ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「天使のナイフ」

2006年07月07日 | 書籍関連
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生後5ヶ月の娘の目の前で妻・祥子を惨殺された桧山貴志。それから1週間後、訪れた刑事達によって犯人3人が捕まった事を知らされる。「やっと逮捕されたんですね?」と問う貴志に、刑事は無念さを滲ませた表情で「逮捕はされません。」と答えた。捕まったのは何れも13歳の中学生で、刑法41条の14歳に満たない者の行為は、罰しない。が適用、即ち刑事責任能力無しと見做され、逮捕はされずに補導されるだけだというのだ。そして、旧少年法の下で起きたこの事件では、被害者家族が少年達の氏名や身元等を知る術も無いばかりか、警察や家庭裁判所からも一切情報がもたらされる事は無かった。加害者少年達が法によって手厚く護られる一方で、マスメディアに晒され続ける被害者家族。

やがて、少年達の保護処分が下される。少年1人は保護観察処分、そして残る2人にはより重い、とは言っても林間学校の合宿程度の拘束しか与えられない、児童自立支援施設(嘗ての教護院)への送致処分。愛する妻を理不尽にして残酷な形で奪った者達への余りに軽い処分に、貴志はTVカメラの前で「国家が罰を与えないなら、自分の手で犯人を殺してやりたい。」と感情を吐き出してしまう。

それから4年。犯人の少年の1人が、貴志の勤務先付近で殺害される。4年前の発言も在って、貴志に殺害の容疑が掛けられる。少年法が改正され、少年達の氏名や犯行の動機等が閲覧出来る様になっており、それによって彼を見つけ出した貴志が復讐の為に殺害したのではないかと思われたのだ。

改めてあの事件の事や少年達の事を知りたいと思い立った貴志は、彼等の”その後”を追う事にする。そんな中、残る少年2人が何者かに襲われて・・・。
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薬丸岳氏の「天使のナイフ」*1を読破。少年法が抱える様々な問題点を、多角的に描いたこの作品は、昨年に第51回江戸川乱歩賞に輝いている。著者としては初めての小説という事だが、ストーリー展開がとても新人とは思えない玄人跣さ。贖罪とは何なのか?という点にも深く切り込んでおり、時間を忘れて読み耽ってしまった。幾重にも仕掛けられたトリックも素晴らしく、久々にやられた感を味わわされ、何故この作品が昨年の”このミス”ベスト10に入っていないのか不思議でならない。(週刊文春ミステリーベスト10では2位。)

2005年の年間ミステリー・ランキング類では、東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」が1位を総なめにして終わった。何度も記事にしている様に、東野作品の古くからの大ファンだが、この作品に対する自分の評価はそれ程高くない。彼の実力をすればこんなものでは無いという思いが強く在ったのだが、今回「天使のナイフ」を読み終えて、昨年のミステリー・ランキングの1位はこの作品の方が相応しかったと確信している。

総合評価は星4.5。「ミステリー・ファンならば、読まないと損!」と断言しても良い。

*1 この作品の中で、一人のノンフィクション・ライターが口にした台詞がとても印象的だった。

戦前に特高警察というのが在りましたよね。彼等は酷い拷問を行って、無実の人間を投獄したり、思想弾圧をして来ました。それに戦後も数多くの冤罪事件が起きました。そういう苦い歴史を踏まえて、人権というのは先ず警察に逮捕された被疑者や、裁判に掛けられる被告人を、国家暴力から守る権利として意識されて来たんです。唯、弁護士も刑法学者も、国家から加害者の権利を奪還すべきだ、少しでも刑罰を軽くしようという事に主眼を向ける余り、今度は被害者の人権をなおざりにしてしまったんです。大学なんかでも、被疑者や被告人や受刑者の処遇問題なんかは詳しく教わりますけど、被害者の事なんてろくに教わりませんでしたよ。
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2 コメント

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天使のナイフ (kazu)
2006-07-07 09:43:03
TBありがとうございました。 

 

登場人物が全て謎を秘めているようで

気が抜けませんでした。

そして重なり合ったストーリーが 

一つになっていく様、

見事だと思いました。
TBありがとうございました (水無月)
2006-07-09 20:26:09
少年法という難しいテーマを取り上げている佳作だと思います。

ラストには驚きました。

ミステリーとして素晴らしい作品だと思います。

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