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『占領を背負った男 上・下』北康利著(講談社文庫)を読んで

2009-04-30 06:40:18 | 書評
まるで、白洲次郎が戦後の日本を作ったような印象を持った。実に今後の国の方向性を決定づけるさまざまな重要な場面に白洲次郎が出てくる。

日本国憲法制定におけるGHQとの激しい応酬、吉田茂の懐刀として縦横無尽に動く姿(ただし本人は、吉田茂に仕えていたわけではない、吉田茂に物申していたという姿勢)、日米講和条約での重要な立ち回り、9電力会社への分割を主導、通商産業省の創設の中心人物など、上げればすべて戦後日本を形作るものばかりだ。

彼の主義の原点は、ケンブリッジにある。プリンシプル(原理・原則)を重視し、あくまで妥協せず彼の考え方を突き進むという生き方だ。だから、製鉄会社に外資を入れるなどという発想が出てくる。それが頓挫すると、銀座のクラブで、それを阻止した永野重雄氏と取っ組み合いのけんかだ。痛快といえば痛快だが、誰でもできる生き様ではない。

このような生き方ができる人物は稀有であり、維新の坂本竜馬的な人物といってもいいだろう。思うに、今の世の中でも彼のような人物が必要だ。特に、「茹で蛙」的な危険のある日本では、大きく体制を変える必要がある。こういうときに必要な人物ということだ。

人生を自分が生きたいように生き、爽やかに終えたという印象を持つ。思い残すことのない一生だったろう。遺書は、「葬式無用、戒名無用」。

『占領を背負った男 上下』北康利著(講談社文庫)

『マニュアルのつくり方・使い方』中産連-福山穣他著(実務教育出版)を読んで

2009-04-28 08:25:04 | 書評
これまでマニュアルらしいものは断片的にしか作ってこなかったのだが、最近になって業務マニュアルの必要性を強く感じるようになり、購入した本がこれである。どうもこの本は、業務マニュアル作りの標準的な教科書のようだ。初版が1995年で10刷を重ね、新版は2004年時点ですでに4刷。

この本は非常にわかりやすく、はじめてマニュアル化に取り掛かる人でも理解しやすく作られている。図解や実際のマニュアルの表が多く、自分で実際に進める際にも、その表の様式を利用すればよいので
負担が少なくなり、助かる。

仕事をする上で、マニュアルは基本ということをあらためて感じている。マニュアルというと、仕事が画一的になりよくないというイメージが強いが、業務を効率的に進め、新人を含めだれもが業務に入りやすくしておくことは、仕事をするうえでの土台だ。その上で始めて創造的なことや変化に対応できる経営ができるというものだ。

200数十ページの本だが、その奥にある部分は深いものがある。ビジネスマンであれば、一度手にとって見る価値は十分あるだろう。


『マニュアルのつくり方・使い方』中産連-福山穣他著(実務教育出版)

『自省録』マルクス・アウレリウス著(岩波文庫)を読んで―2

2009-04-27 08:52:29 | 書評
・ ただ自然にのみ支配されている者として君の(内なる)自然が何を要求しているかを観察せよ。次にそれを行なえ、動物としての君の自然がそのために損なわれる恐れのない限り、進んで行なえ。次に観察すべきは、動物としての君の自然が何を要求するかということで、そのために理性的動物としての君の自然が損なわれる恐れのない限り、これをことごとく受け入れるべきである。然るに理性的とはとりもなおさず市民的ということである。以上の原則を適用し、余計なことに気を使うな。
―まるで水が上から下に流れるように通る考え方だ。こういう生き方をしたら、これほど強いものはないだろう。

・ あらゆることにおいて理性に従うものは、悠然と構えていながら同時に活動的であり、快活でありながら同時に落ち着いているのである。
―そもそも自分の理性を作り上げることが前提だ。

・ 他人の過ちが気に障るときには、即座に自ら反省し、自分も同じような過ちを犯していないかと考えてみるがよい。
―これが皇帝が自らに語る言葉である。

・ 君を操っているものは君のうちに隠れているものであることを記憶せよ。それが言葉であり、生命であり、いわば人間そのものなのである。
―ここまで悟れるとは、はなはだ感心するばかりだ。

・ 私としては、あらゆる人にたいして親切と善意とを抱き、その人間自身には彼の過ちを示してやる用意を持つであろう。ただしそれは叱責するような態度ではなく、私の忍耐寛容を見せびらかすようなふうでもなく、率直に、親切にやるのである。そして何ごとに対しても怒りを抱かず、苦情を言わぬ心ばえの持ち主として神々の目に映ずるようでなくてはならない。

・ 誠実でよい人間というものは、強い香りを放つもののごとくあるべきである。誰でも彼のそばにいるものは、彼に近づくと同時に、いやおうなしにそれに気がつくようでなくてはならない。

・ 常に同一の人生目的を持たぬものは一生を通じてひとりの同じ人間ではありえない。・・・・我々もまた同様に公共的市民的福祉を目的とせねばならない。自己のあらゆる衝動をこれに向けるものは、彼の全行動を首尾一貫したものとなし、それによって常に同じ人間として存在するであろう。
―人生の指針とはまさにこういうことであろう。

・ すべて君が苦手だと思うものに慣れよ。なぜならば左手は習慣のないために他のあらゆる仕事には不器用なのに、手綱は右手よりもしっかり持つ。それはこれに慣れているからだ。
―苦手というものは、慣れると苦手でなくなる。

