カメラといっしょ★

地元福岡~イタリア留学からワーキングビザ取得しての海外生活を写真で綴るつれづれ日記

涙のチンギアーレ

2010-01-10 23:43:19 | ★イタリア留学日記
私はお肉が苦手だ。
それには正当な経緯がある。
大学生の時、ラットをつかって実験をしていた。
最終的に解剖して実験結果を得るのだが、 
それが学問の為に必要なことだと
頭では十分理解出来ていても、
子供の頃から動物が大好きだった私にとって
熱く柔らかく息をしている大切な命が消えて行く様を見るのは苦痛で
その血の臭い、肉の感触が苦痛とともに記憶に刻まれ、
だんだんにお肉が食べられなくなった。

しかし、肉が食べられないというのは
現代日本において実に不利なものなのだ。
例えば飲みに行くとなると候補にあがるのが安くて手軽な焼き鳥屋。
でも私がひとり「お肉食べられなぁい」などとシケた事を言うと
せっかくぱぁっと飲もうというテンションが落ちてしまう。
私にとって大切なのは、
酒の肴が何なのかよりも
その場の人が楽しくいてくれることだ。
肉が嫌いだと言ってしまうと
周りの人がかえって気を使ってしまうので
そのことを言わないでいる事が多い。
焼き鳥食べなくったって人の倍ビール飲むから大丈夫だもん。

そういった風にこちらでもなんとなくお肉嫌いを公表せずにいた。
しかし、その強敵は突然目の前に現れた。



同居人が職場のレストランでおいしかったからと
チンギアーレ(いのししの肉)を持って帰って来てくれた。
トスカーナ名物の素晴らしい料理だ。

それを骨折してしょげている惨めでかわいそうな同居人の為に
わざわざ持って帰って来てくれたのだ。
その時点でもうありがたくって
自分がお肉嫌いなのも忘れて
ぜひに食べたいと思った。

いや、待てよ、と少し冷静に、
如何せんジビエのいのしし
きっと臭みも強いだろうと予想して
野菜も食べたいからと肉以外の具を増やしてもらった。
大好きな野菜と一緒なら大丈夫のはず。

しかし、ヤツは強敵だった。

しっかりと肉の処理をし、トマトでよく煮込んだよい料理
普通の人がお肉の滋味と味わうその風味も
私にとっては、辛い思い出を引き出すものだった。

一口めで胸が支えた。
でもせっかく用意してくれた料理だ、どうしても食べたい。
がんばって半分食べた。
頑張れば、人は大抵の事を成せると私は信じている。
でもこれは成せなかった。
食べられない自分が悔しくて涙目になった。

いつまでも皿を空けずにジリジリとしている私の様子に
さすがに同居人も気付いて、どうしたのかと聞かれた。
正直にお肉が食べられないと答えた。
どうして先に言わなかったんだと、
同居人は顔では笑いながらも
本気で怒り、どこか傷つけられたような面持ちだった。

本当に申し訳ないことをした。

以前、家族で食事をしている時、
お肉を食べない私に父が
せっかく母が私を思って作ってくれた料理を食べないなんて
お前は思いやりの無い、傲慢で自分勝手な人間だと
ひどくしかられた事を思い出した。

私は本当に申し訳ない事をした。
誤まりたい気持ちは言葉にならず
ただただ涙となって目に浮かんでくるのでした。

最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。