折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

ドキュメント・『ザ・株主総会』(番外編)

2006-11-03 | 仕事・職場
番外編


エピソード


おきゅう


強行採決にマジ切れし、役員席を跳び越して議長席に突進した総会屋「K」は、その後所轄のS警察署から呼び出しをくらい、こってりと「おきゅう」をすえられた上、「今後、あのような行為はいたしません」の一札を取られて釈放されたとのことであった。


証文の出し遅れ


そのS警察署から顔見知りの刑事が来社、先般の株主総会の状況から判断すれば、十分に立件が可能なので、「被害届け」を是非出して欲しいとのこと。
警察としては、点数を稼げる絶好の機会だけに足しげく出張ってくる。
最終的に社長の意向を確認すると、社長曰く「当日、総会場で十分に逮捕できたはず、今さら立件など『証文の出し遅れ』と全く取り合わない。
そこで、S警察署の刑事には、丁重にお断りの口上を述べてお引取り頂いた。


朝練

総会で『質疑打ち切り』の動議を提出すると言う重要な役割を仰せつかった社員株主の「N」さんは、総会日が近づくと、毎朝車で近くの堤防まで行き、大きな声で「議長!!動議・・」のセリフを声が涸れるほど何回も繰り返し練習し、本番に備えたと言う。
あの、のどがからからになるような緊張感の中、見事に大役を果たした「N」さん本当に大変でしたね。「朝練」の成果が見事に発揮されました。


正体

株主総会の冒頭のハプニングの原因を作った件(くだん)の社員株主は、地方のH支店長であることが判明。
この支店長は、事務局サイドが準備した40人の社員株主の中には含まれていない、言わばノー・マークの社員株主であった。従って、同支店長は最終リハーサルにも出ておらず、「言動には十分注意し、総会屋の挑発に乗らぬこと」という留意事項も勿論知らなかったため、目の前で起こった出来事に「すわ、大変」とばかり反応してしまったらしい。
総会後姿を見せた支店長は、さすがにことの重大性に気づいたようで、「一度、株主総会に出て見たかっただけなんです」とガックリ肩を落としていた。
2時間余も小部屋に隠れていた「かくれんぼ」の心境は、いかばかりであったか。
でも、「鬼」に見つけられなくて本当に良かった?


武士の情け

総会屋の「K」に詰め寄られ、片手にマイク、片手に台本を持って議事を進めていた議長にさらなるピンチが。
と言うのは、議事の進行に欠くことのできない台本(議事進行録)にあってはならないミスがあったのである。「帳合いミス」である。このため、一瞬、社長は読むべき箇所がわからなくなり、読む箇所を探すのに手間取ってしまった。
「『K』が突進してきたのにも驚いたが、台本の綴じ違いにはもっとびっくりした。どうしようかと思ったよ」と社長。
弁解の余地のない、大失態である。しかし、社長はこのミスを誰にも漏らさなかった。
小生は、「武士の情け」と思って、心から社長に感謝した。


独白


その1
小生が現役でまだ総会担当をしている頃、高校時代のクラス会があり、恩師である「K」先生が出席されていた。
先生に、ジャーナリストを目指していたが、夢かなわず、現実にはこんな仕事をしていますと申し上げたら、先生が「よりによって、君がねえ!ジャーナリストならわかるけど、総会担当とはねえ、君のイメージから一番遠い、一番似つかわしくない世界のように思えるけどねえ」「それは大変だ、さぞかしストレスもたまるだろう、心のケアーに気をつけないとね」と言っていただいた。この恩師の言葉に本当に救われ、涙が出るほど嬉しかったことを今でも忘れられない。


その2
ストレス、心のケアーと言えば、今でこそ見なくなったが、まだ現役の頃は、よく株主総会の夢を見た。その夢は、決まって総会当日になって肝心な台本が出来ていないことに気づき、必死になって書いているうちに開会時刻が迫り、パニックになって目が覚めるというものである。
これなども、一種の「トラウマ」と言えるのだろう。


その3
時の流れと共に風化していくさまざまな記憶の中で、とどめておきたい思い出がある。
本ブログもその種の思い出を中心に書いている。
ドキュメント・「ザ・株主総会」は、小生の現役時代、「不本意」であり、「不条理」であり、そして、自分に似つかわしくないという思いを絶えず抱きながらも、仕事ゆえに常に一生懸命に取り組んできた日々を回顧して綴ったものである。
20数年も経つのに、未だに記憶に鮮明に残っていると言うことは、この仕事がいかに「特異」なものであるかの証左なのかもしれない。

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