EG83と、EG102の続きです。EG102で示した移動の性質とは、異なるものについてです。では、以下、見ましょう。
(1)John seems _ to be said _ to be hated _ by Mary. (〇)
(ジョンはメアリーに嫌われていると、言われているみたいだね。)
(1)では、‘John’が、‘seem’の主語になっています。しかし、これは、もともと、‘seem’が、直接的に‘John’を主語に指定いるわけではありません。むしろ、‘John’は、‘seem’の後にある‘to be said’によって、「ジョンは ~ と言われている」、という、意味関係から選ばれた表現であると言えます。
しかし、今度は、‘John’が‘to be said’から、直接的に指定された表現かというと、そうではなく、‘John’は、そのさらに後にある‘to be hated’から選ばれたものであり、「ジョンが嫌われている」、という意味関係が、本来、基本となる表現です。そして、もっと言えば、受身文のもともとのカタチは、能動文なので、‘John’は、‘hate’の目的語だった、と言えます。
ですので、(1)での‘John’の解釈は、‘seem’の主語でもあり、また、‘be said’の主語でもあり、そして、また、‘be hated’の主語でもある (‘be hated’を能動文にするなら、‘hate’の目的語)、ということになります。こういったことが起こってしまうのは、英語の文法には、移動から移動によって成り立つ「連鎖」があるためです。 (EG102、参照。)
(2)I think [ (that) Mary hates John ]. ([ メアリーはジョンを嫌っている ] と思う。)
(3)Who do you think [ _ hates John ] ? ([ 誰がジョンを嫌っていると ] 思う?)
(4)Who do you think [ (that) Mary hates _ ] ? ([ メアリーは誰を嫌っていると ] 思う?)
しかし、一方、英語には、そのような規則性を示さない移動もあります。(2)をもとにして、(3)と(4)のような疑問詞‘who’を使った疑問文がつくれます。(2)は、‘that’節内の主語‘Mary’と、目的語‘John’が、(3)と(4)のように、‘who’で置きかえることができます。そして、その‘who’は、文の先頭まで移動しています。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照。また、(3)における、‘that’が消去されなければならない条件に関しては、EG59、参照。)
こういった移動は、EG102で見たような、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) における移動とは、明らかに性質が違うものです。つまり、疑問詞の移動は、どの位置からであろうと、必要とあらば、何らかの疑問の対象となるものを疑問詞に変えて、一足飛びに、文の先頭にもっていくことができる、という点で、かなり自由度が高い移動である、と言えます。 (ただし、移動を妨げるような要因もあります。EG49など、参照。)
(5)It seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates John ] ]. (〇)
([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)
(6)Who does it seem [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ? (〇)
([ 皆は、[ メアリーが誰を嫌っていると ] 言っている ] 様子なのさ?)
(5)をもとにして、‘John’を疑問詞‘who’に変えて、(6)のように、文の先頭にもっていった疑問文はOKです。(6)の移動は、(1)の移動とは明らかに違っていて、文の末尾から先頭まで、一発で移動しています。そして、‘that’節から‘to’不定詞への書きかえも必要ありません。
(7)a boy [ who it seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ] (〇)
([ [ 皆は、[ メアリーが _ 嫌っていると ] 言っている ] 様子の ] 少年)
今度は(7)ですが、‘who’以下が関係節となって‘a boy’にかかっている例です。関係節が長いんで、ちょっと解釈がややこしいんですが、基本的にはOKです。(7)の場合も、関係代名詞‘who’が、関係節の末尾から先頭まで、一発で移動してきたと考えられます。この点、疑問詞の移動と、関係詞の移動は、よく似た性質をもっていると言えますね。
ここで、疑問詞と関係詞は、EG83では、「‘wh-’表現」として、ひとまとめにされたのを思い出してほしいのですが、「‘wh-’表現」は、‘that’節内からであっても、その外に自由に移動できるほどの力がある、「強い移動」として扱われました。
一方、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) は、‘that’節の中から、直接、外に飛び出す力がないので、‘that’節内から移動の際は、‘to’不定詞への書きかえがなければ、アウトになってしまう、という点で、「弱い移動」として扱われました。
こういった分類に加えて、今回扱った移動の性質の違いからも、やはり、「‘wh-’表現」という、ひとまとめの扱いは妥当である、ということになります。つまり、移動の「連鎖」が、どうしても必要である特定の構文と、一方、移動の「連鎖」など必要とはしない、「‘wh-’表現」の違いです。
(8)Who seems _ to be said _ to be hated _ by Mary ? (〇)
(誰がメアリーに嫌われていると、言われている様子なの?)
