L'APERO! ~Carnet de Recettes qui Voyage~旅するレシピノートから

フランス・スペインをはじめ世界45ヶ国を旅して出会った思い出の料理レシピ。簡単&ちょっとお洒落な料理で楽しいひとときを!

お酢でさっぱり!冷製ポトフの夏仕立て♪油も、スープの素も不使用でこの美味しさは罪!

2008年08月05日 | Weblog
ラーメン、カレー、スープ、パスタ・・この時期「冷製」が人気ですが、私は毎年夏はこれ!4人分でなんとお酢(500cc)丸ごと1本分とれます!まろやかな仕上がりなので、お酢が苦手な方にもおすすめ。水を一滴も加えず、お酢と野菜の自然なエキスだけで、既成のスープの素など一切入れないのに、しっかり旨みが出て感激。疲労回復&脂肪燃焼に効果的なビタミンB1が豊富な豚ヒレ肉と、その効果を長時間持続させるアリシンが豊富なにんにくと玉ねぎ、言わずと知れた疲労回復の王様クエン酸が豊富なお酢・・。夏バテ解消にもいいですね♪

ポトフといえば通常、皆さまご存知の冬にうれしいフランスの田舎風煮込み料理。牛かたまり肉、人参、玉ねぎなどの野菜を鍋にいれ(昔式だと暖炉の中で)何時間もかけてじっくり煮込んだ、つまりその名の通りPot(鍋)au feu(火)= 「火の中の鍋」。シンプルながら煮汁に素材のうまみがじんわり溶け出した滋味深いもの。

今回私がご紹介するのは熱々ではなく、ひんやりさっぱり、しかも具材も冷製向きにアレンジしています。ジャガイモは入れずに、清涼感のある香りのセロリ、歯ごたえの楽しいマッシュルーム、そして肉は低脂肪で冷やしてもスープが脂で濁らないように、牛ではなく豚ヒレ肉を使います。

この料理、実はどこの国のものでもなく私の思いつきで数年前から作っているのですが、周囲には結構ウケてます。イメージして頂きやすいかと思い、ポトフ・・と冒頭では言いましたが、実は元はといえばオーストリア(ラリアではありません)の定番料理で、かの有名なハプスブルク帝国・実質的な最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世も愛した[Tafelspitz(ターフェルシュピッツ。お酢は入らない)]をウィーンで食した際に思いつきました。まあフランスのポトフと大差はないのですが、こちらは夏には冷たく冷やしてマスタードや酸味のあるピクルスなどを添えて食べることもある、と現地の文献で知りました。(ドイツあたりが発祥と思われるボイルド・ビーフのような感覚でしょうか?) そこで私は「それなら最初からお酢で煮込んでしまえばいいのでは?!」とひらめき、日本に戻って早速作ったら案外美味で、それ以来わたしの定番に。
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お酢でサッパリ!冷製ポトフの夏仕立て

材料
  豚ヒレ肉・・・200グラム位(2cm幅くらいの輪切り)
  人参・・・・・・1/2本(皮をむき、薄い輪切り)
  玉ねぎ・・・・1個 (くし型に切る)
  セロリ・・・1/2本(ピーラーで薄くむいて筋を除き、一口大に切る)
  マッシュルーム・・1パック(大きければ半割りに)
 
(調味料)
酢・・・1/2本(250ccくらい。今回は米酢を使用)
しょうゆ・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ1・1/2
おろしにんにく・・・小さじ1/2(=大さじ1/6)
ローリエ(月桂樹の葉)・・1枚
塩、黒こしょう

作り方
マッシュルーム以外すべての材料を切るなり次々と鍋に入れ、そこに調味料も全て一度に入れて強火にかけ、煮立ったらふたをして(むせ防止!)弱めの中火で7~8分、人参に火が通るまで煮る。最後にマッシュルームも加え2,3分煮る。(最初から入れると見るも無残に縮んでしまいます!)粗熱が取れたら冷蔵庫でよく冷やしてどうぞ!

*あまりギュウ詰めでない冷蔵庫なら(笑)清潔な保存容器で4,5日持つので、私はいつもこの倍量の4人分くらい作って暑い毎日にちょこちょこ食べています。
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ちなみに私は無類のオーストリア好きで、かれこれ7、8回は行ったかも。毎回最低で1週間、長いときは1ヶ月近く滞在します。夏は学生が留守の大学寮を安価で借り、キッチンで自炊したりも。)最近はスペインばかりでしばらくご無沙汰ですが・・。フランスに留学していたくせにヴェルサイユ物語やブルボン王朝はまったく興味が無く無知で、その代わりにオーストリアのハプスブルク家のことなら家系図から歴史、一族のメンバーが各々愛した料理・宮廷菓子までなんでも来い!といわんばかりにオーストリア関連本を読み漁った時期もありましたっけ・・。同家の栄枯盛衰から、オーストリアの第二次大戦中のナチスのホロコーストほう助(下記*)、東西冷戦時代の両陣営板ばさみの苦境、EU加盟に至るまで、オーストリアの功罪の数々・・・。「美しい歴史と音楽の都」とばかりは行かないけれど、それでもなお惹きつけられる何か、ほかのヨーロッパ諸国にはもう無い忘れられた何か、がそこにはあるのです。カフェひとつを例に取っても、パリのカフェが大正ロマンとするならば、ウィーンはさらに前の明治の・・もっと前の古い時代の、椅子や新聞掛け、コート掛け、食器まで、ハプスブルク要人がお忍びで通っていた時代のものをそのまま使っている店も実に多いのです。私にいわせれば、主だったヨーロッパの国の中で一番、中世の空気を感じさせてくれる街がウィーンです。他方、社会システムや技術面の成長ではEU他国に遜色なく、(まるでスペイン・バルセロナあたりを思わせる)フンデルトヴァッサーの斬新な芸術作品が同居する、伝統を守りつつも多様性を擁する街。寒さが苦手な私はおそらくこの先かの地に暮らすことはないでしょうけど、また旅行で行きたい!市庁舎そばの、ドーム型の内装が美しい「カフェ・ツェントラル」で毎夕行われる生ヴァイオリン・コンサートを聞きながら頂くエステラージー(かつてのハンガリー貴族の名をもつケーキ)とカフェ・マリアテレジア(オレンジのリキュール入りコーヒー)、「オーバーラー」のヌス・トルテ(生地とクリームにヘーゼルナッツの入ったケーキ)とアップル・シュトゥルーデル(新聞が透けるくらい薄い生地でりんごの甘煮やレーズンをくるくる巻いて焼き、外はパリパリ中しっとりの定番菓子)、それにグラーベンにほど近い名店Demelの、日本未発売の「雪球」という名のお菓子、どこか寂しい夏の終わりに1週間ほどしか出回らないシュトゥルム(にごりワイン。日本のものより甘さとジューシー感がある)、ベル音がレトロな路面電車、オペラの宣伝かモーツァルト風の衣装と髪型で固めた石畳の街頭に立つパフォーマー、赤く美しい夕焼けに映えるシュテファン寺院の尖塔・・・。思い出しただけでじっとしていられなくなってしまいます!意外に知られていませんが、オーストリアは宮廷料理の名残かグルメも充実しています。それにフランスなどのEU他国に比べて割と値段も良心的。(ユーロ移行後は若干値上がりしましたが。)ミシュランで星を獲得したレストラン、シュタイラー・エックなども、料理の盛り付けは繊細で現代的ながら、味は伝統にしっかり根付いた正統派で、トレンドに惑わされがちな他の多くのレストランとは一線を画しており、感銘を受けました。もちろん、街中の至るところにある手頃なレストランやホイリゲ(オーストリア版居酒屋)にも気取らない日常の、でも心を胃袋を掴んで放さない美味が溢れています!


  (*)(アドルフ・ヒトラーはオーストリア人ですが、ドイツで政治トップにのし上ってから、かつて自分を落伍者同然に扱った母国オーストリアを力づくで統合し、ホロコーストに加担させた。オーストリアは戦後の戦争責任裁判で「服従させられた」被害者の立場を主張し、ナチスの話題は戦後タブー視されていたが、当時の様々な証言から実際は「黙認(加担)」していた事実が公となり、近年ではドイツを見習って過去の反省をいかす教育にシフトしている模様。実はあの美談「サウンド・オブ・ミュージック(アメリカ映画)」の中でトラップ大佐がナチスの旗を掲げるのを拒否したのも、「ホロコースト反対」だからではなく、単にドイツに統合されるの事に抵抗していたからであって、実際当時の彼はバリバリの右派だったそうです。オーストリアへいらしたら、宮廷や芸術鑑賞以外にも時間があれば、戦争と平和に関する資料・博物館などを訪れるのもまたひとつ違った角度からこの国を知る良い機会になると思います。)


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