あー、姉ちゃんの結婚式だぁ・・・・
目の前では、金の縁取りをされた皿の上でまぐろの塊が燦然と輝いている。
「これ、ナイフとフォークで食うの?」
隣にいる親父に聞くと、
「おおそうだぞ、今これが日本の流行なんだ。アメリカ帰りにはうれしかろう」
「へぇー、いいねぇ」
ぼくは赤く魅惑的なまぐろを一切れ切り取ると、それを口に運ぼうとした。まさにそのとき、
「ぐおらー!!!起こすんじゃねぇえ!この代官山!!」
どっかーん!!!
ぼくはこの世のものとは思えない物音で夢から引きずり出された。
「いたっ、もう鳴神さん!あなたが起こしてっていうから毎日起こしてるんじゃないの!」
ドアの外から都子さんの声が聞こえる。
「またか・・・」
ぼくは口の横についたよだれを拭きふき、よれよれと起き上がった。
「ああ、まぐろ・・・せめて一切れでも・・・」
ぼくのまぐろはまたしても芯さんによって奪い取られてしまった。
「くそっ、おれは寝てるのを起こされるのが一番頭にくんだ!」
「だから起こしてって言ったのはあなたじゃないの!」
「おれは夕べギグで遅かったんだぞ!今ちょうど寝入ったとこだったのに!」
「あなたの音楽の仕事はわかるけど、今日あなた昼間も仕事だから起こしてくれって昨日言ってたじゃないの」
「あれ、そうだったっけ。そんなら向かいのぼうずも昼間仕事じゃねえか。なんであいつのことは起こしてやんねーんだ?」
芯さんは少し落ち着いたようだ。ぼくのことを珍しく気遣ってくれている。
だが、都子さんがその落ち着きをぶち壊した。
「あなたを起こせば、その騒々しい叫び声でたけるくんも起きるから、一石二鳥よ」
「なんだそれっ!!!」
うわぁ、まだ続くぞ、これは。
ぼくはもそもそとTシャツとジーパンを着込むと、そろーっと部屋のドアを開けた。
「おはようございまーす・・・」
「あら、おはようたけるくん。今日もお仕事がんばってね」
振り返った都子さんは、今までの騒ぎがうそのように、朗らかにぼくに微笑みかける。
「おい、ぼうず!お前もなんか言ってやれ、このばっぱに!」
廊下を挟んでぼくの向かい側の部屋の中、彼女の後ろから、パンツ一丁でベッドの上に仁王立ちになっている芯さんが叫ぶ。
彼はなぜか右手にドラムのスティック、左にしゃもじをつかんでいる。
「ばっ、ばっぱとはなに!?」
都子さんがすかさず応戦する。
「ばっぱじゃねぇか、朝からそんな濃い化粧しやがって!」
また頭から湯気が出ている芯さんにぼくは声を掛けた。
「芯さん、」
「おっ、加勢してくれんのか」
「いや、芯さん仕事遅れますよ」
「んっ!?」
と芯さんは携帯の時間を見ると、
「ああああーー!!!やっべー!リハに遅れる!」
と、ドアが開けっ放しなのにもかまわず素っ裸になって着替えると、
「畜生、ばっぱ!お前のせいで遅刻だっ!!」
と捨て台詞を吐きながら部屋を出て行った。
目の前では、金の縁取りをされた皿の上でまぐろの塊が燦然と輝いている。
「これ、ナイフとフォークで食うの?」
隣にいる親父に聞くと、
「おおそうだぞ、今これが日本の流行なんだ。アメリカ帰りにはうれしかろう」
「へぇー、いいねぇ」
ぼくは赤く魅惑的なまぐろを一切れ切り取ると、それを口に運ぼうとした。まさにそのとき、
「ぐおらー!!!起こすんじゃねぇえ!この代官山!!」
どっかーん!!!
ぼくはこの世のものとは思えない物音で夢から引きずり出された。
「いたっ、もう鳴神さん!あなたが起こしてっていうから毎日起こしてるんじゃないの!」
ドアの外から都子さんの声が聞こえる。
「またか・・・」
ぼくは口の横についたよだれを拭きふき、よれよれと起き上がった。
「ああ、まぐろ・・・せめて一切れでも・・・」
ぼくのまぐろはまたしても芯さんによって奪い取られてしまった。
「くそっ、おれは寝てるのを起こされるのが一番頭にくんだ!」
「だから起こしてって言ったのはあなたじゃないの!」
「おれは夕べギグで遅かったんだぞ!今ちょうど寝入ったとこだったのに!」
「あなたの音楽の仕事はわかるけど、今日あなた昼間も仕事だから起こしてくれって昨日言ってたじゃないの」
「あれ、そうだったっけ。そんなら向かいのぼうずも昼間仕事じゃねえか。なんであいつのことは起こしてやんねーんだ?」
芯さんは少し落ち着いたようだ。ぼくのことを珍しく気遣ってくれている。
だが、都子さんがその落ち着きをぶち壊した。
「あなたを起こせば、その騒々しい叫び声でたけるくんも起きるから、一石二鳥よ」
「なんだそれっ!!!」
うわぁ、まだ続くぞ、これは。
ぼくはもそもそとTシャツとジーパンを着込むと、そろーっと部屋のドアを開けた。
「おはようございまーす・・・」
「あら、おはようたけるくん。今日もお仕事がんばってね」
振り返った都子さんは、今までの騒ぎがうそのように、朗らかにぼくに微笑みかける。
「おい、ぼうず!お前もなんか言ってやれ、このばっぱに!」
廊下を挟んでぼくの向かい側の部屋の中、彼女の後ろから、パンツ一丁でベッドの上に仁王立ちになっている芯さんが叫ぶ。
彼はなぜか右手にドラムのスティック、左にしゃもじをつかんでいる。
「ばっ、ばっぱとはなに!?」
都子さんがすかさず応戦する。
「ばっぱじゃねぇか、朝からそんな濃い化粧しやがって!」
また頭から湯気が出ている芯さんにぼくは声を掛けた。
「芯さん、」
「おっ、加勢してくれんのか」
「いや、芯さん仕事遅れますよ」
「んっ!?」
と芯さんは携帯の時間を見ると、
「ああああーー!!!やっべー!リハに遅れる!」
と、ドアが開けっ放しなのにもかまわず素っ裸になって着替えると、
「畜生、ばっぱ!お前のせいで遅刻だっ!!」
と捨て台詞を吐きながら部屋を出て行った。