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ビーム!

2005年05月31日 | 映画
【スカイキャプテン】
巨大ロボットの大群がNYに現れ、街はパニックに。
カーチスを操るスカイキャプテン“ジョー”は、
ロボットを使い世界中から資源を集める人物をつきとめる。
その巨大な陰謀とは。

レトロ・フューチャー万歳である。
古典的な宇宙ロケットのスタイル。輪っかのビームが飛び出す光線銃。
腕の長いロボットや鳥のように羽ばたく戦闘機。
英国の空中要塞を指揮するアイパッチの女指揮官。
もちろん敵はマッドサイエンティスト。
ヒーローはカスタムされたカーチスで巨大ロボの大群に立ち向かう。

レトロ感を出すために、やたら見にくい映像だし、
子供向けのストーリー(半分は昔子供だった人たち向けだが)だし、
こりゃ確かに賛否両論あるだろうけど、純粋に楽しめる。
こういう映画を大真面目に作った甲斐はあるんじゃないかな。
SFって楽しいなぁと思える映画。

ジュード・ロウは銀幕スター然としていて、
正統派の男前なので、こういう役はぴったり。
スーパーヒーローという訳ではなく、アクも強くないが、
操縦の腕と、勇気と、人望で道を切り開く。

グィネス・パルトロウはあまり好きな女優ではないが、
今回は気が強く、そのわりに(というかだいぶん)ドジで、
最後までフィルムの残り枚数を気にし続ける記者、ポリー役を好演している。
特に、狭い戦闘機の中で、ジョーが敵の基地について説明するシーン。
後ろから覗き込むポリーは、ジョーの横顔に惹きつけられていく。
心のつぶやきが手に取るようにわかる、
ロマンティックでキュートなシーンだ。

欧米に比べ、日本で二足歩行ロボットの開発が速く進んだのは、
人間を作る事に対する宗教的抵抗感の希薄さと、
アニメや特撮でロボットへの憧れ、夢が膨らんだかららしい。
子供が観て、科学に憧れるような映画をもっと作って欲しい。

しかし、ほとんどブルーバックで撮影し、CGと合わせたというのはすごいが、
これから映画(特に役者)はどうなっていってしまうのだろう。

もいっちょ。

2005年05月29日 | 
佐藤 雅美 【八州廻り桑山十兵衛】
八州廻り桑山十兵衛。関八州を廻り、悪人を捕まえるのがその仕事。
娘が本当に自分の子供か疑問を抱きながら、今日も旅をする。

時代物を読んでいると良く出てくるのがこの“八州廻り”。
大体、役人然としていて居丈高で、良い印象は無い。
主役で出ることは少ないと思う。

しかし、この桑山十兵衛は非常に人間くさい。
仕事に対しては常にクールで、大胆に采配を振るうが、
時に失敗して悔しさを押し殺す。
自分の娘が本当に自分の子供か疑っていて、
疑心暗鬼に陥ったり、女が自分に気があると自惚れてみたり。
あまり表には出さないが剣術に自信があるのに、上には上がいたり。

短編が続く中で、最初は若干の物足りなさを覚えるが、
クライマックスに近づくにつれ、グイグイ惹きこまれる。
だが痛快に終わるわけでなく、ある種の物悲しさ、虚しさを残してふっと物語が終わる。
そこがまた、完璧な人間でない、
その時代に普通に居たであろう一人の人間の描写として微妙な余韻を残す。

ウハハハハハハハハ!

2005年05月29日 | 映画
【スタスキー&ハッチ】
母に言わせると、僕は昔から刑事物と時代劇が大好きだったそうだ。
銭形平次や、西部警察、トミーとマツなんかをずっと観てたらしい。

堅物でマッチョなスタスキーと、超いい加減な悪徳警官ハッチ。
コンビを組むことになって、新型麻薬の捜査に乗り出す。

お馬鹿です(笑)。
もう、スタイリッシュなのか、めちゃダサいのかビミョーな線上を突っ走る。
オリジナルは僕が生まれた年からなので、全然知らないけど、
古き良き刑事物コメディー。
何も考え無くていいし、笑わせてくれるし、
いわゆる“お色気”と呼ぶにふさわしい所もあって、文句なし。
疲れたときに、流しておくだけで良し。
二人の間に友情が芽生えて、ベストコンビになる過程も、
俳優同士がすでにベストコンビでなければ表現できない領域。
最後に決めれば良いと思って観てたら決まらないでやんの(笑)。
スヌープ・ドックの流れるような言い回しはさすが。

