ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

イヴ・サンローラン

2011-04-23 17:15:56 | あ行

この献身的な愛に感動……!


「イヴ・サンローラン」77点★★★★



21歳でクリスチャン・ディオールの
後継者に抜擢された
天才デザイナー、イヴ・サンローラン。


ファッション界の寵児となった彼が
2008年に亡くなるまで
いかに輝き続けたか。

その成功と名声の影で
どんな地獄を味わっていたかを


彼と50年を共に過ごし、支えてきた
公私にわたるパートナー
ピエール・ベルジェ氏が語る
ドキュメンタリーです。


ベルジェ氏のとつとつとした語りと共に
過去の写真や映像、
二人が暮らした家などが紹介され

とても静かに進む映画で

「追悼」という印象がピッタリ。



この二人の関係は超有名らしいですが
番長、全然知りませんでした。


なもんで
サンローランってこんな人だったのかあと
いう驚きがまず第一。


彼は自分を
「生まれたときから、憂鬱で陰気」と
自己評価するほど

すごーく内向的だったんですって。



そんな彼が、成功と背中合わせに
プレッシャーに耐え、どれだけの苦しみを味わっていたかを
改めて知り

その苦痛を想像するに
背筋がひんやりしました。


そして
その内気でやせっぽちな青年と
「雷に打たれたように」恋に落ち

その影となり
私生活でも、仕事でも支え続けたというベルジェ氏。


自分がいかに彼を愛したかを
静かに語る様に

「ここまで愛せる人に出会えるってうらやましい……」

「ここまで献身してくれる人って素晴らしい……」

と思うとともに

愛する人を失ったとき
遺された者は、どう生きるのか

その哀しみに
胸が圧迫されました。


サンローラン氏が亡くなって2年、
哀しみはもはや慟哭ではないけれど
それだけに、染みいる。

うう、つらいっすよね。。。


さらに映画では
二人が収集した美術品の数々が(ものすごい点数!)
黙々と運び出され

オークションに出される過程が描かれるんですが
これがまた切ない。


「もし私が先に死んだら
イヴは決してこれらを手放さなかっただろう」と
言うベルジェ氏ですが

彼にとってはこれがけじめのつけかたであり
弔いなんだろうと感じました。


同時に
「一流が選ぶ美とは、こういうものか……」と
目の保養にもなりました。


名声もセンスもお金も欲しいけど
やっぱ愛が欲しいよねえ。

いやホントに欲しいもの
実は「献身」か?(汗)


★4/23からTOHOシネマズ六本木ヒルズ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開中。


「イヴ・サンローラン」公式サイト

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