合気道ひとりごと

合気道に関するあれこれを勝手に書き連ねています。
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308≫ 世界標準候補 〈右相半身片手取り一教表〉

2016-11-13 17:14:22 | 日記
 いよいよ世界標準を目指す私案を提示しますが、言うまでもなく、ここでのわたしの技法がそのまま世界標準となるわけではありませんん。私案はあくまでも選択肢のひとつで、それより優れた案を多くの方が提示することこそ合気道の向上につながります。標準化競争にはどなたでも参加ご自由ということです。

 まずは一教からまいります。

 わたしは特に【相半身片手取り一教】を標準化の候補とします。以前にも言っていますが、手取りというのは、そうすることによって必然的、強制的に間合いが形づくられます。片手取りは、取られた手を伸ばすとぎりぎりストレートパンチが相手の顔面に届く間合いです。自分にとって適切な間合いはどのようなものか、初心者にとってはとても大事でかつ難しいこの間合いの設定を技のほうで勝手にやってくれるのですから、これは是非採用してほしいものです。

 では仮に、〈右相半身片手取り一教表〉としましょう。取りはつかまれた右の手の甲を受けの手首に乗せるように返します。肘がしぼられ手のひらが上を向きます。同時に右足母指球を軸として右足を時計回りに捻り踵を少し左に寄せます。要するに、右腕と右脚が同調しながら体の中心に寄ります。

 そこから右足を右斜め前に一歩進めます。進める方向はつま先が示しています。つま先は方向指示器の役割を果たします。進める距離は受けの右足に一線で並ぶくらいの深さです。そこで間をおかず左足を右足に寄せます。足の踏み込み位置が正しければ、受けが真っすぐ体当たりをしてきても当たらない位置にいるはずです。もちろん正面打ちなら空振りになります。この足運びでは体を貫く天地の線、剣術用語でいう正中線を意識し体得することを目指します。なお、ここで膝は適度に曲がっていますが、どれくらい曲げるかは後述します。

 ここまでのところで手は頭上に振りかぶっているはずです。両肘は適度に伸ばし、かつしぼります。この段階ではまだ受けの手首はつかみません。手首をつかんだら右肘が開き正面ががら空きになり正中線を護れません。その代わり受けの肘はしっかりつかみます。よく、その逆に手首をつかんで肘には手を当てているだけという人を見かけます。間違いです。

 この段階で膝は適度に曲げますが、その曲げ角は受けの身長で変わります。これに関わる黒岩洋志雄先生の合気道理論に『一教は上段の崩し』と『合気道は自分と相手との間にできる空間を自分の体で埋める』というのがあります。それに従い、腕を伸ばして受けを上方に突き上げ崩すわけですが、その時、自分は突き上げた腕の下に入ります。腕の突き上げは腕力でやるのではなく、自分が下に入り込むことで自然に上がるようにします。その場合、相手の身長が高い場合はあまり膝を曲げる必要はありませんが、低い場合は腕を自然に上げる関係上、十分に曲げる必要があります。

 また、受けの腕を前に押し出してはいけません。あくまでも上に突き上げるのです。前に押したら受けはそれに合わせて体移動するだけです。これが合気道以外の人の普通の感覚です。

 さてここまでのところで、取りは阿波踊りの女性踊りのような形になっています。ここから一気に腕を切り下げます。上がったものは下げるという当たり前の動作です。この切り下げの途中で自然に受けの手首を握れるポイントがあるはずです。切り下げ方は日本刀の切り下げと似た感覚で良いと思います。稽古で木刀を振ることの意味はこのようなところで発揮されます。なおこれは腰高ではいけません。受けの右手が床(畳)に着くくらい切り下げたいので十分に腰を落とす必要があります。

 ここで大事なのは左足の踏み込みです。わたしは、受けの後足(左足)と自分の右足との中間点を踏み込み位置として理想とします。そして、受けの右手は受けの左足付近を目指して落ちるように切り下げます。そのようにすると受けは体軸が捻じれ左尻から尻餅をつくように崩れます。

 この後は右足を一歩進めつつ受けの右腕と上体が直角以上になるように置くだけですが、この場合も右足はいったん左足に寄せ正中線を意識してから斜め前に進めるのが良いと思います。受けの腕の制し方は、右手で受けの手首、左手で肘、右膝は受けの手首、左膝はわきの下をそれぞれ制し、ちょっと肩関節を伸ばしてやるつもりで圧するようにします。

 ほんのおまけですが、足を中心に寄せるたびに即その足は蹴りのできる足になります。手も同じことで、体の中心からパンチが飛んでいくかたちになっています。

 まとめです。今回の技法(に限りませんが)を稽古する上で留意していただきたいのは、目的は相手の腕を床に押しつけることではないということです。そんなものは体格、体力が圧倒的に勝っていればろくな工夫がなくてもできることです。大人が赤子の手をひねるように。腕を押さえるのは一連の動作の結果であって目的ではありません。合気道はそんなつまらない武道ではありません。

 わたしたちはこの技法の稽古を通じて、天地を貫く中心軸(正中線)を意識し、そこから生まれる運足法を身に着け、結果として身を護る術(すべ)を獲得することを目指すべきです。

 その大前提のもと、次回は相半身片手取り一教裏を提示いたします。