アフリカ・ユーラシア見聞録

むかしむかしあるアフリカで・・・

ダブル・トリップ(コモロ→モーリシャス)

2005-04-26 11:53:36 | 1st 北・東アフリカ
モーリシャス

(コモロ→モーリシャス→マダガスカル)



2005.04.26(火)


 6日間という苦難の日々を経てようやくの出発だ。
 後日また戻って一泊しなければいけない(ルートの都合でタンザニアに戻る前にもう一度寄らなければならない)のは癪だが当面はこの国とお別れできると思えば気分も晴れやかだ。

 次の目的地はマダガスカル。だが、コモロからの直行便が無いためにモーリシャスに寄ってからマダガスカルに行く形となる為に今日はモーリシャスで1泊する予定だ。

 フライトチケットを見ると3島しか行かない(セイシェルはこれから買う予定)割には綺麗なルートを描けないというのは何ともやりきれない気分になる。

 空港に着き、フライトを待つ間に以前あったマダガスカル人夫妻に会う。彼らはマダガスカルに戻るらしい。
 私が彼らに『マダガスカルに行くのは大変だね、モーリシャスで1泊しなければいけないからね』と言うと不思議そうな顔をされる。なんでだろうか?

 フライトは無事に出発。

コモロ上空
 

 


 あれだけ憎いと思っていたコモロも上から見下ろすと何かいい気分になる。
 それもこれから明らかにコモロよりはいいと思える国にいけるという心理的余裕が生まれたからこそだろう。


 そして順調に空港に到着。
 



 『・・・』



 『・・・・・・』



 『何これ?ここマダガスカルじゃん・・・!!』



 私は軽いパニック状態だ。タンザニアでチケットを買った時、コモロからマダガスカルに行く便が無いからこそタンザニア→コモロ→モーリシャス→マダガスカル→モーリシャス→コモロ→タンザニアというルートにした筈だった。


 『どうしてマダガスカルに寄るんだ?』


 私のそんな疑問もお構いなしに乗客は普通に降りて、また新しく乗ってくる。


 私の次の目的地はこのマダガスカルだ。一瞬『ここで降りたい!』とも思ったが荷物も飛行機に預けているしそもそも私の今のチケットはコモロ→モーリシャスだ。

 『くっくそぅ・・・、騙された・・・!』

 タンザニアでチケットを買った時、私は日本人経営の旅行代理店以外はあたっていない。
 彼らの応対や実績を見てここなら間違いないと考えて余所も確認するという事を怠っていたのだ。
 彼らを信用してチケットを買った結果、まさかこんな目に遭う事になるなんて・・・
(後日タンザニアに戻って聞いてみたらタンザニアではコモロ→マダガスカルというチケットは買えないと言われた。これはタンザニア国内に入っている航空会社がどう提携しているかとかに関わるらしいが、この時も今も本当に買えなかったのかという疑問は残る。ただその旅行代理店のメインはツアーであり、個人旅行者へのフライトチケットというのはあくまでも業務の一つであるし、そもそも私のようなルートでチケットを買う人間もいないので彼らにしても全て予測出来る訳はなかったのだろう)


 しばらく空港でトランジットしてから出発。
 
 空に青空は広がるが私の心は一気に曇り空だ。

 さらに悪い事にたまたま隣に座ったパキスタン人が「神について」話しかけてくる。こちらは無神論者だというと「じゃあ人は誰によって創られたんだ!」などどんどん熱くなってくる。
 今の私にとってそんなことは本当にどうでもいい。マダガスカルに行くのにマダガスカルにトランジットしてモーリシャスに1泊してマダガスカルという得体の知れないルートになったことに対する落ち込みと、彼のうっとうしさから仕舞には『神がどうこうとか知るか!何かあってもそれは神が定めた事とかぬかして人間としての責任を転化して逃げているだけだろう。それに大勢の人を殺しあっているのイスラムやキリストといった宗教信者達じゃないのか?神がいるなら戦争など起きないだろう。』と喧嘩腰になる。
 結局モーリシャスに到着するまでずっと彼とはこんな調子で口論し続けてしまった。