ほんと、トミーとマツのリメイクを熱望します。
あと、ポリスアカデミーの現代版ね。

なんと胡散臭い言葉だろう。

2005年05月26日 | 映画
【ユートピア】
だれがこの言葉をこんなに胡散臭いものに変えてしまったのか。

予知能力を持つ男。人の死を予知しながら救えないことに苦悩する。
そんな彼が、立て続けに同じ女の予知夢を観る。
彼を育ててくれた師は、その女性を救うように彼に勧める。

未来が予知できるのに、対処できない。
予知の時は鼻血がでる。など、ありきたりな設定である。
息をもつかせぬアクションも、複雑な謎解きもない。
だが、最後には救われた気分になり、ホッとする珍しい映画。
青みがかって、時に赤やオレンジの混じる色合いがいい雰囲気。
ヒロインがとてもキュートだ。
写真が多く出てくるが、その一枚一枚にドキリとする。
悪役が、半ゲリラ半宗教みたいなとこも○。
悪い奴で狂信的。佳作。

辛い現実。

2005年05月23日 | 
中村 淳彦 【名前のない女たち】
たまには、ノンフィクションが読みたくなり、
この本を手に取った。

アイドル的な扱いをされギャラも高額な、
いわゆる「単体AV女優」ではなく、
その他大勢である「企画AV女優」。
そんな企画女優20人のインタビュー集。

僕も人並みにAVは観てきたが、
やはり、「何故こんな子がAVに出ているのだろう?」
という疑問を抱くのは僕だけじゃないだろう。

企画女優は常時何百人といるらしいが、
本人がどう思っているかは別として、
このインタビュー集に出てくる女優は、
特に不幸な(少なくとも僕にはそう思える)人を集めている。
いじめ、虐待、レイプ、DV、覚醒剤、詐欺、
これらの何らかの被害者で、思考回路が壊れてしまっている人か、
何も希望が持てずにただ流されている人のどちらかだ。
そうして壊れた思考に、金の力が大きく作用している。

僕は冒頭に書いた様な軽い気持ちで読み始め、
「色々あるけど結構楽しいです。」的な内容を期待していた。
しかし、この本は重すぎた。その現実にだんだん気分が悪くなってくる。
著者は崩壊している現実に気づかずにくだらない人生を送っている人より、
彼女達の方がよっぽど普通と言う論調だが、
そんな普通なんかいらないと思える。

人間は他人の不幸に興味を覚える。
自分の小さな幸福を噛みしめるためや、
自分の小さな不幸を不幸と思わなくするため。
もしくは仲間がいる事に安心するため。
しかし、その限度を超えてしまい、この本を読んで何も得るものは無い。
世の中にはそういう人が沢山いて、
誰もがそのエッジに立っているのかもしれない
という現実を突きつけられるだけだ。
しかも、そこから落ちるかどうかは、
自分だけで決められる事では無いことも。

しかし、虐待とは人間を壊してしまうものなんだな。

迷ったが正解。

2005年05月21日 | 映画
【コラテラル】
夜のロスを流すタクシードライバー。
ある日、一人の男を乗せる。
彼はその晩に5人の人間を殺さなければならない殺し屋だった。
冷徹に殺しを遂行する殺し屋。
その5人目の標的とは。

映画仲間(と言っても二人)の内では、
評価がとても低かったので、観ようかどうか迷ったこの作品。
でも、トム・クルーズが好きだし、
いつかは観るだろうと言うことで借りてみた。

いやー。すごく良い映画じゃないか。
確かに、トム・クルーズ扮する殺し屋の、“凄腕”感が全然無いことや、
案外ラストがあっけなかったというのはある。
だがこの映画は、だからこそじんわりと胸にくるのだ。
例えば、最後の戦いはテクニックが勝敗を分けたのではない。
気持ちが勝敗を分けたのだ。

まずは冒頭、タクシードライバー(ジェイミー・フォックス)が、
女性検事と出会うシーン。ここだけでも観る価値のある、
なんとも心に響くシーンだ。極めて短いが、素晴らしいドラマだ。
そして、なかなか、かなわぬ夢と努力。ジャズバーのシーンも良い。

一般に、ある程度地位を築いた俳優が悪役をやる場合、
結局、内面は良い人だったとか、悪に徹しきれない場合が多いが、
この映画でのトム・クルーズはその言動の細部までクールで、
ジェイミー・フォックスの温かさが引き立つ。

