ひざ掛けのこと

ひざ掛けとのつきあいは
小学校6年生からだったと思う。
おばが贈ってくれた。
冬のある日。
クリスマスだったかもしれない。
誕生日だったかもしれない。
オレンジ色の花柄のものだった。

最初は それが なんなのか わからなかったが、
角部屋の窓辺に設定された、父からのおさがりの勉強机と、
スプリングの飛び出そうな これまたおさがりの青い別珍張りの
背つき椅子 ( 今思うと いいセットだ !!) で、デスクランプ1つつけて
少しだけ 1人きりで夜の時間を使えるようになった時期に
おばがちゃんと心得て贈ってくれたのだった。

冬の夜は すきま風と 窓と壁からの冷気で机の下が寒いので、
これを膝に掛けるのだ、と母からきいて、ある晩使ってみた。
この一晩から 私は ひざ掛けなしの冬の夜 ( 昼もだ ) は 
家にいる限り なくなった。

暖かい。 暖かい。
それまでは ひどく冷える夜は、スキー用の あのツルツルのつりズボン
( むねあて サスペンダー式 ) をはいていたりしたのに、
この " ひざかけ "なる1枚の小型毛布の登場で、
子供心に 夜更かしにえもいわれぬ趣が加わった。

太ももから膝にかかる 心落ち着く重みと、優しい でもしっかりとした防寒性。
布がみせる自然なドレープ。 
少しでも動くと シャカシャカ音のするスキーズボンとの大きな違いは 静けさだ。
一気に、学校の校庭のスキー坂を ボーゲンで滑っている子供から、
1人きりの夜を過ごす 大人になった気分だった。

ひざかけって 素敵だ!!

中学生になり 中間テスト 期末テストの一夜漬け、
深夜ラジオ、声を押し殺した笑いのお供は ひざかけ。
読書 ( 小説、マンガ、詩集 ) 、手紙、日記も 深夜にひざかけと共に。
もちろん、その後にやってきた受験勉強の時もずっと一緒だった。
なぜか、それらの夜中の悦楽 苦役は 夏だってあったはずなのに、冬の記憶ばかりだ。

暖かい飲み物と 小さな明りと ひざかけの時間は 
寒いシーズンだけの特別なもので、冬は雪で覆われる 北海道っ子にとっては
思い入れがあるのかもしれない。

そんな、ひざかけのシーズンも もう少しで おしまい。
ずっと一緒のひざかけも、洗って さっぱりとさせてやろう。
次のシーズンまで おやすみなさい、と。
春が 来る。
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