(8)の場合、OKですが、ここでは、‘who’が、直接的に、‘hated’の後から移動しているというわけではありません。(1)の‘John’が、ただ、‘who’に置きかわっただけです。そこで、「‘wh-’表現」の移動は、特定構文の移動の「連鎖」が混じっている場合、その構文の連鎖が、全て完了してから、適用されるもので、それは、以下の例からも明らかです。
(9)It seems [ (that) everyone says [ (that) John is hated _ by Mary] ]. (〇)
([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)
(10)Who does it seem [ (that) everyone says [ _ is hated _ by Mary ] ? (〇)
([ 皆は、[ 誰がメアリーに嫌われていると ] 言っている ] 様子なの?)
(9)はOKですが、最も小さな‘that’節内で、受身文による‘John’の移動があるだけです。そして、移動はそこまでで終了していても、‘John’が、それ以降、‘say’の受身文や、‘seem’による特定構文の移動をされていないならば、もちろん、「連鎖」はストップしていても構いません。
ですので、この場合、(9)における「連鎖」は、最も小さな‘that’節内で完了している、と考えてもよいわけですから、(9)における‘John’は、(10)のように、‘who’になって、「‘wh-’表現」として、一発で文の先頭まで移動できるわけですね。
今回のポイントは、英語における移動の性質を考えていくと、どうやら、2種類の移動に分類できそうだ、ということです。長距離の場合、目的地にたどり着くまでに、通過点でのチェックを受けてからでないと、先に進めない移動と、一方、長距離であっても、寄り道などせずに、一発で、行きたい場所に行ける移動がある、ということです。
前者の特徴は、特定構文の移動をうながすようにするために、1つ1つ移動を進めていかなければならないのですが、後者の特徴は、基本的には、どこからでも行きたいところに一発でたどり着ける、という点にあるので、前者のほうが、はるかに手続きがややこしい、と言えます。
ですので、これら2種類の移動が混じっている場合は、前者の方が規則正しく行われているかを確かめてから、後者の移動を適用する方が、間違いなく、正しい英語をつくる上でのコツと言えますね。
●関連 :EG47、EG49、EG59、EG83、EG102、
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★
(1)John seems _ to be said _ to be hated _ by Mary. (〇)
(ジョンはメアリーに嫌われていると、言われているみたいだね。)
(1)では、‘John’が、‘seem’の主語になっています。しかし、これは、もともと、‘seem’が、直接的に‘John’を主語に指定いるわけではありません。むしろ、‘John’は、‘seem’の後にある‘to be said’によって、「ジョンは ~ と言われている」、という、意味関係から選ばれた表現であると言えます。
しかし、今度は、‘John’が‘to be said’から、直接的に指定された表現かというと、そうではなく、‘John’は、そのさらに後にある‘to be hated’から選ばれたものであり、「ジョンが嫌われている」、という意味関係が、本来、基本となる表現です。そして、もっと言えば、受身文のもともとのカタチは、能動文なので、‘John’は、‘hate’の目的語だった、と言えます。
ですので、(1)での‘John’の解釈は、‘seem’の主語でもあり、また、‘be said’の主語でもあり、そして、また、‘be hated’の主語でもある (‘be hated’を能動文にするなら、‘hate’の目的語)、ということになります。こういったことが起こってしまうのは、英語の文法には、移動から移動によって成り立つ「連鎖」があるためです。 (EG102、参照。)
(2)I think [ (that) Mary hates John ]. ([ メアリーはジョンを嫌っている ] と思う。)
(3)Who do you think [ _ hates John ] ? ([ 誰がジョンを嫌っていると ] 思う?)
(4)Who do you think [ (that) Mary hates _ ] ? ([ メアリーは誰を嫌っていると ] 思う?)
しかし、一方、英語には、そのような規則性を示さない移動もあります。(2)をもとにして、(3)と(4)のような疑問詞‘who’を使った疑問文がつくれます。(2)は、‘that’節内の主語‘Mary’と、目的語‘John’が、(3)と(4)のように、‘who’で置きかえることができます。そして、その‘who’は、文の先頭まで移動しています。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照。また、(3)における、‘that’が消去されなければならない条件に関しては、EG59、参照。)
こういった移動は、EG102で見たような、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) における移動とは、明らかに性質が違うものです。つまり、疑問詞の移動は、どの位置からであろうと、必要とあらば、何らかの疑問の対象となるものを疑問詞に変えて、一足飛びに、文の先頭にもっていくことができる、という点で、かなり自由度が高い移動である、と言えます。 (ただし、移動を妨げるような要因もあります。EG49など、参照。)
(5)It seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates John ] ]. (〇)
([ 皆は、[ メアリーはジョンを嫌っていると ] 言っている ] みたいだね。)
(6)Who does it seem [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ? (〇)
([ 皆は、[ メアリーが誰を嫌っていると ] 言っている ] 様子なのさ?)
