こげの耳に★ねんぶつ★

たわいない日々の思うことと愛犬こげと花が咲いていたら花の写真など

かっぱの淵 (三)

2007-12-13 05:58:06 | 和歌山県
           
               神社前から大きく曲がっている右方向に淵がある

「お願いがありまして・・・・・・・・」

と言うから、入れて座敷へ上げた。女は遠慮深そうに座敷の端にかしこまったが、

まぶかに被った手ぬぐいの下からのぞく顔は、うす暗い行灯の光にも、かなりやつ

れた色がうかがえた。

 女は口ごもりながら、小さい声で話し出した。

「わたしァ、実は、こんぴらさまの淵のゴッタレボウシで・・・きょう、おうちの

 馬が水呑みに来ましたので・・・・・・ちょっといたずらしたろと思いまして

 ・・・・・・たづなつかんで、引っぱり込んだら、そいたら、馬がびっくらして

 とび上がって跳ねたひょうしに、わたしの腕がたづな握ったまま、ちぎれてしま

 いまして・・・・・・この通り・・・・・・」  女は右の袖口をめくって、傷

口もま新しいひじを出して魅せた。

「それで・・・・・・その・・・・・わたしの腕をいただきに参りました・・・・

 どうぞ、わたしの腕を・・・・・・お願いもうしまってす」とはらばうように頭

を下げた。

 前島さんは、気味悪くもあり、かわいそうでもあったが、ここで、やすやすと渡

してはと思って、黙って女を見つめていると、

「もう、あのようないたずらいたしませんさか・・・・・・もう、決して、あの穴

 から出て来ませんさか・・・・・・どうぞ、私の腕返してくださりませェ」

前島さんは、強い口調で言った。

「きっと約束するか!」女は嬉しそうに、はっきりと言った。

「はい、きっと

 この川が、さかさに流れるまで、

 炒った豆が生えるまで、

 あのヨノミの木が伸びて、向こう岸へ届くまで、

 決して、穴から出て来やしません。」

前島さんは、うなずいて、しまってあった腕を取り出して、女に渡してやった。

 女はその腕をおしいただいて、大事そうに持って出て行ったが、前島さんが行灯

の火を消して寝ようとした時、こんぴらさまの方角で、「ドブーン」と水音が、か

すかに聞こえたという。『田並夜話 増補版』亀岡英治 から 

          
         右上奥に垂れ下がるヨノミの木、向こう岸にもうすぐ届きそう


というお話です。川が逆さに流れたり、炒った豆が芽を出す・・ありえないけど

大津波で逆流はあるかも。ヨノミの木が向こう岸に届く・・・は一番現実的ですが

三条件が揃わないと 晴れて出ては来れないんだ。その間 隣村の有田で遊んでい

たのか?川原で相撲をとったり、いたずらもしたけど日本人にとっては身近な妖怪

みたいなものなんでしょうね。知り合いの田並のお年寄りに聞けば全員知っている

かっぱの話。ちゃんと伝承はされているようですが、近年(10年位前)は ここ

で泳ぐ子供もいた。今は写真の通り 水量が減り堆積した土砂、葦がはびこり泳げ

ません。


 

 


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