Crazy For dos and don'ts

音を楽しむことを。日々の無常を。心の遊びを。

Ongaku

2011-04-10 23:15:33 | Weblog
ヴォイス
クリエーター情報なし
ユニバーサルインターナショナル



被災地のニュースをテレビで見るにつけ心が痛むが、
今自分ができることは、いつも自分がしていることだと思い、
今日新しいエントリーを書く。

上原ひろみ 1979年生まれ。
最新作「VOICE」。

上原ひろみの「VOICE」は音楽そのものだ。

ノンジャンル。音楽の垣根を軽々と飛び越え、
上質なモノを与えてくれる。

リヒテルと仕事をしているマルタン
の言葉であるが、「音楽の普遍性」について、

「私にとって、音楽は大きく二つに分けられます。
大衆的なポピュラー音楽と、教養的な知的音楽、
いわゆるクラシック音楽ですね。実は、この二つの間には
強い関係性があります。大衆的な音楽は、知的音楽に
多大なる影響を与えているからです。
 私は、ポピュラー音楽が大好きです。民族の『根っこ』
だからです。ルーマニアやハンガリーへ行くと、
ロマ音楽の存在感がとても強いですよね。フランスでも、
ブルターニュ地方へ行けば、ケルト音楽に出会えます。
それぞれの民族にとって、自分の民族の伝統的なポピュラー音楽
ほどすばらしいものはないでしょう。」

マルタン氏のでここで言う伝統的ポピュラー音楽とは、
日本では、邦楽とジャンルされていたものであろう。

上原ひろみの「Voice」には、日本の伝統的ポピュラー音楽の
民謡・歌謡曲的な要素は少ない。
震災後にNHK‐BSの特番で最後に演奏した
すばらしい「上を向いて歩こう」ぐらいしか、
歌謡曲的なニュアンスは自分は聞いていない。
テーマのメロディラインは歌謡曲だったが、
超絶的な「上を向いて歩こう」だった。
スカパラとの初共演の水琴窟についても、
歌謡曲的なニュアンスのテーマに乗って、
スカパラと高速で共演していた。

バークレー音楽大学ジャズ作曲科とCWS(Contemporary Writing & Production)科
を首席で卒業しており、今年2011年Stanley Clarke Band featuring Hiromiで
グラミー賞を取っている。

この「VOICE」でも
日本の民謡的・歌謡曲的ニュアンスの理解はしっかり残しながら、
アメリカの大衆音楽であるジャズやファンク、プログレッシブロック
という手法で、才能を爆発させている。

Tr1Voice
「目を閉じる。聞こえて来るたくさんのヴォイス。溢れ出す感情、感情は心の声。」
セルフライナーノーツにある。
ゆるやかな導入部から始まる。そこから感情が溢れだすような鍵盤の連打。
力強いドラムのスネアの響き。ベースとのコンビネーションが最高だ。
ドラムスSimon Philips ベースAnthony Jacksonともに
上原ひろみをサポートするというより、自立してなおかつ協調して
「心の声」を紡ぎ出しているようだ。
最高のオープニング。

Tr2Flashback
「記憶の断片が交錯する瞬間。
意識の深い所に眠る強烈なメモリー。 今、呼び起こされる。」
とセルフライナーノーツにある。
泣かせるメロディーで、記憶を蘇らせる。
その記憶のハザマで、どう進むか。
絶対絶命の瞬間から、瞬時にスウィングする瞬間へ。

Tr3Now or Never
「今やらなくて、いつやるの?行動あるのみ。」
とセルフライナーノーツにある。
ブルージーなピアノに、ファンキーなキーボードを合わせている。
ファンク的なものと、ブルース的なものと、ジャズ的なものが
合わさって、筋肉の躍動感あるリズムを思い起こさせる。
「行動あるのみ」。

Tr4Temptation
「その誘惑の結末は、甘美?それとも・・・。」
誘惑するメロディ。
その誘惑は多分異性からのものであろう。
誘惑には乗ってはいけない、甘美さは一時的なもの。
取り返しがつかないかも。誘惑に乗るのも
一つの手ではあるが、、、。
意志あるドラムのビート。

Tr5Labyrinth
「時には興味本位で、時には知らないうちに、迷宮に入り込む。」
最初は、ノリが楽しそうなフレーズで迷宮を彩る。
迷宮、逡巡、彷徨う、脱出を試みるが、、、
ベースが特にかっこよい。

Tr6Desire
「欲望が人を動かす。欲望が時代を動かす。人間の生命力の源。」
スカ的なビートは、キーボードか?ベースか?
スカ的なニュアンスが、すごくいいアクセントになっている。
肯定的欲望否定的欲望入り混じる。

Tr7Haze
「ぼやける視界。焦点が合うと、またぶれる。真実が見えないのか、見たくない
のか。 掴めそうで掴めないもの。」
上原ひろみが、震災直後のNHK-BSの特集で生で演奏したもの。
その時は見えなかった(見たくない)真実も、
しっかり見る勇気を取り戻したい。

Tr8Delusion
「惑わし、惑わされ。 出口はどこ?」
出口はあるのか?でも生きなければならない。
ドラムとピアノのコンビネーションが最高。
ベースがしっかりサポート。

Tr9Beethoven's Piano Sonata No8
Pathetique
ベートーヴェン ピアノソナタ第8番「悲愴」第二楽章
「音楽は、全てを浄化し、ポジティブにする。悲愴感も、憂いも、悲しみも。」
スウィングするベートーベン。


ロック、ジャズ、ファンク、ブルースという大衆音楽を
股にかけて暴れまわり、最後には上原ひろみ流ベートーベンで締めて
いる。これこそ、普遍的な意味でも音楽だ。

上原ひろみにとって音楽は、人生そのものだろう。

自分は上原ひろみの音楽を聞いていたく感動して、
かけがいの無いものと感じる。

しかし、その距離感は、友人としてありたい。

中野翠の「映画の友人」の中で言っていたように、
「『私は映画好きだけど、映画狂ではない。
もっと言うなら、映画好きというのだってアヤシイ。』
‐中略‐私にとって映画というのは、肉親とか恋人みたいなもの
ではなく、友人みたいなものだ。そのくらいの距離感がある。」

限度はあるが、困ったときには助け合う友人みたいな感じ。
音楽にはすごく助けられているが、
俺ができるのは、ブログで書くことしかない。

米国の底力を見たOperation Tomodachiみたいなことができるか難しいが。

震災については自分ができる範囲で、全力をつくすしかないと思っている。
コメント (1)
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