 ただでさえ、意気消沈している上にこんな事をさせられるなんてと余計に気がめいるフライトだった。


 だが、まあいい、これでようやくモーリシャス。タンザニアの旅行代理店に聞いたところこの国が4島の中で一番やりやすい場所らしい。まずビザは必要ないし(4島ではセイシェルもビザ不要)、観光立国ということもありまたインフラも進んでいるという。俗にいうリゾート国だ。少しは落ち着けるだろう。

 それにこれまでに遭った事はもう終わった事だ。
 ここでの1泊、せめていいホテルでも見つけて次の滞在につなげることにしよう。
 



 と、私は気持ちを切り替えてイミグレへ歩みを進めた。




 が・・・




 2つ目の罠がそこに牙を広げ私を待ち受けていたのだ・・・!


 モーリシャスの国際空港。近代的で綺麗!
 



 イミグレへ向かい、カウンターでパスポートを見せる。

 「日本人?」

 『はい。』

 「ここへは観光?」

 『はい。』

 「じゃあチケットを見せて」

 島国ではフライトチケットを見せてその国のイン・アウトを示さなければいけない場合が多い。不法入国者を防ぐ目的だ。

 『はい。』

 私は一連のフライトチケットを提示する。問題は無い。

 「あれっ?タンザニアで終わりになっているけど・・・」

 『ええ。タンザニアに戻りますけどそれが何か?』

 「日本までのフライトチケットを見せてもらいたいんだけど」

 『えっ?今アフリカを縦断している所で日本にはしばらく帰らないからチケットは無いですよ』

 「タンザニアに在住しているの?」

 『いえ、旅行者です。居住は日本です。』

 「・・・・、日本へ戻るチケットがないと入国させられないんだけど・・・」

 『ハッ・・・ハァ????』

 どういうことだ、私はこの国の出入国するチケットを持っている。それなのに何故だ??

 『すいません、何が問題なんですか?』

 「規則でね。それぞれの国籍の国か居住国までのチケットを持っている人しか入国させられないんだよ・・・」


 『・・・』



 『・・・・・・』



 『そうか!それならば仕方が無い・・・・』



 『・・・・・・訳あるかぁ!』

 
 私はもう一度自分のチケットを見せてこれからの予定とルートを説明する。が、彼は理解はしてくれたものの後は「規則」の一点張り、埒が明かない。

 ちょっと時間がかかりそうになったので私は列から外され待合所に戻る。

 何度も書くが今日はここで1泊、到着したのは夕方で明日は朝出発。たったこれだけの事をしたいだけなのに何故最初で躓かせる。

 イミグレの列がはける間、私はタバコを吸うより他にやる事がなくなっていた・・・(待合所は禁煙だったが、どうしても吸わせろと言ってトイレの一角で吸う許可を貰った、不良高校生の定番みたいな吸い方だ)。

 待合所から人もはけ、残ったのは私一人、先程のイミグレの係官が私のところに向かってくる。

 質問も答えも先程と一緒だ。私も彼も主張は変わらないから平行線のままだった。

 そして彼はこう提案してくる。

 「規則は規則だから、日本までのチケットを買ってくれ、カードはあるだろう?」


 『・・・』


 ある。


カードはある。

 ただやはりこの国の出国チケットを持っているのにここでそれを聞かれる事には納得が行かない。
 最後タンザニアに戻った時、彼らに「お前日本行きのチケットが無いならタンザニアには入国させないぞ」と言われるならまだしもだ。


 だが・・・

 今回もし意地を張り続けていた所でこの先またここにも戻って来る。
 
 そして何よりも『私はモーリシャスを観光したい』のだ。


 押し問答を続けていてもしょうがない。この際だからまずコストを確認しようと考えを軟化させ、私は一度彼と一緒に空港にあるエア・モーリシャスのオフィスに行く事にした。


 そこで値段を聞いてみると・・・


 「日本まで・・・」

 