・ 我々の信念の実行に当っては剣憂士ではなく、力士のごとくあるべし。なぜならば前者は、その持ちうる剣を落とせば殺されてしまう。ところが後者にはいつでも自分の手があって、これを握り締めさえすればよいのだ。
―確かに、剣は道具に過ぎない。誰でも持てる。しかし手は、ひとそれぞれ違う。

・ すべては主観に過ぎないことを思え。その主観は君の力でどうにでもなるのだ。したがって君の意のままに主観を除去するがよい。するとあたかも岬を廻った船のごとく眼前にあらわれるのは、見よ、凪と、まったき静けさと、波もなき入り江。
―まるで詩のようだ。

・ 第一に、何ごともでたらめに、目的なしにやってはならない。第二に、公益以外の何ものをも行動の目的としてはならない。

・ 人生における救いとは、一つ一つのものを徹底的に見きわめ、それ自体なんであるか、その素材はなにか、その原因はなにか、を検討するにある。心の底から正しいことをなし、真実を語るにある。残るは一つの善事を他の善事に次々につないでいき、その間にいささかの間隙もないようにして人生を楽しむ以外にないのである。
―ここまで到達すれば、さぞ人生は充実することだろう。

・ 君の内なる自然の導くままに行動し、宇宙の自然の与えることを忍ぶ以外には何ごとにも重きを置くな。


『自省録』マルクス・アウレリウス著(岩波文庫)を読んで―1

2009-04-24 09:36:22 | 書評
2世紀の大ローマ帝国皇帝でありストア派哲学者でもあるアウレリウスが、原題「自分自身に」というように、人に見せるためではなく書き記されたものだ。養父ピウスとアウレリウスの治世時を、歴史家ギボンは「ローマ帝国をたゆみなき叡智と仁徳とをもって治めた。彼らの御代こそ大民族の幸福を統治の唯一の目標とせる歴史上唯一の時期であろう。」といっている。

確かに、この本を読んでみると、世間の騒々しさから解き放たれ、平静な心や清らかさが湧いてくる。

・ 突然人に「今君は何を考えているのか」と問われても、即座に正直にこれこれと答えることができるような、そんなことのみを考えるよう自分を習慣付けなくてはならない。
―邪なことや憎しみ、妬みなど考えていたら、即座に正直に答えることはできないだろう。
・ われわれは、あらゆる人の意見を守るべきではなく、ただ自然にしたがって生きる人の意見のみを守るべきである。
―一貫して貫かれている、自然という概念が登場する。
・ 隣人が何をいい、なにをおこない、何を考えているかを覗き見ず、自分自身のなすことのみに注目し、それが正しく、敬虔であるように慮るものは、なんと多くの余暇を得ることだろう。目標に向かってまっしぐらに走り、わき見をするな。
・ 「必要なことのみをせよ。また社会的生活を営むべく生まれついたものの理性が要求するところのものをすべてその要求するがままになせ。」なぜなら、これはよい行為をすることから来る安らかさのみならず、少しのことしかしないという安らかさをもたらす。というのは、われわれのいうことやなすことの大部分は必要事ではないのだから。これを切り捨てればもっと暇ができ、いらいらしなくなるであろう。それゆえにことあるごとに忘れずに自分に問うて見るがよい。「これは不必要なことの一つではなかろうか」と。しかしわれわれは単に不必要な行為のみならず、不必要な思想も切り捨てなければならない。そうすれば余計な行為も引き続いて起ってくる心配はないであろう。
―これは非常に大事な概念だ。無駄なことを排除することによる、得る平安と健全な思想形成。
・ すべて起ってくることはそもそもの初めから「全体」の中で君に定められた君の運命の中に織り込まれていることなのだ。
―最近どこかで聞いた言葉「起っていることはすべて正しい」に通じる。
・ 常に近道を行け。近道とは自然に従う道だ。
―「自然」という概念がここでも出てくる。
・ 生まれつき耐えられぬようなことは誰にも起らない。
―自然は、人間に絶えられないことは与えないということ。
・ 神々と生きること。神々とともに生きる者とは神々に対しつねに自己の分に満足している魂を示し、ダイモーンの意のままに何でも行なうものである。ダイモーンとはゼウス自身の一部分であって、ゼウスが各人に主人として指導者として与えるものである。これは各人の叡智と理性に他ならない。
―自然と神々は同義語だ。後に出てくる宇宙も同じ。
・ なん人にも悪しざまにおこないもせず、いいもせず。
―これが皇帝が言う言葉か。
・ 神々を敬い讃え、人間に善事を施し、彼らを「耐え忍び我慢する」。
―人生における「耐えること、我慢すること」の大切さを説いている。
・ 死ぬということもまた人生の行為の一つである。それゆえに「現在やっていることをよくやること」。
―死ぬことは、人生の出来事の一つと捉える。
・ 神々を畏れ、人を助けよ。人生は短い。地上生活の唯一の収穫は、敬虔な態度と社会に益する行動である。
―公益に貢献することを人生の目的にしている。
・ 自分の内を見よ。内にこそ善の泉があり、この泉は君が絶えず掘り下げさえすれば、絶えず湧き出てくるだろう。
―奥が深い言葉だ。
・ 人類はお互い同士のために創られた。ゆえに彼らを教えるか、さもなくば耐え忍べ。
―ここでも、生きるうえで、「耐える」ことが大切と説いている。
・ 矢の動き、精神の動きはそれぞれ違う。それにもかかわらず、精神が慎重に自己を省みているときやある考察に専念しているときには、矢の場合に劣らずまっすぐに飛んでその目的に向かう。
―自省や沈思黙考の大切さを説いている。

