ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち

2016-11-23 23:57:43 | な行

素晴らしい実話。いい映画だと思う。

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「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」71点★★★★


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1938年。
チェコスロバキアにナチスの手が迫るなか
ごく普通のイギリス人の若者が
チェコ在住のユダヤ人の子どもたちを国外に脱出させ命を救った・・・という
実話ドキュメンタリーです。


教科書に載っていてもおかしくないような話なのに
まったく知らなかった。
本当に世の中には「知られざる歴史の逸話」がまだまだあるんだなあ
びっくりしますが

まあそれもそのはず。
この話は最近まで、誰にも知られていなかったのです。

ニコラス・ウィントンは、669人の子を救ったあと
そのことを妻にも話さずにいた。
でも1988年に彼の妻が、50年間眠っていた彼のノートを見つけ
この歴史的な偉業が世に出ることになったんですね。


映画は105歳でも元気なニコラスへのインタビューも含め
彼に助けられた子どもたちの消息を追い、
インタビューをしている。

観客としては
成長した彼らが一様に立派な職業についているのにびっくりいたします(笑)

学者や企業家、教師――
その理由は彼らの通ったイギリスの“チェコ学校”にあるらしい。

このあたり、ぜひ教育関係者は参考にしていただきたいですね。


と、まあおもしろい題材なのですが
この映画をとりわけオススメしたい理由は
単なる「偉人伝」にしていないところ。

彼に助けられた子どもたちはその事実を知り
「恩返しやお礼をしたい」と
それぞれが善き活動を始めている。
さらに、それが孫世代にも繋がっている――というんです。

だから、感動が深いんですねえ。

ニコラスさんは2015年に106歳で亡くなったのですが
映像でも本当にお元気そうだし。
ラストの歌には、あまりにも善オーラが溢れすぎかと思ったけど(苦笑)
ぜひ授業などでも取り上げていただきたい作品だと思いました。

それにしても。
子どもを生き延びさせるためとはいえ
やはり「子どもと別れて、子どもだけを外国に逃がす」ことは
親にとっては辛い決断なのだな、とつくづく感じた。
こうした例がほかにあまりない理由はそこにあるんでしょうね。


★11/26(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち」公式サイト

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4 コメント

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生き別れ と 死に別れ (O-sam)
2016-12-21 04:20:23
素晴らしい映画でした。 常々思っております、
「事実は小説なんてもんじゃない」と。
期しくも、昨年末に “黄金のアデーレ、名画の帰還” を、
今年の元旦に “杉原千畝” を鑑賞した。どちらも本作と同じ、理不尽な抑圧からの逃避を描いています。
もし、わが身に降りかかってきたとしたら・・・。 家族全員での脱出・逃避がとても想像できない事態(杉原千畝)。
ましてや子供だけでも生き延びてほしいから、との今生の別れなど、全く想像できない。黄金のアデーレでは、子供とはいえ大人のカップルの逃避行。俳優による再現ドラマだったから鑑賞に堪えることができた。
それが、このドキュメンタリーでは669人の、しかも幼い子供たちが、迫害を逃れ、そして生き延びた。それを実行した、自分たちの運命を覚悟していたかのような親御さん達、いったい、どんな想いで送り出したのでしょうか。
生き延びた子供たちが 「駅で見送ってくれたのが、最後の親の姿だった」 と語る映像に、全ての思考を停止させられてしまった。
生き別れ、それは死に別れなんかより遥かに悲劇であり、想像の域を超えてしまっています。
本当に (ぽつお番長)
2016-12-24 17:50:48

この実話には驚かされましたねー。

「善意の恩返し」のリレーが
いまに続いているという素晴らしさ!

来年もO-samさんが
よい映画にたくさん出会えますように・・・!
何事にも、明と暗が存在する (O-sam)
2016-12-28 03:54:51
番長さま
応答、ありがとうございます。
仰る通り、“「善意の恩返し」のリレー”が
大変素晴らしく、感銘を受けました。
生き延びた子供たち自身の強さとともに、
受け入れた里親の方々の大きなお力が
あったからと、想像します。
ただ、このエピソードが発見されるまで、
長い時間が経過してしまった影響か、
669人のうち200名ぐらいが確認された一方、
残りの方々は消息が分からないとの事かと。
この事実も、しっかりと重く受け止めなければ
いけないと、思いました。
そのとおりですね~ (ぽつお番長)
2016-12-31 22:46:12

映画はほんとうに
いろんなことを考えさせてくれますね。

2017年O-samさんが
いい映画にたくさん出会えますように!

来年もどうぞよろしくお願いいたします~

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