 「27万円・・・!」



 『!!!!!!!!!』



 終った・・・何もかも・・・



 私は彼を見る。


 『済まん、チケットは買えない。』


 『みてみろ、この値段を、俺はさっきアフリカを縦断している最中にインド洋の島国を周る為にここに寄っているだけと説明しただろう。俺はこのチケットを買った所で100%使わない。なんだってそんなものにこんな金額を払わされるんだ?お前が俺だったら買うとでもいうのかい?馬鹿にするのもいい加減にしてくれ、そもそもこの国に入って出るだけなら俺はもうチケットを持っている。俺が問題になるとしたらタンザニアでなら分かるがなんで規則規則と杓子定規にしか言えないんだ!』

 係官の心象を悪くする事は私にとって不利にしかならないことは分かっていた。だが、この時は感情が上だった。

 彼も困っているようだ。どうする事も出来ないと思ったのだろう。また待合所へ戻る。

 もう日は暮れている。これから宿を取らなければいけないのに街へ出る気力も失せかけていた。


 『おい、お前では話にならん、責任者を呼んで来い!』

 
 私は彼にこう告げる。彼は係官の一人として規則に忠実であろうとしているだけだ。そしてそこから外れる気もないというのは今までの態度ではっきりとしていた。


 しばらく待つと「チーフ」と呼ばれる人間がやってくる。

 私は彼に一から事情を説明する。話は例によって平行線。ポイントは規則だ。私だけ特例にする訳にはいかないらしい。(後で考えればごもっともだが)

 そしてしばらく時間が経ってから彼は私にこう提案してきた。

 「すまない、規則は規則だからチケットは買ってくれ。ただ問題になるのは入国する時だけだからチケットを買って出国までにキャンセルすればいいから・・・」


 『・・・』



 『・・・・・・』



 『何?それ・・・???』



 どんな規則なんだ?出入国両方ならまだしも入国だけ居住国へのリターン・チケットを持っていなければいけないなんて・・・


 『世の中は・・・もとい、モーリシャスのイミグレは不条理に満ち溢れている・・・』


 それに係官のチーフであるアンタがそんな提案をしていいのか?


 意味が全く分からん。




 だが、もうこれ以上は無理だろう。


 私はここで妥協する事にした。チーフが出国時は日本へのリターン・チケットを持ってなくていいというならそれでいいのだろう。


 そして何よりも私はやっぱりモーリシャスに入国したかったのだ・・・。


 もう一度チケットカウンターへ行く。今度はキャンセルの方法や手数料も合わせて問い合わせる。
 キャンセル料は50-100ドルくらいでモーリシャスの首都ポート・ルイにあるメインオフィスで出来るそうだ。


 これならば必要経費として自分でも納得出来るだろう。

 次に訪れたとき、ポート・ルイで余分な仕事が一つ増えるというのは仕方が無いと諦めるしかないのだろう・・・



 私はチケットをカードで購入し入国。時刻は既に夜。


 明日の出発を考えると自動的に空港泊決定だった。


 しかし。タンザニアでチケットを買った時、一番安牌だと思ったいたのがこのモーリシャスだったのにしょっぱなからこんな罠が張り巡らされていたなんて・・・

 夜、たった一人っきりになったモーリシャスの空港でまんじりともせずに眠れないままの一夜を過ごしながら私はこう考えていた。


 『モーリシャス、一番好きになりそうな国だったのに・・・』


 『これで・・・これでいきなりコモロ以下決定だ!』



 と・・・


注:買った高額チケットはその後無事にキャンセル、カードで買っていたのでキャンセル料が分かるまで時間がかかってやきもきしたが最終的には50ドルくらいだったのでそれほど被害を受けなかったのでほっとした


 写真は一晩明かしたモーリシャスの空港