『自省録』マルクス・アウレリウス著(岩波文庫)

『最強営業メソッド』トニー・ゴードン著(アチーブメント出版)を読んで

2009-04-23 07:06:27 | 書評
「最強営業メソッド」トニー・ゴードン

この著者は、外見はふつうのオジサンだ。ところが、MDRTのTOT会長だ。いわば世界の保険セールスのトップ中のトップ。すごい人なのだ。

この本を読んでわかったことは、要は地道に信じたこと、決めたことを絶対にやるということ。「一貫した活動が一貫した成果を生む」ということばは、奥が深い。




保険の神様はこうして生まれた。

・ 仕事における本当の成功は、活動量を増やし、次に契約の単価の増大によって生産性を上げることです。

・ 私たちにとって成功の基礎は、どんなに厳しくても、継続的にアポイントメントをとるという決意です。

・ 何度も、何度も、何度も、納得する紹介がもらえるまで頼む。「紹介を頼むことは補足ではない。」

・ 日々の目標を立てる。一日毎の目標を立てればそれが責任になる。

・ 目標を細分化したことにより、毎日すべきことをこなさなければならないという緊張感を持つ。成功するか失敗するかは、日々の行いによって決まる。

・ 毎日こなすべき目標は、毎日4件の面談でも、毎日1件の成約でも、または手数料ベースでも構いません。自分に緊張感をもたらすものであればなんでも良い。

・ 一貫した活動が、一貫した成果を生み出す。



必ず紹介が生まれる唯一の瞬間

・ 紹介を生み出す最も簡単な方法は、すべてのお客様に、私たちを紹介することは彼らの義務だと思っていただくことだ。一度紹介が出だしたら、もう2度と“見知らぬ見込み客”に会うことはなくなる。

・ 最も大きなポイントは、いつ紹介を求めるかです。

・ 見込み客は、私たちの専門家としてのアドバイスを受け入れた。見込み客は顧客となり、今度は私たちがその顧客に対し助けを求めている。見込み客の複雑な資産に関する問題を解決した後に、私たちも次に会う人がいないという問題を抱えていることを伝えなければならない。

・ 紹介を切り出す最もいいタイミングは、契約のときだ。第1の理由は、まず困難に立ち向かうには早いに越したことはない。第2の理由は、契約のときというのは、私たちが多大の影響力を持っているときだからだ。その時こそ、私たちがいつ電話しても紹介してくれるように顧客を教育すべきベストのタイミングだ。

・ 紹介を頼むセリフ、そのときの会話

「ジョージ、知っての通り私は個人的に紹介された人だけをお客様にしています。本当に自分が誠意をもって、心を込めてサービスできる人だけをお客様にしたいと思っているのです。そういう意味で、今日、あなたに会うことができて本当に良かったと思っているのです。私は企業家として自分でビジネスを営んでいる人、あるいは税金を払いすぎていると不満に思っている人に会いたいのです。」紹介先について最初の面談で入手した情報を活用する。

  「私と30分くらい会って話をさせてもらいたいということと、その時間は彼にとって非常に有意義な時間になることだけ伝えてください。」

・ 時には紹介をもらうことが契約を取るのと同じくらいむずかしいこともあります。紹介は契約と同じくらい重要なので当たり前です。

・ 紹介された見込み客にはできるだけ早く連絡をとる。



成功率80%を実現する新規アプローチ法

・ 生産性の向上は、常に活動量の増加努力を上回る。いいかえると、どれだけ活動量を増やしても、必ずそれ以上の結果が生まれる。

・ 紹介の場合のアプローチ法

● 私の名前に聞き覚えはありませんか?―形式ばらずに、好意的に

● おや、それはがっかりです。―同情してもらえるように

● あなたを高く評価していましたよ。―相手をほめる

● 私の仕事内容を紹介させていただくために10分間だけお話をさせてください。―おどしたり高圧的にならずに

● 今度私が近くに行く時に10分間だけです。―形式ばらずに、おどさずに大きな要求しない

● むすびは、「月曜日の午前10時か、水曜日の午後2時のどちらがご都合がよろしいですか?」

これらの言葉は、見込み客が「はい」をいいやすいように練られたものだ。

・ 「何のお話ですか?」と尋ねられたとき、「そうですよね。ジョンさんには私のことは何もお話していませんでしたね。私は金融関係の仕事をしています。お客様にお金を活用する方法を提案しています。財産を築き、節税する提案です。」

・ 電話の目的は、アポイントメントをとることが目的。アポイントメントを成立させようと勇気をもって話の焦点を絞るほど、成功率は高くなる。


YESを引き出すプレゼンテーション

・ 見込み客は商品を理解して契約するのではなく、理解したと思って契約する。

・ 私は、自分のアドバイスが顧客にとって技術的に正しいという自信のもとに、10歳の子どもでも理解できるようにプレゼンしている。

・ 忘れてならないのは、自分がしゃべっている限りは全く進展がなく、相手の話を聞くことによって始めて進展があるということだ。

・ 契約成立のポイントは、何をいうかではない。見込み客が私たちに何を伝えるかにある。最も重要な情報は、数値の情報ではなく、家族を、仕事を、そして社会的責任をどう感じているかということだ。こういうフィーリングの部分が相手を理解するためにとても大切だ。

