「吸うか?」
芯さんはタバコの箱をぼくに向かって差し出している。
「いや、ぼくはこれでいいっす。ごちそうさまでした」
ぼくはコーラを持ち上げて、断った。
「そうか?」
芯さんはタバコの本数を確かめるみたいに箱の中を覗くと、無造作にそれをポケットに突っ込んだ。
「・・・」
しばらくの、静寂。
通りは相変わらず車が行ったり来たりして、バーには客が出たり入ったりして。向かいのコンビニの前ではホームレスが小銭をねだるだみ声が聞こえるけど、ぼくと芯さんの間には不思議で静かな時間が流れていた。
その時間の中で、ぼくは段々となんだか、ふわふわと漂うような気持ちになってきていると、
「おまえ、」
芯さんがふいに口を開いた。