さながら探検のようだった。きょう28日、金沢大学「角間の里山自然学校」の市民ボランティア「里山メイト」のM氏(75)のガイドで「ミステリーゾーン」を踏査した。地元では、御瀑野(おたきの)と呼ばれる地名で、昔から土地の人が近づきたがらない場所である。風が吹いていないのに木の葉が舞い、大木がそよぐ。誰も木を切っていないのに、大木が倒れる。ベテランが道に迷う。地元の多くの人が「不思議な体験」をしている場所だ。
場所は金沢大学角間キャンパスの北側隣接地に当たる。尾根伝いに道があり、「仏教道」と土地の人は呼んでいる。15世紀の終わりごろ、浄土真宗の蓮如上人が北陸布教の折に利用した道と言われ、「蓮如の力水(ちらかみず)」という湧き水や「御講谷(おこうだん)」と呼ばれる地名も残っている。尾根の道は幅1㍍ほど。偉いお坊さんと村の人々がこの道ですれ違う度に、お坊さんは「極楽へいくために念仏を唱えるのじゃ」などと声をかけ、蓮如ファンを獲得したのだろうなどと想像しながら歩いた。
ミステリーゾーンはその仏教道から横道にそれる。M氏が30年ほど前の記憶をたどりながら歩いて行く。途中で道はなくなった。笹薮だ。それをかき分けて進むとまた道らしきもものがあり、ようやく御瀑野にたどり着く。M氏はここで何度も何度も道に迷う不思議な感覚に襲われ、命からがら自宅に戻った。すると、父親から「よう戻った。あそこには魔物がいる。近づくな」と昔からの言い伝えを聞かされた。だからM氏がこの地に立つのは30数年ぶり。
この地は海で言えば岬の突端にようになっていて、三方が谷にかこまれている。見晴らしがよい。向こうにはゴルフ場が見える。M氏は「ゴルフ場が見えるようじゃ、魔物の力も落ちたのかな」とつぶやいた。すると私を含め同行した4人のうちの1人が「あっ」と叫んだ。そして「あのゴルフ場はバブルの末期に造成したんですが、確か工事中に2人が死んでいますよ」と。この後しばらく沈黙が続いた。
確かに薄気味が悪い、と私も感じた。とくに、谷から風がゴーッと鳴り響いているのである。どこかで聞いたことがある音だと。思い出した。1983年5月26日、能登半島の突端にある輪島市で日本海中部地震の津波に遭遇した。海の向こうから押し寄せてくる波。その時の轟(ごう)音と似ているのだ。三方からの谷風が絶え間なく吹き上げてくる。
M氏によると、御瀑野という地名は、見下ろす谷に瀑布(ばくふ=滝)があって、その近くの洞穴に昔、修験者がいたとう言い伝えがある。ここには土地の人が近づかないので、いいジネンジョが採れるらしい。それでもM氏ら土地の人は近づかない。
ここに30分ほどいて、道を戻って大学キャンパスに着いた。道すがら、オウレンやキンキマメザクラが可憐な花をつけていた。
(写真・上は「仏教道」と呼ばれる尾根の道、中は30数年前の不思議な体験を話すM氏、下は苔むしたアベマキの老木)
⇒28日(火)夜・金沢の天気 雨
場所は金沢大学角間キャンパスの北側隣接地に当たる。尾根伝いに道があり、「仏教道」と土地の人は呼んでいる。15世紀の終わりごろ、浄土真宗の蓮如上人が北陸布教の折に利用した道と言われ、「蓮如の力水(ちらかみず)」という湧き水や「御講谷(おこうだん)」と呼ばれる地名も残っている。尾根の道は幅1㍍ほど。偉いお坊さんと村の人々がこの道ですれ違う度に、お坊さんは「極楽へいくために念仏を唱えるのじゃ」などと声をかけ、蓮如ファンを獲得したのだろうなどと想像しながら歩いた。
ミステリーゾーンはその仏教道から横道にそれる。M氏が30年ほど前の記憶をたどりながら歩いて行く。途中で道はなくなった。笹薮だ。それをかき分けて進むとまた道らしきもものがあり、ようやく御瀑野にたどり着く。M氏はここで何度も何度も道に迷う不思議な感覚に襲われ、命からがら自宅に戻った。すると、父親から「よう戻った。あそこには魔物がいる。近づくな」と昔からの言い伝えを聞かされた。だからM氏がこの地に立つのは30数年ぶり。
この地は海で言えば岬の突端にようになっていて、三方が谷にかこまれている。見晴らしがよい。向こうにはゴルフ場が見える。M氏は「ゴルフ場が見えるようじゃ、魔物の力も落ちたのかな」とつぶやいた。すると私を含め同行した4人のうちの1人が「あっ」と叫んだ。そして「あのゴルフ場はバブルの末期に造成したんですが、確か工事中に2人が死んでいますよ」と。この後しばらく沈黙が続いた。
確かに薄気味が悪い、と私も感じた。とくに、谷から風がゴーッと鳴り響いているのである。どこかで聞いたことがある音だと。思い出した。1983年5月26日、能登半島の突端にある輪島市で日本海中部地震の津波に遭遇した。海の向こうから押し寄せてくる波。その時の轟(ごう)音と似ているのだ。三方からの谷風が絶え間なく吹き上げてくる。
M氏によると、御瀑野という地名は、見下ろす谷に瀑布(ばくふ=滝)があって、その近くの洞穴に昔、修験者がいたとう言い伝えがある。ここには土地の人が近づかないので、いいジネンジョが採れるらしい。それでもM氏ら土地の人は近づかない。
ここに30分ほどいて、道を戻って大学キャンパスに着いた。道すがら、オウレンやキンキマメザクラが可憐な花をつけていた。
(写真・上は「仏教道」と呼ばれる尾根の道、中は30数年前の不思議な体験を話すM氏、下は苔むしたアベマキの老木)
⇒28日(火)夜・金沢の天気 雨