・ 大切なのは、自分が使おうとする話法に慣れておくことだ。新しいアイディアに出会ったら、顧客に使う前にまず練習する。言葉を選び、どこで何を強調するべきかをシミュレーションします。使う前にその考え方に慣れておきたいからだ。

・ 私に向けられる「断り」は断りと思っていない。断りは、何かをしないための言い訳です。見込み客は「NO」といっているのではない。彼らのできる精一杯の表現方法で、「もっと情報が欲しい」といっているに過ぎない。



YESを引き出すプレゼンテーション・トーク

・ あなたの年金ではごみを集めている人と同じですよ。

・ なぜって、この年金ではジョークみたいなものですよ。

・ 現在、銀行などに預けられているお金の大半は、そこに預けられている正当な理由があるわけではなく、もっと適切な場所に資産を移すという決断を誰もしなかったために単にそこにおかれているだけで、このような行為は「怠慢」「ものぐさ」ともいうことができます。

・ 無数にある金融商品を勉強して理解することはとても難しいことです。

・ 宣伝されている商品はすべて、二つしかないお金の使い道のバリエーションでしかありません。一つ目の選択は、銀行などに固定利率で預け入れることです。元本は保証されています。しかし歴史的に見ると、預金されたお金はその購買力を維持できません。インフレでその本来の価値を失っていきます。二つ目の選択は投資です。元本が減らないという保証はありませんが、歴史的に見ると、投資されたお金は長期的にはもとの購買力以上の価値になります。いいですか、ジョージ、お金に対するリスクとは、短期間に貨幣価値が変動することではなくて、長期間に購買力が減少することを意味するのです。

・ 歴史的に見てもインフレを回避し、なおかつ利益の期待できる興味深い方法があります。

・ 投資の小売ではなく卸売りができるとしたらどうですか?

・ 金額の大小にかかわらず私たちはできるだけ簡単な説明を心がけるべきだ。面白いことに簡単な説明こそ、人の気持ちをとらえます。-「私か言いたかったのはつまりこれだけです。」―ジョウゴの話

・ あなたは長年にわたって銀行や証券会社の店舗維持や社員の高給のために何度もお金を払っているのです。つまり彼らは長年にわたってあなたから儲けているのです。私のようなアドバイザーは、一等地に店を構える必要はないですし、適切な給料を取っているだけです。ですからあなたから儲ける分は、銀行より少なくて済みます。つまり、あなたはより多くの利益を得ることができます。



確信とともにあるクロージングが、顧客と自分を勝利に導く

・ 私たちの仕事は見込み客の教育ではありません。見込み客に対して「保険料を払ってください」という一言を言う勇気がなければ、世界一見込み客探しに長けていても、何の意味もありません。本当に必要なのは、顧客に勇気を出して加入を求めることです。適当なタイミングで、さらっと、「ジョージ、小切手帳を切ってください。その間に書類を記入しておきます」ということ以上のことはないのです。

・ セールスには敗者も勝者も存在しません。セールスと見込み客が、両方敗者か勝者かだけだ。私たちの仕事はできるだけたくさん、見込み客を勝たせてあげること。

・ クロージングは自然な結論になるべきだ。面談の最後に何かしら約束を取り付けることは最も理にかなっている。契約するであれ、次回の面談をするであれ。

・ 「無理に勧めても、お客様は加入しない」といいますが、私に言わせれば、私たちは勧めなかったら見込み客は一生保険に加入することはない、ということです。私たちの売れるものが、知識と時間しかないならば、できるだけ早くはっきりと決断してもらうことが重要です。

・ クロージングには、こちらの態度が重要です。アドバイザー、すなわちプロとしての態度が一番のクロージングなのです。

・ クロージングのときの態度は、セールスにおいてさほど重要ではありません。前提が最も重要です。見込み客を知り、信頼を築き、ニーズを探すことです。さらに重要なのが見込み客の欲求や願望や希望を探すことにできるだけ時間を費やすことです。そうすればクロージングに費やす時間は少なくて済みます。

・ プレゼンの間は、ずっと見込み客の理解、あるいは同意のサインを探し続けるべきだ。これをプレゼンの早い段階から実行する。-「ジョージ、納得できていますか?おわかりですよね?」言葉自体が重要ではない。重要なのは見込み客から確認を取ることだ。

・ 面談のとき、区切りのいいところでこんなことをいう。「ジョージ、答えていただきたい質問は二つだけです。一つ目は、私の言ったことは理にかなっていると思いますかということです。」「そして二つ目は、さらに重要なことですが、お互いのことをどう感じているか、ということです。ジョージ、これから私たちはこの仕事を通じて、長い間関係が続きます。・・・・今、私はあなたと長く付き合っていけると感じています。あなたはどう感じていますか?」

・ こうして、話を理解しているかを確認し、次に全体を個人のレベルといった感性の世界へと移します。私は、できるだけリラックスして、親しい雰囲気ができるように心がけている。そして最も究極の結論は、お互いをどう感じているかということだ。

・ どの方法も失敗し、言うことを言い終えても、見込み客にまだ時間が欲しいといわれたら、まず再訪の約束を取り付けること、これが必須です。私は再訪の約束を手帳に書くまで帰りません。

・ 「ジョージ、提案を進めたくないとすれば原因は何ですか」

・ 見込み客を納得させ、行動させるのに、どこまで押すべきか、というものがあります。その答えは私にはわからないが、私は見込み客を何年にもわたって強く押してきたが、それを無理やりと感じる人はひとりもいませんでしたし、追い出されたり、「止めて欲しい」といわれることもありませんでした。私はここまでが限界だと感じていても、顧客はそうは感じていないのです。

