「心ある母さんの会」~Cuore通信~

長野県飯田・下伊那で活動する「心ある母さんの会」です。会の活動やお産・子育てのことなど情報やアドバイスなど更新中。

中学授業での「避妊」 本当に行き過ぎか 岩田・神戸大教授に聞く

2018-06-25 | 情報サイト
教えない方が無責任


 東京都の中学校で3月に行われた性教育の授業で避妊などが取り上げられ、都議会議員が問題視した。これに対して教育内容への介入だと批判がある。感染症に詳しい神戸大の岩田健太郎教授に性教育の在り方を聞いた。

知識 リスク回避に不可欠
 今春、東京都の中学校え行われた性教育が不適切だとして都議会議員や都教育委員会に批判されました。報道によると、コンドームやピルを使う避妊方法や人工妊娠中絶などを授業で説明したが「中学生の発達段階に合わない」「『性交』や『避妊』といった言葉は中学校の学習指導要領にない」など問題視されたのだそうです。
 こうした「行き過ぎた性教育」批判は近年しばしば聞かれます。教育現場には萎縮ムードもあるようです。しかし、感染症の専門家として20年以上前から学校で性教育の話をしてきた経験からすれば、望まない妊娠や性感染症の聞きを避ける具体的な方法を教えない方が、大人として無責任と言わざるを得ません。
 この考え方は、中学の学習指導要領にも外れていません。指導要領には中学生が「妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠までを取り扱う」とあります。妊娠・出産が可能な年齢だからこそ、自ら他社の健康「身・体・性)に配慮せねんばならない。であるならば、受精や妊娠の前提である性交がどういうものなのかを知らずに、そのような配慮をすることは不可能です。ちょっと考えれば分かるはずです。
 指導要領には、エイズなどの性感染症も扱うよう記載があります。性感染症予防の最善のう方法はコンドームの着用であり、それは避妊の最良の方法の一つです。 ちなみに「コンドーム」という用語は、文部科学省が指導要領の解説で取り上げています。安全のためにには正しい使い方も教えなければ意味がないのは、シートベルトと同じです。
 中学校での性教育の最大の目的は妊娠・出産が可能な思春期の自分と他者の健康を守ることです。望まない妊娠や性感染症などの問題に対峙し、リスクをヘッジ(回避)するのが目的であり、そこから逆算すれば何を教えるべきかは明白です。
 昔のようにオシベとメシベの話をしたり、男女の体を縦割りにした図を見せて解剖用語を暗記させたりしたって、リスクはヘッジできやしません。インターネットで正誤不明の膨大な性情報に小さい頃から接触できる今の子どもたちには、きちんとした情報を伝えることこそ重要です。
 学習指導要領は中学生に「思考力、判断力」「主体性」を育むよう求めています。 望まない妊娠や病気を回避するための思考力や判断力、主体性にとって必要なのは「無知」でなく「知識」であるに決まっています。
 生徒たちが現実世界で生き抜く力を身に付けるのを支援すべき立場の人々が、その力に必要な知識を生徒から遠ざけるよう要求するなんて滑稽です。古い観念にとらわれ、子どもたちに不可欠な性教育をおとしめようとする反知性的な大人たちの言説を、ぼくらは認めてはいけないのです。

 実践的な性教育 国際常識

 海外の性教育の現状はどうか。 各国の事情に詳しい女子栄養大名誉教授の橋本紀子さんは「子どもたちに性教育の機会を保障する上で、学校の役割が極めて重要なのも、具体的な性教育が欠かせないのも、国際的には常識です」と指摘する。
 近年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)を中心に作られた指針などを基盤に、性教育を重要な教育分野とする考え方が多くの国に定着。遅れていた中国や韓国でも、コンドームの使い方など実践的な避妊方法を教える傾向が広がったという。
 日本では、具体的な性教育は子どもの性行動を早めると主張する声が大きいが、橋本さんは「全く根拠がない」と批判する。 「性教育を積極的に進めた方が性行動を起こす時期は遅くなる、という結果が国際調査で出ている。誤った性情報が氾濫する今こそ、実践的な性教育が急務です」

2018年6月21日(木) 信濃毎日新聞より

「命の砦」は今 大町市長選を前に 医師不足 

2018-06-22 | 情報サイト
続く綱渡り 練る工夫

 「生まれてきてくれてありがとう」。大町市立大町総合病院の授乳室。産婦人科医長の桑原良奈さん(36)は、ベッドに横たわる赤ちゃんの無邪気な表情に目を細めた。
 広島市出身。病院には1月中旬、愛媛県の都市部の医院から着任した。大町市を選んだのは、夫が田舎暮らしを希望したからだ。
 自宅は、市内の山間地にあり、長女(1つ)と家族三人暮らし。「ご近所が子どもをかわいがってくれる」。静かな環境を楽しみつつ、勤務にも励んでいる。
 その産婦人科が、常勤医の不足に苦しんでいる。
 分娩を2015年3月から約半年間にわたり休止した。当時、唯一の常勤医が体調を崩して休養したためだった。その年の9月に新たに確保した常勤医も2年ほどで退職。桑原さんの着任後も綱渡りが続いている。
 常勤医不足は、他の診療科も深刻だ。計18人のうち、整形外科や脳神経外科は1人体制。麻酔科も常勤医がおらず緊急手術などへの対応が難しい。勝野健一事務局長は「常勤医はあと10人余り確保したいところだけど」と頭を抱える。
 厚生労働省のアンケートによると、50代以下の勤務医の5割は地方勤務の意思がない。常勤医が少人数で労働環境が厳しいことや、症例数が少ないために実地で学ぶ機会が減ること、子どもの進学先の選択肢が限られることなどが背景にある。
 大町総合病院では14年度から、信州大付属病院の卒後臨床研修医を受け入れ、18年度は6人が派遣されている。それでも常勤医が確保できなければ、根本的な解決にはならない。
 一方で桑原さんは、ここでは自身の理想とする医療を実現しやすいと感じている。5月から妊婦と一緒の散歩会を始め、病院は快諾してくれた。市内で8月に開く自然分娩がテーマの映画の自主上映会も、病院は後援してくれている。
 大町総合病院は組織が小さいため、小回りが利く利点がある。桑原さんは「都会の大病院でやる気を感じていない医師もいるはず。大町では、常勤医がやりたいことをしやすいとPRしたらいいのでは」と話した。

 7月1日投開票の大町市長選が24日告示される。巨額の赤字に沈む市立大町総合病院の医師不足への対処や、経営健全化が争点になりそうだ。地域の「命の砦」をいかに守るか。課題を探った。

2018年6月21日(木) 中日新聞より