私を迎えに来たのは、若くて美しい男。
彼は、父の恋人だった。
■監督 犬童一心
■脚本 渡辺あや
■キャスト オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯、歌澤寅右衛門、青山吉良、柳澤愼一、
井上博一、森山潤久、洋ちゃん、西島秀俊、高橋昌也、大河内 浩、
□オフィシャルHP http://www.himiko-movie.com/
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★★
なんだか不思議な感覚の映画でした。 それはゲイの世界がどういうものかわからないせいも
あるかもしれませんが、 でもそんなことは関係なく、やや別世界に身をおいた各々の登場人物の
人間模様の局面をこの映画は鋭い視点と柔らかいわかりやすい表現で描いた作品には
違いありませんでした。
ゲイの父に母と自分を捨てられ、借金を抱えながら昼夜働きどうしで苦労してきて、怨んでいた
その父も癌で死期が近づいていることに心の置き場のない娘・沙織を柴咲コウは上手に演じている。
また不思議な魅力の父の恋人・晴彦にもにも近からず遠からずで、容易に受け入れることができない
今の状況と閉ざした心をどうすることもなく、彼の誘いで父が買った「メゾン・ド・ヒミコ」(元ラブホテル)を
訪ね、そこで生活するゲイたちとの生活の中で徐々に心を開いていく。 認めたくはないけれど、
心のどこかで受け入れていく反面、父親にはなかなか心を開けない。 微妙な心の動きを無表情ながら
演じていく柴崎コウは今までと違った演技の形を表現して見せた。
オダギリジョーも決して上手な役者ではないが、こういう微妙な演技は上手だなぁと感じる。
まして今回はゲイの世界。 彼にも未知な世界かもしれない。 男であって男を愛す。 沙織と接触し、
互いが少しずつ距離を縮めて行く中で、彼女を愛そうとするが、その想いも逆に自分の本当の姿、
心を再確認することになってしまう。 何が年上の男を愛せたのかはよくわからないが、
少なくてもこの映画での彼は、柴崎コウ以上に演技の幅を広げたことは事実だと思う。
他のゲイの人たちとの会話の中に、実はこれからの高齢社会の種々雑多な問題提起と、
ゲイを差別視することの人間としての哀しさと、またその世界に入るキッカケとなる少年の心と、
人間として人を好きになると言うことの普遍さに、色々な局面で考えさせられる映画だった。
犬童監督の描く世界は『ジョゼと虎と魚たち』、『死に花』(このあと『タッチ』は観る予定)しかしらないが、
他の監督さんと一線を画した視点と表現方法を持った監督だと思う。 それは実に人間臭さが全体を
覆っている。 むき出しの感情ではなく、秘めたる人間の根底にある心情を上手く描き出す監督さんだと
僕は思う。 少なくてもゲイの世界のこの映画を、こういう風に仕上げてしまう監督さんはなかなかいない
だろう。 深く掘り下げてしまうと映画を駄目にしてしまう恐れのある、ギリギリのところでこの映画は
成り立っているような気がする。 そのテーマの好き嫌いは別として、よく出来た映画だと思える1本である。
そして最大の見所はやはり監督自身もこの人と言った、田中泯。 彼の存在がこの映画のポイントである。
『たそがれ清兵衛』、『隠し剣、鬼の爪』とその演技は誰もが評価しているところだが、今回は今までと
180°色を変え、難しい役どころを見事に演じている。 今までの彼の映画に共感した人には、この映画は
賛否両論、意見が分かれるかもしれないが、存在感のある彼の演技とセイフに見え隠れする男とか父親とか、
そんなところを感じ取ってもらえれば、この映画を観る価値はあると思う。 死期が近づいたある日、
娘・沙織との会話の中で、「アタシ、あんたが好きよ」と言った彼の言葉は非常に印象的だった。
この脚本を書いた渡辺あや氏、彼女は35歳で二児の母だそうですが、いい脚本を書く人ですね!
『ジョゼと虎と魚たち』や『約三十の嘘』も彼女の脚本です。 次の予定があるのだとしたら、
彼女の脚本作品は観てみたい気がします。
なかなかこの映画のことを書くのって難しいですね?
思ったことの半分も書けてないような気がします(笑) ?!
いつもTBありがとうございます。
この映画、ゲイという世界は置いといて、
親子の間には憎みあっていたとしても意思の力が
及ばない所で繋がっているのかなあと思いながら
見ました。
早速感想を読ませていただきました。
そしたらますます観たくなって、地元公開まであと一ヶ月もあるのに我慢できなくなってきました~~。
cyazさんの評価も良いようなので、ホッとしています。
オダギリ評も気になっていましたが、これまた褒めていただいて、期待が高まってきました。
彼の代表作になるといいなぁなんて思っています。
『ジョゼと虎と魚たち』をこの間観て、すごく良くって。
楽しみです。
ところで、『死に花』はいかがでした?
友人はいまいちって言ってたんですが・・・。
>意思の力が及ばない所で繋がっているのかなあと思いながら見ました
なるほど。
でも、長い間の溝なんて本当の親の死に際してはなくなってしまうのではないでしょうか? いやなくなって欲しいものです。 多くを語らずそのあたりはこの映画で描かれていたような気がします。
>地元公開まであと一ヶ月もあるのに我慢できなくなってきました
そうなんですか(笑)?東京まで遠征しますか~^^
>cyazさんの評価も良いようなので、ホッとしています
いつもヒヤヒヤなコメント書いているのですいません(笑)
脚本がしっかりしていて良かったですよ^^
ご覧になられたら、また感想聞かせてくださいね~♪
>『ジョゼと虎と魚たち』をこの間観て、すごく良くって
そうですか、脚本家も監督も一緒なので、是非楽しんで観てくださいね^^
>ところで、『死に花』はいかがでした?
発想と着眼点は面白かったのですが、イマイチ映画には厚みとサプライズは無かったですね(笑)
「ゲイの世界を深く掘り下げてしまうと、映画を駄目にしてしまう恐れのある、ギリギリのところでこの映画は成り立っている」というご意見には、私も同感です。
でも、公式HPの掲示板を見ると、それについての不満というか批判もずいぶんありますね。
田中さんのヒミコは本当に威厳があって立派だったと思います。
少ない台詞と動きで圧倒的な存在感でしたものね。
不思議に浮遊感のある作品だと思いました。
ゲイの世界をわかるわからないは観る側に任せて、しっかりした視点でもってこの映画は出来ていたと思います!
>田中さんのヒミコは本当に威厳があって立派だった
仰るとおりですね^^
おそろしくあの顔(失礼)でハマっていたと思います^^