・ 私たちは見込み客より、はるかに敏感になっている。ですから、論理的な結論へと向かうことをおそれてはいけません。私たちが勧めているものは正しいものだという確信をもち、心からアドバイスをしていれば、私たちの誠意や熱意をいやだと思う人はいないでしょう。

・ クロージングをためらうことは、見込み客に私たちが勧めているものを私たち自身が信じているのかという疑問を呼び起こします。ですからクロージングは、何度も何度も何度も繰り返します。そして大事なことは、見込み客に「お客様になってください」といえる回数が多いほど成功に近づくのです。

・ これでセールスサイクルを一周しました。しかし、これで終わりではありません。輪には始まりも終わりもないのです。これを決まった手順としてコンスタントに行なっていかなければなりません。めでたく成約した暁には、セールスサイクルの説明で最初にお伝えしたポイントに戻り、紹介をいただくためのプレゼンテーションに移る。

・ 紹介こそが私たちのビジネスの命の源なのです。



生産性を上げるセールス・アイディア

・ どうしたら生産性を上げられるか―もっと多くの人に会う。経験が増え、紹介を依頼する機会が増え、紹介される人も増える。さらに、取り扱い金額を増やす。クロージング率を高める。

・ 「今日やるしかない」と追い込む。―1日ごとの目標を立てるほど、成功率を劇的に上げる方法はない。「今日やるしかない」と追い込むことが、毎日の仕事の原動力となり、生産性の向上に最も有効。

・ 見込み客を限定する。―紹介して欲しい範疇の見込み客を限定することで、徐々に、かつ劇的に市場を格上げすることができる。

・ 紹介者バンクを築く―紹介を依頼する活動を増やしていくと、紹介者バンクを築き、そのなかで最良の人を選ぶことができるようになる。

・ 「他のお客様はこうしてますよ。」

・ 私たちの成功は自分自身に対する信念、自分自身に対しての評価にかかっている。私たち以上に、私たちを高く評価してくれる人はいません。



偉大な未知の世界へ

・ 「知識は必要である。しかし、成功のためには熱意が不可欠だ。」

・ 否定的な考えは排除すること。私たちは何をおそれているかというと、それは私たち自身の自尊心です。恐れは心構えの問題です。



成功は選択から始まる

・ 約束を守ることは、成功する人の条件として重要です。顧客に対する約束、そして自分自身の目標に対する約束です。自分自身が目的から目をそらすことは許されません。成功する人は集中力を高め、目標と目的がはっきりと定まっています。仕事は、顧客と自分自身の目的を遂げるための手段と考えているのです。

・ 成功は、目的を定義し、仕事のなかに取り入れ、その仕事を行なうように自分を律することができる人に訪れます。

・ 本当に並外れた人など、この業界にはいません。並外れた夢を見て、並外れた業績に向けて自分自身を律することのできる、ふつうの人々がいるだけです。

・ 成功の前にたちはだかる壁を作っているのは、私たち自身のイメージです。自分たちが望む成功を手に入れるためには、成功が私たちのものになると信じる勇気をもつことです。


『最強営業メソッド』トニー・ゴードン著(アチーブメント出版)


『流れる星は生きている』 藤原てい著(中公文庫BIBLIO20世紀)を読んで

2009-04-22 10:17:23 | 書評
以下アマゾンの紹介文:
昭和二十年八月九日、ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎。夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言語に絶する脱出行がここから始まった。敗戦下の悲運に耐えて生き抜いた一人の女性の、苦難と愛情の厳粛な記録。戦後空前の大ベストセラーとなり、夫・新田次郎氏に作家として立つことを決心させた、壮絶なノンフィクション。

母として3人の子を抱えて、満州から日本へ帰る行軍は、これほどの苦しみがあろうかというほどすごいものがある。子どもを守り阿修羅のごとくになって生き抜こうという生命力の強さは感動ものだ。この書は、著者が日本に帰国後健康が優れない中、遺書代わりにかかれたものであるため、まさに真実が書かれているとみていい。この子どものうちの一人が「国家の品格」を書いた数学者の藤原正彦氏だ。ご本人は、この当時の記憶がないという。

人間、極限の状態になると、本性が見えてくるということがよくわかる。いっしょに行軍する人々の中では約束したことは守らず、貸したお金は忘れた振りして返さず、あるいは詐欺まがいに金儲けを考え、自分や家族かわいさのあまり他の人をふるい落とすというような出来事が頻発する中、父がおらず母として一人で、3人の幼少児を引き連れ逃げ延びる姿は、鬼神のようだ。母としての本当の強さを感じる。著者は90歳を越え、今も健在だ。

『流れる星は生きている』 藤原てい著(中公文庫BIBLIO20世紀)


『超越瞑想入門』マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー著(読売新聞社)を読んで

2009-04-21 13:05:19 | 書評
この本は、いわば瞑想の元祖といわれる著者が書いた本だ。瞑想というとなにやらオカルトめいた雰囲気を感じる向きもあるかもしれないが、それは瞑想の意味を知らない人が抱く大きな誤解だ。きっと瞑想をすることにより、新たな風景が開かれることだろう。という小生も、昨年から始めたばかりでまだ初心者だが、その計り知れない効用を感じているひとりだ。

