失われた時を求めて

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家族ゲーム

2008-02-27 23:37:27 | 映画
昭和58('83)年
監督・脚本:森田芳光
撮影:前田米造(お葬式、TANTAN たぬき、マルサの女、スウィート・ホーム)
助監督:金子修介(卒業旅行 ニホンから来ました、ガメラ 大怪獣空中決戦、DEATH NOTE)
出演:松田優作
   伊丹十三
   宮川一郎太
   由紀さおり
   戸川純
   松金よね子
   加藤善博

 これは新宿の名画座で、『転校生』との2本立てで見ました。当時は日本映画がだんだんと面白くなってきた時期でしたネ。この2本立てはかなりの盛況でした。今でも語り継がれる作品だけのことはあります。
 俳優として伊丹十三さんが出演されていますが、彼は翌年の『お葬式』が初監督作品でした。多くの伊丹作品でカメラを回されている前田氏との繋がりは、この『家族ゲーム』がきっかけだったのでしょうか。

 この映画には一切音楽が流れません。森田監督の実験的な手法なのでしょうか。それ故か、淡々とした描写が不気味に迫ってきます。
 また、次男・茂之のナレーションがあるので、この映画のストーリーが「彼から見たできごと」のように感じられますが、彼の主観の画(え)がありません。それ故に、映画の中のできごとを客観的に見ているような感覚で貫かれています。これもかなり異色の演出でしょう。

 登場人物はみんなかなり“変”です。家庭教師・吉本は常に植物図鑑を持っています。茂之は「夕焼けを完璧に理解」します。お父さんは「目玉焼きをチューチューする」し、お風呂に入ってストローで豆乳を飲みます。団地の奥さん役の戸川純さんは、かなり深刻な家庭の悩みを、ほとんど初対面のお母さんに相談します。これらの登場人物の中にあって、唯一まともそうなお母さんが狂言回しとなっていますネ。
 茂之の担任もかなりおかしい人物です。

 これらの登場人物は、どこかに実在していそうな人物のデフォルメですネ。中でも、お父さんのセリフには狂気さえも感じられます。彼らを笑い飛ばす分にはイイのですが、こういう奇行が許されると勘違いされてしまう可能性もあります。日本の良識が壊れかけていた時代を敏感に察知し、切り取った映画だったのかもしれません。現実に、この映画以降の'80年代の人たちは奇行に走ったように思います。
 この映画を笑い飛ばせる人は、彼らの言動の奇妙さに気付いている人。もしかしたら今の世の中には、彼らの奇妙な言動を「当たり前」のように感じる人々が、ウヨウヨいるのかもしれません。

 ある意味では怖い映画です。

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