他人に無関心な街ロスの夜景を中心にした画が美しい。

プライド。

2005年05月17日 | 
五十嵐 貴久【安政五年の大脱走】

権力を思いのままに振るう大老、井伊直弼。
不遇の時代に想いを寄せた美蝶の娘、美雪を手に入れるため、
美雪と南津和野藩の藩士50名が断崖絶壁の山頂に幽閉される。
猶予はひと月。大脱走が始まる。

非常にシンプルだが面白い。
美しく聡明な美雪姫。知恵の敬吾。武骨な宗十郎。
権力の象徴・井伊直弼。いつも悪役・長野主膳。
こういった典型的なメンバーを集めて、
アルカトラズの様な山を舞台にその攻防を描く。
いったいどんな方法で逃げるんだろう。

まずは武士たちの“姫の命だけでも助けたい”と思う心。
これまで引き継いできた家業へのプライド。
やや滑稽に見えるほどの上下関係。
この時代だからこそ映える、
知恵と根性の微妙なバランスが心地良い。

井伊直弼は不遇の時代が長く、
歪んではいるがその哀しみも理解できる。
そこに長野主膳という蛇の様な個性が絡み、
この事件の発端となるわけだが、
後にこの二人に訪れる破滅を予感させ物悲しい。

久しぶりに映画を見た。

2005年05月16日 | 映画
GW前からだからね。

【シークレット・ウインドウ】
ジョニーデップ扮する作家のもとに、
小説を盗作されたと言う男が現れる。
先に書いたという証拠を見せろと言われるが、
それを邪魔するかのように、
身の回りで次々に事件が起こる。

ストーリーは矛盾だらけ(に思える)。
が、オチからすれば何でも起こりえる設定なので、
それもありなんだろうかとも思う。
この映画で見所と言えば、すごく細かい部分の演出、
もしくはジョニー・デップのアドリブに近い演技。
ちょっとした仕草や、小物の使い方が雰囲気を盛り上げてくれる。
デップを追い詰める役の人(名前は知らない)も、
粘着質の声としゃべり方が、執拗な性格を表していて、
なかなか良い悪役だ。

基本的にスティーブンキング原作の映画で
面白いと思った事は無いし、
ジョニー・デップも好きではないが、
その中では結構秀作だと思う。きっと監督が良いんだな。

すぃあうぁすぇ

2005年05月11日 | 音楽
TOWA TEI【FLASH】
キラキラしてる。
テイ・トーワの音作りの第一印象はいつも
“女心を惹きつけそう”だ。
僕は男なのでどうか解らないが、きっとそうだ。
だって、キラキラしてるもんね。

曲としては坂本龍一参加の1曲目と、
カイリー・ミノーグ&森高千里が参加した2曲目、
アート・リンゼイ参加の6曲目がキラキラ度大。
ゲストの強烈な個性も、
テイ・トーワが充分に消化し混ぜ混ぜすれば、
美しい曲になるに決まってる。
6曲目はボッサ調のギターからの流れが美しい。
他の曲は良い意味で聴き流してOK。

しかしジャケットのアートワークは微妙だ(笑)。


娯楽

2005年05月10日 | 
黒川 博行 【国境】

詐欺師が関西の組筋などから十億円を騙し取り、
北朝鮮へ逃げた。
“極道”桑原と“建設コンサルタント”二宮のコンビが、
詐欺師を追って北朝鮮に潜入する。
命を懸けた追跡劇。黒幕は…。

前作【疫病神】でもこのコンビには楽しませてもらった。
なかなか珍しいコンビで、
この設定だけでも話が面白くなりそうな予感。
今回はまた800ページを超える大作。

なんと言っても、
「昨日北朝鮮から帰ってきました」と言われても不思議でない、
妙にリアリティーのある描写だ。
国自体が非現実的なので、
納得させられてしまうのかもしれないが。
そこに潜入して詐欺師を追い込もうと言うのだから、
もう無茶苦茶だ。

二宮は桑原が短絡的な事を嫌っているが、
実はそのシンプルで直感的な思考が、
切羽詰った時に力を発揮する。
そして、二宮も途中で弱腰になり、
金だけ持って逃げようとしたりする所が、
堅気らしく、人間らしい行動として、
良いコントラストになっている。
最後の数ページに二人の優しさ、
気風の良さをぎゅっと凝縮して終わる所なんかも、
ホッとさせてくれる。

特殊な国の人の有り方、
国境の意味などの政治的な話題から、
読んでいるだけで痛くなる恐ろしい暴力、
巨額の金、優しい女を盛り込んだエンターテイメント。