LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

La Race des 'seigneurs' 個人生活(2)

2005-10-10 | THE 70'S CINEMA
この作品は題名やポスターからは男と女の不倫恋愛ドラマと思われがちですが、
映画の内容はむしろ一人の男の躍進と破滅の物語で、
ドロンは「常に動き回る忙しい男」でかつ「表と裏の2つの顔を持つ男」という
彼が得意とする役柄を生き生きと演じています。

主人公の名は左翼政党の党首ジュリアン・ダンデュー。
(なぜか『栗色のマッドレー』の主人公と同じ名前です。)
与党との連立政権に参画し自らが大臣に就任することを画策している野心的な政治家です。

政党の党首として精力的に活動する傍ら、
飛行機で出遭った美しいモデル、クリージーとの逢瀬にのめり込み
そのことが世間に知れ渡ることになっても関係を断ち切れずにいる身勝手な男。

やがて度重なるすれ違いに耐えられなくなったクリージーから絶縁宣言を言い渡され、
その喪失感にもがき苦しむ主人公の気持ちが非常に丁寧に描かれています。

またこの映画が怖いのは周りにいる人物たちの二人に対する冷たい仕打ちも容赦なく描かれていることで、
特にクリージーの部屋で開催された食事会にドロンが参加し、
あたかもクリージーのパートナーであるかのように振舞うことの虚構を見透かされるシーンは
二人の限界が残酷に描かれ、身に覚えのある観客たち(?)はいたたまれない気持ちにさせられることでしょう。

ジャンヌ・モローとドロンはこの作品が初共演というのが意外な気がします。
“女優ジャンヌ・モロー型破りの聖像(イコン)”マリアンヌ・グレイ著、小沢瑞穂訳(日之出出版)
によりますと、ドロンは彼女が前から憧れていた俳優だったとのこと。
ドロンとは7歳違うだけでまだ若い彼女が、この作品ではもう少し年長のような設定からか、
普通なら演じるのを拒むような老いの悲哀を強調する描写も堂々とこなし、大女優の風格を感じさせられました。

ドロンとシドニー・ロームの衣装はクリスチャン・ディオール、
ジャンヌ・モローの衣装は(ピエール・カルダンではなく)ウンガロ、
他にもドロンが着るコートにバーバリーの裏地が見えたり、
ロームの部屋にヴィトンのバッグがあったりと
一流ブランドが勢ぞろいした画面作りは大変贅沢な気分にさせてくれます。
ドロンのスーツの着こなし、身のこなしは仕事人として大変参考になります。
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2 Comments

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個人生活 (舞輪)
2005-10-10 08:59:14
いつも貴重な写真を公開していただき楽しみに拝見させていただいています。「個人生活」は仰るようにドロンの数ある出演作の中で、ファッション的には最高な作品だったと思います。いつもノータイの作品が多い中でこの作品ではコート、スリーピーススーツ、

腕時計に至るまで、ビジネスマンとして参考にしたいファッションがあふれていて、ドロンの魅力を最高に引き出していた作品でした。これと双璧だったのが、初期作品「お嬢さんお手やわらかに」の中で見せた若者ファッションだったと思います。
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ありがとうございます。 (チェイサー)
2005-10-10 09:26:26
舞輪様、はじめまして。

コメントありがとうございました。TOMO様のサイトの掲示板でいつも書かれている文章を興味深く読ませていただいておりました。私よりも先輩でいらっしゃいますので、またいろいろとお聞かせ下さい。よろしくお願い申し上げます。
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