この本の中では、瞑想の具体的な方法については書かれていないが、それがもたらす心への影響について詳しく書かれている。具体的な方法は、各地域のマハリシ総合研究所の支部(本書にリストあり)にて学ぶとなっている(有料)。なお、具体的な方法については、『仕事に疲れたら、瞑想しよう。』(ソフトバンク新書)を参照してもよいだろう。

とにかく、瞑想がどういう思想に基づいているか、それがもたらす心への影響をエッセンスでお送りしよう。

・ 私たちの心は、宇宙の無限の知性を表すことができる。
・ すべての人は、苦しみの全くない人生、『成就』の最高のレベルにまで高められた人生を生きるために生まれている。
・ 無限の愛の流れと、各人の幸福と進化を維持するため、偏在する宇宙の「主宰者」は、親切にも万物の中にその本質として内在している。
・ プラーナとは、外に表れ出ようとする「存在」の力です。それは内に隠れているものが外に現れようとする傾向です。
・ プラーナは、抽象的で絶対的な「存在」の推進力であるということができます。
・ 「存在」は内に隠れた絶対の存在です。それが振動して外に現れようとする、その傾向のことをプラーナといいます。プラーナとは「存在」の力です。
・ プラーナは「存在」の本性から生まれるものです。
・ 内に隠れた「存在」の海に、心の波を生み出す風の力のような作用をするのがカルマです。
・ カルマをよく調べると、心(行為者)がなければ、カルマすなわち行動は生じないということがわかります。カルマとは行動または活動という意味です。
・ 心はカルマから生まれてカルマを創り、カルマは心から生まれて心を創る、ということです。
・ プラーナは宇宙知性の最初の現れです。したがって、個別の心は、宇宙の心すなわち純粋知性の反映であるということがわかります。
・ 個人生命と宇宙生命はともにカルマの力により創造され、維持され、解体されるということです。
・ 今まで欠如していたのは、「存在」の価値とカルマの領域における活動の価値とを調和させる技術なのです。
・ 行動の技術に必要なことは、まず活動をゼロに落として、そこから行動することです。
・ 同様に、心の活動を静止状態にもっていき、その点から行動を起こせば、最小のエネルギーで済みます。
・ 人は行動の領域に生きながら、同時に絶対「存在」の至福意識の中で永遠に自由の生命を営むことができます。この世界に十分な興味をもって行動しながら、同時に神意識の中に生き、それによって、絶対実存の状態と総体実存の状態の二つの価値を統一することが可能なのです。
・ 「存在」の超越状態は、視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚のすべてを越えたところ、あらゆる思考、あらゆる感情を超えたところにあります。
・ 注意を超越「存在」のレベルに導く過程が、超越瞑想のシステムなのです。
・ 超越瞑想を学ぶには、瞑想を正確に指導しその経験をチェックするための訓練を受けた、瞑想の熟練者による指導が必ず必要です。
・ この瞑想を始めると、エネルギーは増大し、頭脳は明晰になり、健康も向上します。
・ 生命には二つの面、すなわち絶対と相対があり、生命の絶対面は純粋意識、永遠実存の普遍で絶対の大海であり、相対面はその絶対面が外に現れたものに他ならない。
・ 自分の全潜在力を活用しなければ、人は生命の目的を成就することはできません。いろいろなことで悩むのは、自分の心の意識の力、すなわち内側に所有している大きなエネルギーを活用していないからです。
・ 生きる技術とは、心がその内側に絶対「存在」の永遠の状態を養うことです。
・ 一日の活動は、体や神経系を過度に疲れさせるようなものであってはなりません。過度の活動のほかに、無分別に行なう飲食も神経系を鈍くします。
・ 心は瞑想中、超越への途上で通過していく感覚のレベルを活性化するのです。
・ 五感の全範囲が活性化されると、「存在」が五感のレベルにやってきます。そして、その結果、五感の知覚能力が増大します。五感はますます大きな幸せを経験できるようになります。
・ 最小のエネルギー消費で話す技術は、環境に調和する想念を表現することにあります。実際には次のようにすればよいでしょう。
―そのときにあった話し方をする。
―環境に合った話し方をする。
―周囲の人の意識の需要のレベルにあった話し方をする。
―自分自身の状況に合った話し方をする。
―衝動に駆られて話さない。
・ ある人の進化の程度は、その口から出る一つの言葉からでも判断がつくのです。
・ 話す技術とは、ありのままに考え話しながら、出てくる言葉が気持ちよく、柔らかで、正しい性質のものになる技術です。
・ 計画が優れたものであれば、行動に要する時間は少なくてすみ、最小のエネルギー消費で最大の結果を環境にもたらすことができるでしょう。
・ 行動を始める場合、まずその行動の目的を心に定めることが必要です。
・ 目的から横にそれないようにすることが大事です。目的の固定は、あらゆる行動の成功を支える中心的な柱であるといってもよいでしょう。また、目的の固定は、行動の進行を促す推進力の役割を果たします。
・ 目的の固定という能力を養おうと目指すとき、人生のほかの面が見えなくなるほど一つのことに熱中してしまってはならない。
・ 行動を成功に導く最も重要な要因は、行動する人自身の純粋性です。
・ 人に接する基本原則は、与えることでなければなりません。誰かに会いに行くときは、その人に自分は何を与えられるかを考えなさい。
・ 無関心が、人生における否定的な状況に対して用いるべき武器なのです。
・ 存在の技術とは、私たちの人生を高いレベルにおくことによって、自然に、無心に、調和と喜びのうちに、よい対人関係をつくるようにするものです。人に接する場合、無理で不自然な振る舞いは絶対によくありません。


