吉田屋日本百貨店

とある時、とある街での物語

226.LAの空

2012-02-22 10:20:45 | 日記
 その肩を、筋肉隆々の腕ががしっとつかんだ。
運転席、見れなかったけど、雰囲気で芯さんがにやにやしてるのが分かった。うつむいたぼく。芯さんの声が、頭の中で繰り返している。
イッツ トゥー レイト、 メン・・・
メン・・・
「芯さん、」
「ん、なんだ、たける」
「おれ、最後にラーメン食べたいっす」
 かーっ
大げさにため息をついて、芯さんはかぶりを振る。
「ばかか、お前。日本でいくらでもうまいの食えるのによ」
「でも・・・」
 ぼくが彼の分厚い胸にしなだれかかるようにすると、芯さんはそれを気持ち悪そうにしっしっと払いのけた。
「わーった、わーったよ。男・たけるの願い事聞いてやるよ」
「はい・・・あっ」
 あれ?
「なんだよ?」
「芯さん、初めてぼくの名前・・・」
「あーあー、なんでしょうね」
 芯さんは、ラジオをがんがんにつけて聞こえないふりをする。
「ぼくの名前っ」
「あーああーー」
 だめだ。この人、完璧に聞いてない。
「もー、芯さんは」
 ぼくは諦めて、それからにやっと笑うと、開けっ放しの窓から再び頭を出した。
目をつぶる。

 湿気ゼロのからっからに乾いた熱風がびゅうびゅう顔に吹き付ける。皮膚にぶち込んでくるような日差し。痛いくらいの暑さと明るさ。この感じ。
あー。これだ。
これが、ロサンゼルス。
ぼくは目をゆっくり開け、空を見上げた。

LAの空は、でっかくて、遠くて、どこまでも青かった。




「吉田屋日本百貨店」はこれにて終了です。読んでいただいた方、どうもありがとうございました。
またLAを舞台にした物語をぼち・・・ぼち・・・・と書いてますので、またどこかでお会いしましょう。

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