しろがねも くがねもたまも なにせむに
ませれるたから こにしかめやも ー柿本人麻呂ー
少し間違いがあるかもしれませんが、
確かこんな歌でした。
私はこの歌が好きなのですが、
あの授業で、私にインパクトを与えたのは、
歌自体ではなく、先生のご様子だったのだ、
と、最近気づきました。
先生は奈良の女子大を出られ、ロマンティックな話なども
女子高生の間にながれ、ひそかな憧れの存在でした。
あの当時はもう50歳を越えられていたとは思いますが。
スーツに身を包み、背筋をのばして
小さな体を教壇にあずけるようにおっしゃいました。
『世の中の金銀財宝、どんな宝も一体何になるのでしょうか。
子供に勝るものはありません』と。
余談ですが、きっと『子供』は『愛する人』に置きかえれますね。
堂々とした、ためらいのない、
しかも静かな、女性としての慈しみや愛が
17歳の少女のどこかに入り込んだのですね。
数十年が過ぎ、自分の中に
こんな形であの授業がよみがえるなんて、
不思議ですが、とてもうれしく思っています。