『超越瞑想入門』マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー著(読売新聞社)


『フランクリン自伝』(岩波文庫)を読んで

2009-04-20 10:58:20 | 書評
この本は、昔から読まれてきた名著だ。フランクリン死の前年まで丁寧に書き記したものだ。そもそもの動機が、息子に人間としての生き方を言い残しておきたいという気持ちで書かれているので、読む人にとっても大変示唆に富む内容だ。また、当時のアメリカの状況が手に取るようにわかり、独立前の植民地としてのアメリカと宗主国イギリスとの関係も大変興味深い。

小生実は、フランクリンのことは、独立宣言を起草した建国の主要人物程度しか知らず、米ドル札には肖像が載っているなー程度だった。しかしながら、この本を読んで、いかにフランクリンが純粋な献身的精神をもって、初期アメリカの国づくりに貢献したかがよくうかがえた。大変読み応えのある本だ。今の歳になって読むのもやや遅いという感もあったが、読んでよかったと思っている。

フランクリンが献金活動を始めると、どんどん金が集まるのだ。とにかく人望が厚い。ある人が、献金を募り始めると、人は、フランクリンは何て言っているか?と尋ねるそうだ。一つのプロジェクトを成し遂げるに、どういう行動をとったらいいかなど、(息子に教えているように)事細かに書き記している。いわば処世訓でもある。

・ いきなり人の説に反対したり、頑固に自説を主張したりする今までのやり方を止め、(ソクラテスのいう)方法に従って謙遜な態度でものを尋ね、ものを疑うといった風を装うことに決めた。
・ 異論が起こりそうに思えることを言い出すときには、「きっと」とか、「疑いもなく」とか、その他意見に断定的な調子を与える言葉は一切使わぬようにし、そのかわりに、「私はこうこうではないかと思う」とか、「私にはこう思われる」とか、「これこれの理由でこう思う、ああ思う」とか、「多分そうでしょう」とか、「私は間違っていなければこうでしょう」とか言うようにしたが、この習慣は、自分が計画を立ててそれを推し進めていくにあたり、自分の考えを十分に人に呑み込ませてその賛成を得る必要があった場合に少なからず役に立ったように思う。
・ いったい談話の主要な目的は、教えたり教えられたり、人を喜ばせたり説得したりすることにあるのだから、ほとんど決まって人を不快にさせ、反感を惹き起し、言葉というものがわれわれに与えられた目的、つまり知識なり楽しみなりを与えたり受けたりすることを片っ端からダメにしてしまうような、押しの強い高飛車な言い方をして、せっかくの善をなす力を減らしてしまうことがないよう、私は思慮に富む善意の人々に望みたい。
・ 実際、人に物を教えようとするときに、押しの強い独断的な言い方で自分の考えを述べたのでは、人は反対したい気持ちになって素直には聞いてくれないだろう。
・ また、他人の知識から教えを受けて賢くなりたいというのに、しかも現在の考えを固執するようなことを言っては、議論を好まぬ謙遜で思慮ある人なら、おそらく間違っていてもそのままにしておいて直してはくれないだろう。
・ さらにまたこういうやり方では、聞き手に好感を与えて喜ばせたいと思っても、あるいは相手を説得してその同意を得たいと思っても、まず無理というものであろう。
・ 英国詩人ポープによれば、
―人に物を教えるには、教えているような風をしてはならない。
―その人の知らぬことでも、忘れたことのように言い出さねばならない。
―確かなことでも確信なげに話せ。
―不遜な言葉には弁護の余地がない。謙遜が足りないのは分別がないから。
・ なにかある計画を成し遂げるのに周囲の人々の助力を必要とする場合、有益ではあるが、自分たちよりほんのわずかでも有名になりそうだと人が考えやすい計画だったら、自分が発起人だという風に持ち出しては、事はうまく運ばない。そこで私はできるだけ自分を表面に出さないようにして、この計画は数人の友人が考えたことで、自分は頼まれて皆から読書家と思われている人のところを話して廻っているのだと説明した。この方法をとってからというもの、仕事は一段と円滑に進んだ。
・ 私が子どものころ父がいろいろな教訓を説いてくれた中でも、「汝その業に励む人を見るか、かかる人は王の前に立たん、かならず賤しき者の前に立たじ」というソロモンの教えをたびたび繰り返してくれたもので、その時分から私も勤勉こそ富と名声を得る手段だと考え、これに励まされていたのである。もっとも私は文字通り「王の前に立つ」ようになろうとは夢にも思っていなかったが、後にそれは事実となって現れた。というのは、私は5人もの王の前に立ち、ことにそのひとり、デンマークの王とは食事を共にする名誉を得さえしたのである。
・ 十三徳
第一 節制 飽くほど食うなかれ
第二 沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
第三 規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
第四 決断 なすべきことはなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
第五 節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
第六 勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
第七 誠実 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出だすこともまたしかるべし。
第八 正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与えるべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。
第九 中庸 極端を避けるべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも。激怒を慎むべし。
第十 清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
第十一 平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
第十二 純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行ない、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
第十三 謙譲 イエスおよびソクラテスに学ぶべし。

