<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国(特に上海)におけるスターバックスの躍進を検証する

2011-08-10 | 中国ビジネス
上海の街角を歩いていると、至るところにスターバックスの店舗を見かけることができる。
その数といえば、もはや東京を凌ぐのでは・・・と思ってしまうほどだ。
筆者の事務所が入居するビルの近くでも、徒歩10分圏内に5つの店舗が立地している。
簡単に店舗の様子を紹介すると以下のとおり。



ほとんど日本と変わりはないですね。





狭い店内に、お客さんがギッシリです。
ま、上海は国際都市なので、欧米人の利用も多いということが特徴でしょうか。

それにしても、これだけ店舗数があると客の入りも悪そうなものだが、結構どの店舗も繁盛している。
この成功要因は何なのか・・・、筆者なりに考えてみた。

筆者は、実のところ自他共に認める無類のコーヒー好きだ。
しかし、中国で生活していて何が困るかって、コーヒー文化が根付いていないことだ。
特にレギュラーコーヒー、つまりブラックのコーヒーを飲む習慣に至っては、かなりの少数派、もしくは外国人を中心とした文化となる。
例えば、コーヒーの紙フィルターはほとんどのスーパーで売ってないし、店頭に並んでいても30枚くらいで16元(約200円)もする高額商品だ。
コーヒー豆も、最近では雲南省産などが出てきて安くはなってきたが、それでも大多数の豆が日本と比べると倍近い価格だ。しかも、味は大したことないし。

こうした背景の中、どうしてスターバックスは中国の消費者に受け入れられることができたのか?

ひとつは、スタバのコーヒーは純粋な意味でのコーヒーではないということ。
上述のとおり、コーヒー文化の浸透した国々では、コーヒーと言えばブラックコーヒーをイメージする。それ以外は、バラエティコーヒーなどと呼ばれる別のカテゴリーだ。
スタバの店舗で観察しているとよく分かるが、中国人が購入するのは決まってカフェラテやカプチーノ等の甘いコーヒーだ。
「甘さ」の観点からいうと、中国人はストレートな甘さを好む傾向にある。
日本人にとっては、甘すぎてとんでもないようは味を好むわけだ。
つまり、スタバは正統なコーヒー云々は別の次元として、消費者の嗜好に合った商品郡を投入したことが成功に繋がったと言える(ココまで考えていたかは定かではないが・・・)。

二つ目に、ブランドイメージの定着に着目したい。
中国のOLや若年サラリーマンの昼食に費やすお金の目安が10~15元と言われるなか、スタバの平均的な価格帯は、1杯25~30元と相対的に高額だ。
それでも学生や若者を中心に店内が賑わっているのは、やはり「スタバがオシャレだ」と一般に広く認識されている点が大きいのだろう。
同じように多店舗展開しているCOSTAやCOFFEE BEANなどが店舗数を伸ばせないのとは対照的な状況だ。
中国人にとっても、やはりアメリカ文化への憧れが根強いというわけだ(そういえば、万博が始まる前に最も期待するパビリオンはアメリカだったような・・・)。

そして、三つ目に自社中国本部による大規模な店舗展開が挙げられる。
同社は、2015年までに中国国内の店舗数を1,500店にまで拡大する方針だ。
この国では、とにかくスピーディに攻め込むことが求められる。
中国のファーストフード業界に君臨する米国大手ヤム・ブランズが好例で、同社はKFC(ケンタッキー)、ピザハットを大規模に展開し、既に中国での売上高が母国の売上げを越えるまでに至っている。

中国の産業構造を注意深く分析するとよく分かるが、重化学工業や通信、電力などの基幹産業では国有企業が圧倒的なシェアを誇っているが、食品や外食、スーパーなどの分野では台湾・香港系や欧米系の躍進が際立っている。
特に台湾系企業や欧米系企業で経営層を務める台湾・香港人は、大陸本土企業より一足早く世界市場で戦ってきた経験をもっている上、中国人特有の嗜好や金儲けの仕組みを認識しているため、中国の消費者に受け入れられやすいビジネスを展開できるわけだ。

日本企業の中国市場への参入促進が叫ばれて久しいが、なかなか思うように進まない最大の要因は「現地化」にある。
欧米企業などは、経営判断のほとんどを中国人の総経理に任せ、業績に応じてインセンティブを働かせているところも多い。
翻って、日本企業は90年代から一貫して日本人総経理による経営が主流のままだ。
そろそろ日本企業も「中国市場が、腰掛けの日本人総経理や駐在員を中心とした経営で攻略できるほど生易しいものではない」ということを再認識すべきだろう。


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