風月庵だより

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麻薬と女子刑務所

2006-01-12 18:31:13 | Weblog
1月11日(水)晴れ【麻薬と女子刑務所】
 今日のトピックスに「違法ドラッグ輸入業者を刑事告発の方針」という見出しの記事が掲載されていた。 見た人も多いと思うが、この記事の概略は「脱法ドラッグRUSHを米国から輸入して、国内で販売している化粧品輸入販売会社を薬事法違反で刑事告発する」というものである。芳香剤として販売しているというが、摂取量や摂取方法によっては、命の危険もあるというドラッグで、アメリカでは製造禁止になっているドラッグであるという。
 
 現在日本にはドラッグ常用者がかなりいるようだ。知人の息子さんまで警察に捕まったことを耳にして驚いたのは最近の話である。数百万円の保証金を支払って釈放してもらったのだという。
 ドラッグに手を出すのは、若者たちだけではないと思うが、ハイになりたい感覚は若者のほうがより強く欲する感覚であろう。ちょっと経験してみようか、というような安易な思いで手を出して、止められなくなっているケースが多いという。
  
 ドラッグも多種多様で、100種類ぐらい出回っているそうだ。RUSHというのは芳香剤として売られているようだが、隠れ蓑的名をよくもつけたものだ。ドラッグの形状も葉っぱであったり、注射する液体であったり、粉末状であったり、そしてこのRUSHはシンナーのように吸い込む形なのであろうか、多種な形があるようだ。そのなかでドラッグを蔓延させた悪役は、なんといっても錠剤型であろう。まるで医療の薬を飲むような形というのは最も危険な形といえよう。最近読んだ本に通称バツというドラッグのことが書かれていた。これはエクスタシーともいわれているようで、MDMAという化学物質だという。これは錠剤型で手軽に手に入るようなことが書かれていた。
  
 一時的な興奮作用と幻覚作用を得られる代償として、確実に体はむしばまれていく。免疫力の低下、白血球の減少、腎臓や心臓など臓器も損傷を受けるのみならず、命まで失う危険と隣り合わせている。精神的ダメージも勿論受ける。
 
 悪いことは分かっているのに流行っているとは、これ如何に。
 
 買い手がいるから売り手がいるか、売り手がいるから買い手がいるか。麻薬の場合は売る奴が、一番悪い。作る奴はさらに悪い。販売者と製造者を重罪に処さねばならないが、ここにあまり手を付けられていないのではないか。末端で踊らされている者を捕まえても効果は少なかろう。
 
 私がインドに旅したとき、大麻を吸って、一日中ボーッとしている若者たちを多く見た。 また、時折奇声をあげながら、フラフラと 浜辺を歩き回っている西洋人の女性を目にしたが、LSD(合成麻薬。強力な幻覚剤。)によって頭がおかしくなってしまったのだという。ドラッグの恐ろしさがその時目に焼き付いた。日本ではあまりそのような光景を目にしないが、私がそのような場に居合わせないだけのことであろう。
 本当にドラッグに手を染めるのはやめてほしい。当たり前のことであるが、分別のある大人が心底そう思うことが大事ではなかろうか。無関心の波動が一番恐い。
 本当にドラッグは命を縮め、体をむしばみ、精神まで狂わせてしまう恐ろしい代物、このことは誰しも知っていることであろうが、社会全体が実感をもつことが、多少なりとも抑止の力になるだろう。この頃はシンナーを吸うこどもたちを見なくなったが、ドラッグのほうに流れてしまったのだろうか。若者を取り巻く環境が悪いということを耳にするが、恵まれすぎているのではなかろうか。家のために子供の頃から働いていた時代にはなかった現象だ。社会が悪いと言い過ぎるのではなかろうか。そんなことをしたり顔に言う大人たちが、若者の暴走を助長しているきらいもないとは言えまい。でもやっぱり社会も悪いが。一筋縄ではいかない問題であることは重々承知の上での意見だ。あまりに古くさい正論であろうが、敢えて麻薬について書かせてもらった。おまえ、そんなことは百も承知だよ、と言われるのを覚悟で。(脳内麻薬についていつか書ければと願っている。) 

 元旦に書いた日記にイタリアのアッシジのことを書いた。その折りアッシジからスイスの女子刑務所に行く目的のあることまで書いた。ドラッグについて書いたので、関連することなので書き添えたい。
 私の二十歳からの良き友人が、スイスの刑務所に収監されていた。ベルンの郊外にある女子刑務所であった。私がそこを尋ねたのは、あいにく雪の降った寒い日であった。見知らぬ土地で、なんとか探し当てた時のホッとした気持ちは忘れられない。面会を前もって申し込んでいたので、すぐに彼女に逢うことができた。再会の場としてはあまりに辛い場ではあったが、再会の喜びは大きかった。
 彼女の罪状は麻薬所持。私は彼女をよく知っているが、麻薬など吸うような人ではない。それではなぜ麻薬を所持していたのか、というと、デリーの空港で人から頼まれた封筒のなかに麻薬が入っていたのだという。安直に知らない人物から預かりものなど決してしてはならない。不親切のようだが、海外を旅する鉄則である。
 スイスの国は麻薬所持についてかなり厳しいそうで、彼女に下された判決は九年の実刑であった。その封筒が自分のものではないという証明ができなかった。どこの誰から預かったという証明もできなかった。とにかく麻薬を所持しているという事実からは逃げようがなかったのだ。
 なお彼女は刑を七年に軽減されて、七年の間にいくつかの資格を取得し、語学もさらに学んで、その資格で出所してから就職することができた。日本とは隨分違う仕組みに感心させられ、安心もした。そして今でも交際を続けている。青春の精神的に苦しい時代をともにくぐり抜けてきた戦友のような友人だからである。