医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

乳癌学会2016

2016年06月17日 | 「がん」について


6/16〜18の3日間、東京ビックサイトで第24回日本乳癌学会学術総会が開催。
わたしも恒例のように聴きに来ています。
といっても今回は他の仕事の都合でフルには参加できず…仕事上気になっているHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)などいくつかセッションのみの聴講です。

さて、昨日のセッションのなかでは、聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子先生のことばが印象的でした。

「ゲノム医療はどんどん進化している。すべての人が遺伝子検査を受け、どこの遺伝子に変異がある人の乳がんはどういうタイプ、どうなりやすく、どんな薬が効くかがわかる。遺伝子によってどういう食事や生活をすればがんの再発を予防できるかがわかる。そういう時代がすぐそこまで来ている。遺伝子情報を個人情報だからといって隠すばかりでなく、積極的に活用することによって、みんなの共通利益にすることが本当のヒューマン・ライツではないか」

と、こんな内容だったと思います。(文責・わたし)
国際的な遺伝子情報データバンクがいくつも動き出していることを受けての話でした。

遺伝子情報を人類共通の資産として活用する。
「わたしの個人情報を?とんでもない!」と思う人もいるかもしれません。

でも、どのみちこのビッグデータの時代、受けた治療の過程はデータとして残ります。
たとえばダ・ヴィンチで手術を受ければ、その経緯はすべてソフトウェアで記録され、米国のメーカーに持って行かれる。
そのデータのおかげで、さらに機器はバージョンアップし、手術の精度も高まるので、患者にとっても医学の進歩にとっても悪い話ではないのですが、いずれにせよ膨大な「日本人のデータ」の海外流出はとっくに始まっているわけです。

一方で、いまや○ahoo!を始めいろいろな企業が、簡単に郵便などで受けられる遺伝子検査サービスを提供しています。
(精度はどうなんだろう?と疑問があるので、個人的にはまったく受けたいとは思いませんし、ひとにも進めようとも思いませんが…)

だからこそ、

「何人たりとも遺伝子情報によって、差別と不利益を受けない」

といったゲノム時代の人権保護の法律を日本でも早く作る必要があるのだろうと思います。
軽い気持ちで受けた遺伝子検査が原因で、保険に入れなかったり、内定を取り消されたりしたら困りますから。

話をがん医療に戻します。

がん医療では「コンパニオン診断」といって、遺伝子検査によって、その人に効果が出やすく、副作用の少ない抗がん剤を選ぶということが始まっています。
今回の乳癌学会のテーマも、遺伝子情報をうまく活用する時代を示唆しているように思いました。
(何しろ会長講演を聞いていないため、憶測のみですみません)










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