とも
書かれる。また、江戸時代になると「一休の尺八の友 一路」
とも、「京都明暗寺の開祖・虚竹」とも言われている。
江戸時代の半ば、宇治の万福寺の子院として「吸江庵」が
再建されている。
初代黒澤琴古は「吸江庵の龍安子から『志図曲・京鈴慕・
琴三虚霊』の三曲を伝授されたと、『琴古手帳』に書き
記している。「龍安」も「ローアン」で「朗庵、蘆庵、
露安」と同音になる。吸江庵の主は代々「ローアン」を
名乗っていたのだろうか。
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