・ (ここで、フランクリンは手帳を作り、この十三徳を一ページずつ割り当て、一週間ごとに一つの徳を集中して高めるようにする方法を使っている。おそらく20歳台で作った心構えだ。)
・ (この手帳には、これらの徳を達成するため、フランクリンは先人の徳の大事さを語った言葉や祈祷文を書き記している。)
・ ローマ政治家カトーの言葉―「われこの信念を守り続けん。我らの上に、まこと、神のましまさば、神は徳をこそ嘉したまわめ。しかして神の嘉したまうもの、あに幸いならざらんや。」
・ ローマ哲学者キケロの言葉―「おお、汝、人の世の道しるべなす学問よ。徳を求めて倦まず、もろもろの悪徳を駆遂する学問よ。汝の教えに従いて有益に過ごせる一日は、罪に包まる永生に勝れり。
・ ソロモンの箴言―その右手には長寿あり、その左手には富と尊貴とあり。その道は楽しき途なり、その径すじはことごとく平康し。
・ フランクリンが作った、神の助けを得るための祈祷文―おお、全能の神よ。恵み深き父よ。慈愛深き指導者よ。わが誠の道を見出すかの知恵を増やさせたまえ。その知恵の指し示すことをなしとぐる決意を強めさせたまえ。われと同じく汝の子なるものに対するわが心からのつとめを嘉したまえ。そは汝のたえざる恵みに対してわがなしうる唯一の報いなり。
・ 18世紀英国詩人トムソンの祈祷文―光と命の父、汝、至善の神よ。
  願わくはわれに善きことを教えたまえ、
  御自ら教えたまえ。
  愚かしきこと、空しきこと、悪しきこと、
なべての卑しき仕業よりわれを救いたまえ。
知恵と心の安らぎと清き徳もて、わが魂をつちかいたまえ。
聖にして、実あり、萎ゆきことなき
祝福をわれに与えたまえ。
・ さらには、手帳の一ページには、規律の徳に付した戒律で、仕事はすべて時を定めてなすように命じているので、一日24時間をどう使うかを定めた次のような計画を書き記している。

朝 設問(今日はいかなる善行をなすべきか)
5~7時―起床、洗顔、「全能の神」への祈祷。一日の計画を立て、決意をなすこと。現在の研究を遂行すること。朝食。
8~11時―仕事

昼 12~1時―読書、または帳簿に目を通すこと。昼食。

午後 2~5時―仕事

晩 設問(今日はいかなる善行をしたか)
6~9時―整頓。夕食。音楽、娯楽、または雑談。一日の反省。

夜 10~4時 睡眠

・ 正直と誠実は、貧しいものが立身出世するのに、最も役立つ徳である。
・ 謙譲の徳の効用を説いて―「確かに」とか、「疑いなく」など、断定的な見解を表す語句は一切使わぬことに決め、そのかわりに、「私はこう思う」とか、「こうではないかと思う」とか、「孝行だろうと想像する」とか、「現在のところ、私にはこうだと思われる」というような言い方を用いることにさえした。間違いだと思われることを人が主張したときでも、頭から反駁したり、いきなりその主張の不当を指摘して快をむさぼるようなことは止め、これに答えるにも、まず最初に、時と場合によっては君の意見も正しいだろうが、現在の場合はどうも違うようだ、自分にはそう思えるが、などと述べるのであった。かように態度を変えた効果は、たちまち現れ、人と話をしても以前より気持ちよく運ぶようになった。謙譲な態度で自分の意見を述べるので、かえって容易に人に受け入れられ、反対も少なくなってきた。自分の意見が間違っている場合でも、そんなに恥をかかないですんだし、たまたま自分のほうが正しい場合には、いっそう容易に人を説得してその誤りを改めさせ、自分の説に同意させることができるようになった。
・ 私が覚えていることわざに、「一度面倒を見てくれた人は進んでまた面倒を見てくれる。こっちが恩を施した相手はそうはいかない」という古いのがあるが、これはこのことわざが本当だということを示す一例である。これを見ても分かるように、他人の敵意ある行動を恨んでこれに返報し、敵対行為を続けるよりも、考え深くしてそれを取り除けるようにする方がずっと得なのである。
・ 私は、「はじめの百ポンドさえ溜めてしまえば、次の百ポンドはひとりでに溜まる」ということわざの真実であることを実際に経験した。金というものは本来繁殖力の強いものだ。
・ 人間の幸福とは、時たま起こるすばらしい幸運より、日々起ってくる仔細な便宜から生まれるものである。たとえば、貧しい青年に自分で顔をそり、かみそりを整頓しておくことを教えてやるのは、1000ギニーを恵んでやるよりも、その男の生涯の幸福に寄与することが大きいであろう。
・ 人間は何かやっているときが一番満足しているものである。


『フランクリン自伝』(岩波文庫)

『バフェットの財務諸表を読む力』メアリー・バフェット&デビッド・クラーク(徳間書店)を読んで

2009-04-17 11:24:08 | 書評
世界最高の投資家といわれるウォーレン・バフェット。一体どのようにして5~6兆円といわれる富を築いたか。だれもが知りたいだろう。そしてその秘密の一端がこの本の中にあるのは、間違いない。バフェットは一日中、SEC提出の年次報告書を読んでいるという。そして彼に言わせれば、あまりにもたくさん年次報告書を読んでいるので、時間がいくらあっても足りず、「もっと早く読みたい。」というのだ。

バフェットの財務指標を読む力は、驚くべき記憶力と分析力が、そこにあっての話であるから、一般の人がまねしてもなかなかうまくはいかないだろうが、投資をどういうスタンスで行うべきかという点だけでも、この本から学べば十分価値がある。

『バフェットの財務諸表を読む力』メアリー・バフェット&デビッド・クラーク(徳間書店)