(5)をもとにして、‘John’を疑問詞‘who’に変えて、(6)のように、文の先頭にもっていった疑問文はOKです。(6)の移動は、(1)の移動とは明らかに違っていて、文の末尾から先頭まで、一発で移動しています。そして、‘that’節から‘to’不定詞への書きかえも必要ありません。
(7)a boy [ who it seems [ (that) everyone says [ (that) Mary hates _ ] ] ] (〇)
([ [ 皆は、[ メアリーが _ 嫌っていると ] 言っている ] 様子の ] 少年)
今度は(7)ですが、‘who’以下が関係節となって‘a boy’にかかっている例です。関係節が長いんで、ちょっと解釈がややこしいんですが、基本的にはOKです。(7)の場合も、関係代名詞‘who’が、関係節の末尾から先頭まで、一発で移動してきたと考えられます。この点、疑問詞の移動と、関係詞の移動は、よく似た性質をもっていると言えますね。
ここで、疑問詞と関係詞は、EG83では、「‘wh-’表現」として、ひとまとめにされたのを思い出してほしいのですが、「‘wh-’表現」は、‘that’節内からであっても、その外に自由に移動できるほどの力がある、「強い移動」として扱われました。
一方、予め、もとの位置と移動先を、ガッチリ指定している構文 (受身文、‘seem’の構文、‘easy’構文、など) は、‘that’節の中から、直接、外に飛び出す力がないので、‘that’節内から移動の際は、‘to’不定詞への書きかえがなければ、アウトになってしまう、という点で、「弱い移動」として扱われました。
こういった分類に加えて、今回扱った移動の性質の違いからも、やはり、「‘wh-’表現」という、ひとまとめの扱いは妥当である、ということになります。つまり、移動の「連鎖」が、どうしても必要である特定の構文と、一方、移動の「連鎖」など必要とはしない、「‘wh-’表現」の違いです。
(8)Who seems _ to be said _ to be hated _ by Mary ? (〇)
(誰がメアリーに嫌われていると、言われている様子なの?)
(8)の場合、OKですが、ここでは、‘who’が、直接的に、‘hated’の後から移動しているというわけではありません。(1)の‘John’が、ただ、‘who’に置きかわっただけです。そこで、「‘wh-’表現」の移動は、特定構文の移動の「連鎖」が混じっている場合、その構文の連鎖が、全て完了してから、適用されるもので、それは、以下の例からも明らかです。
(9)It seems [ (that) everyone says [ (that) John is hated _ by Mary] ]. (〇)
([ 皆は、[ ジョンはメアリーに嫌われていると ] 言っている ] みたいだね。)
(10)Who does it seem [ (that) everyone says [ _ is hated _ by Mary ] ? (〇)
([ 皆は、[ 誰がメアリーに嫌われていると ] 言っている ] 様子なの?)
(9)はOKですが、最も小さな‘that’節内で、受身文による‘John’の移動があるだけです。そして、移動はそこまでで終了していても、‘John’が、それ以降、‘say’の受身文や、‘seem’による特定構文の移動をされていないならば、もちろん、「連鎖」はストップしていても構いません。
ですので、この場合、(9)における「連鎖」は、最も小さな‘that’節内で完了している、と考えてもよいわけですから、(9)における‘John’は、(10)のように、‘who’になって、「‘wh-’表現」として、一発で文の先頭まで移動できるわけですね。
今回のポイントは、英語における移動の性質を考えていくと、どうやら、2種類の移動に分類できそうだ、ということです。長距離の場合、目的地にたどり着くまでに、通過点でのチェックを受けてからでないと、先に進めない移動と、一方、長距離であっても、寄り道などせずに、一発で、行きたい場所に行ける移動がある、ということです。
前者の特徴は、特定構文の移動をうながすようにするために、1つ1つ移動を進めていかなければならないのですが、後者の特徴は、基本的には、どこからでも行きたいところに一発でたどり着ける、という点にあるので、前者のほうが、はるかに手続きがややこしい、と言えます。
ですので、これら2種類の移動が混じっている場合は、前者の方が規則正しく行われているかを確かめてから、後者の移動を適用する方が、間違いなく、正しい英語をつくる上でのコツと言えますね。
●関連 :EG47、EG49、EG59、EG83、EG102、
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます