茂木弘道氏が竹田恒泰氏の反原発の著書を論理的科学的に徹底批判されています。竹田氏は女系天皇に関しては実に正論を述べておられましたが、畑違いの原発に関しては素人に過ぎないのに、思い込みで脱原発の主張を述べられたことが間違いでした。反原発は、放射能に関する間違った仮説が訂正されないまま、放射能の恐怖を感情的に思い込んでいる人々がメディアの煽りに乗せられて風評被害的に拡大していることから起きていると言えます。これはまったく科学的ではない思い込みです。福島原発事故のような放射線量は、むしろガンの抑制効果があることが実証されているのです。
茂木弘道氏の批判は、放射能編と原発編にわかれているようですが、今回は原発編の一部を紹介します。放射能編については、リンク先のファイルを御覧ください。この続きは次回の記事でのせます。
『これが結論!日本人と原発』(竹田恒泰著)徹底批判
その2-原発編
「史実を世界に発信する会」事務局長 茂木弘道
誰 かの言ではないが、脱原発などをやろうというのは「集団自殺」をやろうというのに等しい。日本国民に過大な負担を与え、日本経済を苦境に追い込み、近隣某 国にも圧倒されるような弱小経済化し、劣等三流国日本を「自ら」もたらそうというのだから、まさに「集団自殺」に他ならない。その危険な誘いの笛を吹いて いるのが竹田恒泰氏である。現代版ハーメルンの笛吹き男のひとりが竹田恒泰氏にほかならない。
そ の1-放射能編で、竹田氏のいう放射線が体に良いはずがないという途方もない「無知」、福島程度の放射線が「国土を永久に使えなくする」などという大ウソ を徹底的に解明した。要するに、福島程度の事故が起こっても、原発は本質的にいって人に害を与えるものではないのだ。害がないものを何が何でもやめような どというのは愚かなことである。
したがって反原発、脱原発な どという「妄論」は今更論ずるまでもないということになる。しかしながら、この「妄論」が世にはびこり、マスコミを支配し、大げさな反対集会を行い、保守 の一部の人たちまでがこれに「ヤラレ」ているのが現状なので、少々立ち入った説明も必要なようである。以下10項目ほど脱原発の間違いにつき説明すること にしよう。
1、 原発には「愛」がある―その1
竹田氏のお得意のフレーズ「原発には「愛」がない」(『これが結論!日本人と原発』(以後『こ』と略称)は、人騙しのトリックフレーズであることは、「放射能編」で説明した通りである。
実は、原発には「愛」がある、という側面がれっきとして存在しているのである。一つは、放射線ホルミシス効果であり、もう一つは、廃棄物に関するものである。その1として、ホルミシス効果を紹介しよう。
放 射線ホルミシス効果の実証は「放射能編」で詳細に行ったので、もしこれに疑問をもつ方は、40ページに及ぶ「放射能編」をお読みいただきたい。思いこみ、 感情ではなく、「理性」を働かせてこれを読んでいただければ、誰でも納得していただけるはずである。(ご希望者にはファイルをお送りします。)
さ て、原発をはじめ核関連施設はある程度の放射線を放出している。その影響については、各国とも非常に関心を持ちさまざまな影響度調査が行われてきた。次の グラフは8か所の核施設において、被曝した労働者と被曝しなった労働者の比較をした8つの研究報告を1図にまとめたものである。
被曝した核施設労働者に関する8つの研究から得たガン死亡率
注:A、対照群=被曝していない労働者-の死亡率100に対して、被曝者の死亡率をこの表は示している。すなわちアボットの研究では、100ミリシーベルト近くでは、被曝労働者の死亡率は、被曝していない労働者の約10%である。ホルミシス効果の例証である。
B、場所、被曝労働者の人数、参考文献はそれぞれ次の通りである。
1.英国兵器工場、36,000人(ケンドール他、1992年a、b)
2.英国兵器工場、9,000人(ベラル他、1988年)
3.ハンフォードサイト/ロッキーフラッツ、15,000人(ギルバート他、1989年)
4.カナダ核エネルギー会社、4,000人(グリビン他、1993年)
5.オークリッジ国立研究所、6,000人(ウィング他、1991年)
6.原子力潜水艦造船所、41,000人(マタノスキー他、1984年)
7.カナダ核エネルギー3工場、4,000人(アバット他、1983年)
8.ロスアラモス国立研究所、8,000人(ウィッグズ他、1994年)
個々の被曝はフィルムバッジ線量計によって決定した。
出典:“Nuclear law stands on thin ice” by Dr. T. D Luckeyより
(International Journal of Nuclear Law, Vol.2, No.1, 2008 掲載
これは、被曝労働者15万、同じ職場で働く被曝していない労働者20万人近くをカバーした極めて有意性の高いデータである。8つの研究に例外なく見られるのは、被曝量(累計)が高まるに従って、死亡率が低下するという傾向である。しかもこれが微妙などという程度ではなく、50%から90%も低下する。これぞホルミシスの決め手のデータであろう。
すなわち、累積で100ミリシーベルト程度の放射線は、労働者にとって、害ではなく、益を与えているというのが実情なのである。原発は凶悪な害をもたらす存在ではなく、むしろ「愛」があるといえるのではないだろうか。さらにこのデータから福島についての推測ができよう。福島では、最も放射線量の高かった地域でも年間で100ミリシーベルト以下である。
も う放射線は極めて微弱となっているので、累積で100ミリシーベルトを大きく超えることは考えられない。すなわち、上記の調査結果かからすると、ガンにか かりにくくなることはあっても、ガンになりやすくなることはないということである。まさにこれは「愛」ではないか。まるで悪魔のように原発を敵視するのは 逆恨みというものではないか。
2、 原発には「愛」がある―その2
竹田氏は核廃棄物問題を取り上げてこれは人間の手に負えない神の領域を侵すものである。高レベル放射性廃棄物は1万年保管、と脅迫する。(『こ』p、214~215)
1) 火力発電と原子力発電の廃棄物量比較
(化石燃料はここでは石炭であるが、石油、天然ガスでも大きな差はないという)
も し電気エネルギーを得るために、原発以外は廃棄物を発生しないということなら、原発の廃棄物について言い募るのももっともなことである。しかし、風力、太 陽光、地熱発電なども実は甚大な環境負荷を与えるのであるが、それは後で論じるとして発電のエネルギー源の圧倒的な割合を現在占めている化石燃料の廃棄物 たるや生半可なものではないのである。
上記の比較表に見る通り、同じ発電量のために化石燃料では、原子力の約1万倍の廃棄物を発生する。この中には有害重金属の他にヒ素だけで400トンと高レベル核廃棄物27トンの20倍近く発生する。
相対的いって原発は地球に極めて負荷をかけない、いわば地球にやさしいエネルギー源である、というのがこの数字の語る真実である。言葉を変えていえば、原発には「愛」があるということだ。
確 か竹田氏は環境論者であるはずなので、この事実を知ったら、「脱化石燃料!」を声高に主張しなければならなくなるであろう。コンバインドサイクル (GTCC)程度ではどうにもならない単位の問題であるからだ。全面的にそれを採用しても1万倍の廃棄物が数千倍になるのが精いっぱいというところであ る。
それでも竹田氏は高レベル核廃棄物のことを持ち出して風前のともしびの自説に固執しようとするだろう。実はこの問題は科学的・技術的に解決可能なところに来ている。その点については補論で改めて説明することにしよう。
2)単位電力あたりの総死亡者率は原発が最低
電力を生み出すためのコストは廃棄物だけではない。原料の採取段階、設備建設段階、運転、そして廃棄物がかかわる大気汚染により死者という犠牲の上に電気エネルギーは生み出されているのである。
この問題を藤沢数希氏は『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)の第1章で詳しく論じている。実はエネルギー専門家の間では火力や水力に比べて、原子力ははるかに人名の犠牲の少ない発電方法であると考えられているという。
太 陽光発電や風力発電がどうして原発より犠牲者数が多いかというと、たとえば原発1基分の発電量を生み出すのに、太陽光発電では山手線の内側ほどの面積が必 要になる。発電施設をつくるのに必要なコンクリートや鉄のような材料の生産に伴う犠牲者や、建設工事の事故による犠牲者などを計算していくと原発よりはる かに多い犠牲者が出てくるという。
さまざまな犠牲の中で最も大きなものは大気汚染による死者であるという。WHO(世界保健機構)は年間 115万人ほどが大気汚染で死亡していると報告しているという。(WHO 2009)うち30%ほどが火力発電からの大気汚染が原因と考えると30万人ほどになり、これを化石燃料の総発電量1万4000TWh(T=テラ=兆)で 割ると1TWh当たり21人となる。
原発は多めの推計で50年間の全死者4000人とすると、1TWh
あたり、0.03人となる。その他のエネルギ―源の死亡率を世界の研
究者の数字からまとめると下記の表になる。(同著p、28)
原発の死亡率がダントツに低いことは明白である。火力の700分の1、太陽光の15分の1である。原発には「愛」があるといわずにはいられないではないか。
こういうありがたい原発を超悪者に仕立て上げる人の気がしれないといいたいところであるが、要するに反核イデオロギーに取り憑かれた人々が人を誑かしているのだというのが正解ということだろう。